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2011.06.29(Wed)

高速増殖炉という夢の、終わりのはじまり(2) 

●前回の続きです。

本文に入る前に、高速増殖炉「もんじゅ」のニュースを一つ紹介しておきます。

もんじゅ「出力試験遅れても」 石橋・敦賀本部長代理
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20110628/CK2011062802000128.html

 日本原子力研究開発機構の石橋達郎敦賀本部長代理が27日、福井市大手3丁目の中日新聞福井支社を訪れ、大河原保顧問と懇談した。福島第1原発事故で日本の核燃料サイクル政策の見直し議論が避けられない情勢を踏まえ、本年度中を目指す高速増殖原型炉「もんじゅ」(敦賀市)の40%出力試験は「遅れてもやむを得ない」との見方を示した。

 西川一誠知事が停止中原発の再稼働を容認していないことにも触れ「軽水炉の安定した運転が再開されない限り、高速増殖炉はその先にあるもの」と見通した。もんじゅの年間維持費は140億~150億円が必要で、2012年度政府予算案の夏の概算要求も「どう扱われるか気になる」と述べた。

 24日に原子炉容器内から回収した炉内中継装置は「今のところ外観上、異常はなかった」と語った。今後、約1カ月かけて装置や原子炉内の損傷の有無を確認する。「(早ければ)秋には復旧できる。苦しい立場だが(40%出力試験に入れるよう)淡々と準備を進めるだけ」と話した。



日本原子力研究開発機構、すなわち政府は、高速増殖炉の運転を続ける意向を持っています。これについては、みなさんもいろいろ思うところがおありでしょうが、その辺の論評は置いておいて先へ進みます。


5 夢を運ぶ「もんじゅ」

まず、高速増殖炉というものがどのように働くのか、簡単にまとめておく。

前回触れた「軽水炉」は、核分裂性のあるウラン235(数字にどんな意味があるかは前回の記事参照)に中性子を上手に当てて核分裂を効率よく行うため、水を減速材に用いる。このへんはうまく説明できないが、ウラン235は高速で動く中性子だとうまくキャッチできないらしい。

これに対して、高速増殖炉は、プルトニウム239を燃料に用いる。このプルトニウム239は、高速で動く中性子をキャッチすることができる。しかも、中性子をキャッチして核分裂するとき、中性子を3個出す。

その3個出てきた中性子のうち、2個は同じプルトニウム239にぶつかって消費される(そうでないと核分裂が進まない)。

実は、余った1個がミソなのである。

高速増殖炉の炉心には、劣化ウランがプルトニウム239と一緒に置いてある。前回も見たように、劣化ウランは核分裂性のウラン235がほとんど含まれておらず、ゴミとして捨てるしかない代物だったはずだ(しかも超有害)。

そして、上の余った中性子1個は、劣化ウランを構成するウラン238にぶつかることになる。

そうすると、陽子+中性子の量が239個になり、そのあとβ崩壊を経て、なんとプルトニウム239に生まれ変わるのである。

つまり、ただゴミとして捨てるしかなかった劣化ウランが、プルトニウム239という立派な核燃料として蘇るということだ。一応、プルトニウムの量は増えるから、これを「増殖」と言っている。

まとめると、高速増殖炉というのは、「高速の中性子を使って劣化ウランからプルトニウムを増殖させる原子炉」ということになる。

これは、原子力利用を推進したい人たちからすれば、非常にありがたい。

どんなに原子炉自体の安全を確保したとしても、核廃棄物が出てくることは避けられない。反対派は絶対にそこを衝いてくる。それに対して、

「使用済み燃料は六ヶ所村の再処理工場でプルトニウムを取り出し、濃縮の過程で劣化ウランともども高速増殖炉で燃料として用いることができる」

という反論ができるからだ。もちろん、劣化ウランはどうやって入手するんだとか、高速増殖炉から出てくるゴミはどうするんだとか、細かい議論はあるが、とりあえず当座の弁明としては成り立つ。

そして、ウランの使用量を劇的に減らすことで、資源を輸入に頼るという弱点も克服できる。

1991年、本格的な高速増殖炉「もんじゅ」が運転を開始した時、高速増殖炉を商用で成功させている国は世界に一つもなかった。

もんじゅを軽水炉並みに運転させ、商用原子炉としてスタートさせる。

原子力を研究し、原子炉に携わっていた人びとの夢だったに違いない。

6 危険すぎる夢の代償

ところが、その原子力関係者の夢を運ぶ「もんじゅ」は、試験運転中の1995年、突然停止してしまう。

冷却材のナトリウムが漏れ出し、発火したというのがその原因だった。

この「ナトリウムを冷却材に使うこと」こそ、高速増殖炉の最大の弱点である。

ナトリウムは塩の主成分で、常温だと固体である。それを、100度以上にして液体にする。100度以上で「冷却材」というのも変な話だが、原子炉が作り出す熱はもっと高温なので、その熱を外に運ぶ役割としては十分である。

ナトリウムが選ばれた理由は、高速増殖炉のキモである、高速で飛ぶ中性子の勢いを殺さないという特性にある。

軽水炉で水が減速材になるのは、質量が軽いので、ぶつかったときに中性子のエネルギーをもらってしまうからだ。車が同じ車種の車に追突すると、ぶつかった時に追突された車は前方に突き出され、追突した車は少しだけ進んでその場に止まるが、そんな感じだ。

他方、ナトリウムは質量が重いため、中性子をほぼそのままの勢いで跳ね返せる。ボーリングの球に、ピンポン球をぶつけても、跳ね返る時のスピードはぶつかった時とほとんど同じはずだ。あれと同じである。

プルトニウムに高速中性子をぶつけるからこそ3つの中性子を出す核分裂が起きるわけで、原子炉から水を利用して熱を取り出すプロセスを、高速増殖炉では初めから取ることができないようになっている。

しかし、液体ナトリウムは、困った二つの特徴を持っている。

一つは、空気に触れると急激に酸化することだ。要するに、空気に触れると燃え始めるのである。だから、「もんじゅ」の原子炉には、空気が入らないようにアルゴンガスが充填してある。

そして、もう一つは、水をかけると大量の水素が発生することである。水とナトリウムが接触して水酸化ナトリウム(NaOH)が作られる過程で、水(H20)の中の水素分子が1つ余るからだ。その時、回りにはナトリウムが出す大量の熱があるから、これで水素が引火して爆発を起こすことになる。福島第1原発の1号機の屋根が吹っ飛んだ「水素爆発」である。

だから、水をかけて消火することができない。

そうなると、一度火が出て、ごく短時間での初期消火に失敗したら(もしくは、消火のしようがないほどの火が上がったら)、冷却材のナトリウムがどんどん燃えていき、高速増殖炉周辺は大火災に至る。

炉内の冷却ができなくなるのだから、プルトニウムで出来た燃料が高温になり、次々とメルトダウンを起こす。

そして、それによって燃料体から解放されたプルトニウムは、火災が起こす上昇気流に乗って周囲に拡散する。下手すると、空気中の水分から出来た水素が引火して爆発を起こすかもしれない。

そうなったら、猛毒のプルトニウムが「もんじゅ」の建屋を飛び出し、火炎の作り出す上昇気流に乗ってかなりの広範囲に拡散する。「もんじゅ」はプルトニウムを直接使っているから、その量も半端ではない。

この事故に比べれば、黒鉛炉が臨界状態のまま爆発したチェルノブイリですらかわいいものだ。日本全土が死の国になる可能性すらある。

だから、わずかなナトリウム漏れでも「もんじゅ」は運転をやめた。当然の判断である。

しかし、これほど危険な「もんじゅ」で、2007年になって突然再開のための工事が開始され、昨年運転を再開した。

そうしたら、今度は炉内のプルトニウム燃料を取り出す中継装置が落下してしまった。取り出そうにも、炉内のナトリウムが空気に触れたら大事故になるから、慎重に慎重を期した。

そして、ついこないだ成功したわけだが、その過程のどこかでアルゴンガスが抜けることがあったならば、今頃私はこんな記事を書いていないだろう。

しかし、みなさんもここまで読んで思わなかっただろうか。

どうして、ここまで危険な「もんじゅ」、すなわち高速増殖炉を、原子力関係者たちは動かそうとするのだろうか。

私は、ここに、いわゆる「原子力村の論理」を超えた難しさを感じている。次回詳細に述べる。


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Comment

●暗澹たる思いです

拝啓

3年ぶりの書込みにて、失礼いたします。

愚行を繰り返した人類の、「定め」なのでしょうか、、

いや、手遅れだとしても、立ち向かわなければなりません。

しかし、効率的で筋の通った行動とは何なのか、

考えは尽きません。

敬具
和尚 | 2011年06月29日(水) 12:56 | URL | コメント編集

●>>和尚さん

お久しぶりです!

>愚行を繰り返した人類の、「定め」なのでしょうか

なんというのでしょう、これは次回のテーマなのですが、私はこの問題をいろいろ調べていく過程で、いわゆる御用学者と言われるような人びとが背負っている「業」のようなものを感じました。

それは、いわゆる「原子力ムラ」や「原発利権」という、近頃の紋切り型には当てはまらない、もっと底の深いものだと思います。和尚さんがお書きになった、

>効率的で筋の通った行動とは何なのか

という部分にも関わりがあると思います。

私がもんじゅのことを扱おうと思ったのは、このブログの読者の方に私が感じた感覚をお伝えしたかったというのが一番大きいのです。今回までの内容自体、2時間もあれば調べられるようなものですから…。

次回も、どうぞお付き合いください。
ろろ | 2011年06月29日(水) 22:43 | URL | コメント編集

●節電狂想曲

以前、目から鱗の思いですと書いた者ですが、電気は原発なしでも十分足りていると言われながら、世を挙げての”節電”騒動です。ここまで日本中を統制しなければならない理由は何なんでしょうか?関東大震災は日本を戦時体制に移行させる起点になったと言われているそうですが、今回もそうなっていくのでしょうか?
gbc | 2011年07月01日(金) 06:25 | URL | コメント編集

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