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2009.09.15(Tue)

韓国の経済を見ることは、我々自身を知ることである(3) 

  ●前回の記事で、結局景気を良くする、すなわち総需要を増やすには、

・賃金をアップする

・政府が財政支出を行う

・減税する


  この三つしか方法がないということを述べました。では、この三つが果たして可能なのかどうか、韓国の社会状況に照らして考えてみます。
  まず、「賃金アップ」です。これは、理論上簡単にできる方法があります。「非正規雇用の規制」です。
  日本でも近年企業が正社員を削り、派遣やパートといった非正規効用の比率を増やしています。韓国も、よく似た状況になっているようです。

日本に先行、韓国の格差問題~悩める「88万ウォン世代」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/572

 『韓国ワーキングプア 88万ウォン世代』(明石書店)という本がこのほど発売された。2007年の韓国でベストセラーとなった経済学者・禹熏(ウ・ソクフン)氏らの著書の邦訳。88万ウォンは、韓国で大卒の非正規労働者の月給を指す。当時のレートで換算すると約10万円、今なら6万円強に相当する。

 昨年、日本でも小林多喜二の『蟹工船』が若者の間で持てはやされたが、「格差社会」の深刻化では韓国がこの10年余り、日本に先行している。「88万ウォン世代」の行動は2007年韓国大統領選で李明博(イ・ミョンバク)氏の勝因ともされ、日本にとって決して他人事ではない。

  (中略)

 韓国社会で格差拡大のきっかけとなったのが、1997年のアジア通貨危機(同国では「 IMF危機」と称する)。危機克服に向けて構造改革路線が採用され、経営困難に陥った企業による従業員の整理解雇や、賃金コスト圧縮を目的とする派遣労働制が解禁された。こうした政策は企業収益の回復に寄与する半面、非正規労働者の急増を招いた。非正規労働者が労働人口に占める比率は、2001年の27%から2004年には37%へ上昇していた。

 それと同時に、若者の就職難がクローズアップされた。2004年には一時、30歳未満の青年労働者の失業率が 9%台に乗り、労働者全体の 3%台に比べて著しく悪化。正社員就職という希望がかなわず、相当数が非正規労働者になった。

 当時、ソウル支局には日本語を専攻する大学生が何人もアルバイトに来ていたが、一様に「就職活動が大変」とこぼしていた。中には、非常に優秀だけど、「期限付き」の仕事にしか就けなかった者もいる。ちなみに韓国では、就職できない学生は「とりあえず」大学院へ進む傾向が強い。正確な数字は不明だが、日本より多いように思う。

 当時の韓国は、「構造改革」→「労働市場の規制緩和」→「企業の人件費削減」→「非正規労働者の増加と若者の就職難」。小泉政権以来の日本の歩みとそっくりなのだ。

 ソウル赴任前、霞が関で内閣府を担当していた。竹中平蔵経済財政相(当時)の記者会見に出席しては、金融機関について「日本は(外資導入で危機を乗り越えた)韓国を見習うべきだ」という趣旨の発言を何度も聞かされた。しかし、隣国を参考にすべきという点では、雇用問題も然りなのだ。

 2002年12月の大統領選では、人権派弁護士出身でいわゆる「左派」の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏が、保守系候補との激戦を制して当選した。勝敗を分けたのは20~30代の有権者の支持。拡がる格差を解消し、「弱者救済の政策を断行してくれるはず」との期待から、若い世代が盧氏を大統領に担ぎ上げた。

 しかし、盧政権時代にむしろ格差は拡大。ソウルを流れる漢江の南にある高級住宅地では、富裕層が競い合うように住み、複数のマンションを購入する利殖ブームが起こった。半面、ソウル駅や市役所前の地下道で眠るホームレスが目に見えて増え、若者の雇用情勢も一向に好転しなかった。

 失望した若者の間では、堅実で保守的な考え方が広がり始めた。「88万ウォン世代」の特徴は、「政治的には保守」。2007年12月の大統領選では前ソウル市長の保守系候補・李明博氏に票が流れ、李氏圧勝の原動力となった。

 とはいえ、李大統領への期待が「再度の失望」に変わるのも早かった。就任直後の2008年春、米国産牛肉の輸入再開をめぐる政府の対応に批判が集中。 5月には一部世論調査で政権支持率が10%台に落ち込み、その後も人気低迷が続いている。

 国民が性急に過ぎる気もするが、昨夏、韓国政府の元高官は「多くの人が閉塞感に苛立っている。生活が良くならないので不満が募っている」と指摘した。今年の正月、ソウルで再会した韓国の知人も「大学生の半数は満足な就職ができない」と話していた。世界的な景気後退に伴い、若者の就職事情は一段と悪化しているようだ。

 気になるのは、「就職は自分の責任」と考える傾向だ。ソウル特派員時代、アルバイト学生が英会話学校などに通っていたから、「なぜ、そんなに熱心に勉強するのか」と尋ねてみた。すると大抵、「良い就職をするため」という答えが返ってきた。心中を察すれば、「良い就職」ができるかどうかは、努力の程度に応じた結果。すなわち、「自己責任」ということなのだろう。

 若者も無論、現状に対する不満は小さくない。「制度や仕組みを変えてほしい」という気持ちはあるのだが、それに執着はしない。接していた韓国の若い世代から、そうした空気を感じた。政治に期待はしてみるが、裏切られたとしても、「ああ、やっぱり。じゃ、今の仕組みの中で頑張るか」というのが、韓国の真面目な若者の姿なのだ。

 「負け組」入りが自分の責任となれば、弱者を救済しようという政策の充実は期待できない。「自己責任」の考え方が社会に定着すると、いったん「負け組」となった者が逆転するのは難しくなる。日本の状況もこれに似てきているのではないか。

 日本で社会問題化した非正規労働問題に関しては、韓国政府も対応に苦慮している。盧政権時代の2007年7月施行された関連法では、 同じ事業所で2年間勤務した非正規労働者はそれ以降、正規労働者と同様の処遇を受ける。しかし、「2年未満で解雇した事業者への法的制裁がない」と指摘され、当初から反対論があった。

 また、韓国政府は非正規労働者の解雇増加を防ぐため、処遇改善に要する勤務期間を2年から最大4年にする方向で法改正を予定している。しかしそれが実現しても、非正規労働者の立場が抜本的に改善すると予想する向きは少ない。雇用問題は複雑な迷路と化し、日韓両国とも出口を見つけられない。


  こういう若い世代を正規雇用にすれば、購買力がアップします。目に見える給与が上がらなくても、正規雇用だと社会保険や年金の負担が少なくなるので、実質的に購買力が上昇することになるのです。
  やり方は簡単で、企業に一定の正規雇用を義務づけたり、派遣労働が可能な職種を限定すればいいだけの話です。
  そんな無茶言うな、カネがないから企業だって仕方なく正社員を削っているんだろう、という人は、日経新聞やフジサンケイビジネスの読み過ぎです(笑)。以下の記事をご覧下さい。

<グラフで見る韓国経済>留保率657%に上昇
http://www.toyo-keizai.co.jp/news/graph/2009/657.php

       韓国企業の内部留保率

  時価総額上位848社の内部留保率が、1997年通貨危機前の2倍以上の水準に高まった。金融情報機関のFNガイドによると、内部留保率は今年の第1四半期は657%に達した。財務構造は堅固だが設備投資などに消極的な企業が多い。内部留保率とは剰余金を資本金で割り100を掛けたもの。


  ご覧の通り、韓国の企業は平均して資本金の6倍強の内部留保をため込んでいるわけです。
  内部留保は現金ではなく、財務体質強化のためのものだ、素人はこれだから困る、というのなら、別のお金も出しておきましょう。

韓国企業の配当率、日本より高い
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=64351&servcode=300§code=300

昨年、国内大企業の配当が日本企業に比べて多かったことが分かった。 また、売上高に対する配当率は米大企業と同じ水準だった。

中央日報は韓米日3カ国の売上高基準10大企業(金融会社除く)の事業報告書などに基づき、04年度の配当性向などを調べた。 「配当性向」とは、当期純利益の何%を株主に現金配当したかをいう。
昨年の国別10大企業の平均配当性向は、米国(25.2%)、韓国(20.2%)、日本(17.3%)の順だった。 例えば100億ウォンの当期純利益があった場合、米国企業は約25億ウォン、韓国は約20億ウォン、日本は約17億ウォンを株主に配当したことになる。
国内10大企業のうち配当性向が最も高いのはKT(旧韓国通信、53.3%)で、米国最高のGM(40.2%)を大きく上回った。 10大企業の売上高に対する配当率は、韓国と米国がともに1.7%を記録、日本は0.7%だった。

配当性向では日本を上回り、売上高に対する配当率は米国と同じ水準を記録するなど、国内企業は先進国企業に比べ、そん色のない水準の配当をしているということだ。


>先進国企業に比べ、そん色のない水準の配当をしている

  こういう訳の分からないところで「欧米や日本と肩を並べたニダ!!」と勝ち誇るところがいかにも韓国メディアという感じですが、挙げた利益のうちかなりの割合が株主配当に「逃げている」ことは容易に察しが付きます。
  さらに、こういうお金もあります。

役員報酬とコーポレットガバナンス-東アジアのケース(労働調査評議会HPより)
http://www.rochokyo.gr.jp/articles/ab0608.pdf

・・・一人当たり平均役員給与を製造業の平均賃金で割った比率を三国で比較してみた。すると日本の上場企業の役員は、平均して一般従業員の約4倍の給与を受け取り、韓国は5.6倍, そして中国
は、7.6倍という結果が得られた。


  中国の搾取ぶり(笑)が凄いなという印象を受けますが、日本の会社役員より韓国のそれのほうがさらにたくさんもらっているということは言えます。
 
  こういったお金を削って従業員に回せば、それが消費活動を通じて国民経済の中で循環し、やがて企業の手元に戻ってきます。そのサイクルが太く、素早いほど景気がいいということになるわけです。

  問題は、理屈としてはそのような政策が妥当だということが分かっていても、なぜ実行されないのかということです。
  その答えは、上の「88万ウォン世代」のことを書いた記事の中に出ています。ここです。

>気になるのは、「就職は自分の責任」と考える傾向だ。

  この「傾向」が、自然発生的なものだと考える人は、相当なお人好しでしょう。
  日本のテレビ番組に、●「伊東家の食卓」がありました。私はほとんど見ていないのですが、塾で何か話をすると「それ昨日の『伊東家』でやってた」などという声が生徒から上がることがよくありました。内容を見てみると、日常生活で役に立ちそうな「裏技」を紹介する実用番組のようです。
  よくよく内容を見てみると、そんなのは爺さん婆さんや近所の人に聞けば済む話だろうというものが結構あります。しかし、そういう世代間、世帯間のコミュニケーションがないのが今の日本社会であり、その代わり人間同士をつないでいるのが、メディアが投げ与えた情報なのです。
  テレビの家庭普及率が98%を超える韓国でも、状況は似たようなものでしょう。そうなると、就職は自分の責任だという認識も、メディアを通じて定着したものなのでしょう。
  ここでいうメディアというのは、別にテレビだけとは限りません。「一方的に価値観を移植する装置」と考えれば、そういうものはたくさんあります。
  たとえば、学校は自分たちの存在意義を確かめたいので、不況になると「就職に有利になるためには就職に強い学校を出て、スキルを身につけなければいけない」とか「きちんと努力しなければ社会で取り残される」とかいったことを生徒にさんざん吹聴します。そうでもしないと、退屈な講義やくだらない授業を誰も真面目に聞こうとは思わないからです。
  また、予備校やカルチャースクールの広告は、資格があれば就職に有利だとか、今の時代は自分で自分に投資しなければダメだみたいなことを主張するはずです。
  そして、新聞というのはエリートの集まりですから、「(自分たちのように)高い能力を身につける努力をした人だけが生き残る価値がある」という前提で記事をかくでしょう。
  こうやってみると、別に誰かがメディアを操って意図的に洗脳活動をやらなくても、勝手に当事者がそれに近い活動を熱心にやってくれていることになります。もちろん、そういう方向が好ましいという働きかけはすると思いますが、ある国をデフレに追い込みたい勢力にとっては、本当に仕事が楽なことでしょう。
  つまり、現代のように様々なメディアが乱立し、それぞれが生き残るために必死な世の中になると、勝手に自己責任を強調するような方向へ社会が流れていくことになるのです。
  もっと有り体に言ってしまえば「みんなで豊かになろう」とか「富める者が貧しい者を助けよう」とか、「社会全体で支え合う仕組みを作ろう」とかいった美しいセリフは、言い出す人間は誰もいないということです。なぜなら、そんなことを言っても自分たちの利益にはならないからです。
  そうなると、「従業員の生活のために賃金を上げろ」という主張がどういう評価を受けるか、すぐに分かるのではないでしょうか。社会のコンセンサスとして採用される可能性はゼロです。マクロ経済の視点で見たら、有効な手段であるのは間違いなくても、そんな大きな世界は見えません。政府が非正規雇用を規制しようとしても、「たいした努力もしなかった派遣労働者が、なぜ労せず正規雇用になるのか」という声の方が強くなるに決まっています。また、スポンサー(大企業)の意向をくんだ新聞やテレビも、そういう声を好んで取り上げることでしょう。
  民主党と連立政権を組んだ社民党・国民新党は、労働者派遣の見直しを唱えていますが、私は正直何もできないと思ってます。おそらく、次の参院選で連立を解消(もしくは公明党と民主党が連立)することで、その辺の動きは立ち消えになってしまうのではないでしょうか。
  もっとも、それでも彼らが少数者(本当は多数者のはず)の声を代弁しておくことはムダではありません。少しは問題の提起になるからです。ただ、それが大きな流れを変えるには至らないだろうということです。

  そうなると、もう「財政支出の増加」や「減税」についても、答えが見えてしまうような感じがします。一応見ておきます。

  「財政支出の増加」は、国民新党が特に熱心に唱えている政策です。当然、「バラマキだ」「ザイゲンはあるのか」といった反論(というか、もう馬鹿の一つ覚えといってもいい)があるのですが、それについてはちゃんと裏付けがあります。相続税を非課税にした無利子国債の発行です。
  こうすると、現金で残しておくより相続させるのが簡単になるので、金持ちが進んで無利子国債を買うようになり、780兆円ほどある純貯蓄残高を吐き出させることができます。政府には利払いの心配がないので、この発行で吸い上げたお金を財政支出に回してもそれほど負担にはならないことになります。
  しかし、このような意見がメディアで顧みられることはほとんどありません。これも簡単で、「国からばらまかれるカネに頼って仕事を見つけるのはよくないことだ」という発想が、国民の間にほぼ確立してしまっているからです。
  これも根底にあるのは、「カネは自分の努力で得るものだ」という、自己責任原理です。非常に単純な話なので、誰でも理解ができます。
  韓国でも、超大型財政支出を行って景気を浮揚させようという考えが、あえなく頓挫しています。

「任期中に大運河推進しない」ラジオ演説で李大統領
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090629-00000006-yonh-kr

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は29日のラジオ・インターネット演説で、大運河の中核は漢江と洛東江を連結することだとした上で、「現政権ではそれを連結する計画ももっておらず、わたしの任期内には推進しない」と明らかにした。

  (中略)

 こうした発言は、国民世論を反映し大統領選挙公約の朝鮮半島大運河建設は断念するものの、4大河川整備事業は大運河とは内容が異なるだけに狂いなく進めるとの意向を示したものと受け取れる。


  そして、その河川整備事業についても、かなりの批判が集まっています。

4大河川整備事業、2012年までに14兆ウォン
http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2008/1215/10051637.html

洪水や日照りによる被害に備え、洛東江、漢江、錦江、栄山江の4大河川の環境改善に2012年までに14兆ウォン(約9458億円)が投入される。

政府はこの事業を、堤防補強やダム建設が主な事業内容で、朝鮮半島大運河事業とは無関係だと数度にわたり強調しているが、膨大な事業費を投じるだけでも大運河の基礎作業だという解釈も出ており、再び「大運河論議」が起きることが予想される。

  (中略)

国土海洋部は、4大河川プロジェクトが実現すれば、年間2兆7000億ウォンに達する洪水被害と年間4兆2000億ウォンの復旧費を削減できると見込む。また、新規雇用19万人と23兆ウォンの生産誘発効果が発生し、地域経済活性化にもつながるとみている。


>膨大な事業費を投じるだけでも大運河の基礎作業だという解釈も出ており、再び「大運河論議」が起きることが予想される。

  そういう論議を起こすぞ、というメディアからの警告です。
  2012年までこの計画が無事に運ぶかどうかは分かりませんが、李明博大統領は日本の二大馬鹿政党に比べればまだ頑張っている方でしょう。
  もっとも、これがどの程度総需要の増加に還元されるかは怪しいところです。なにしろ、韓国の労働力人口のうち約50%が非正規雇用(日本は35%)ですから、末端までカネが行き渡るかどうかはあやしいものです。
  日本の場合は、そこまで話が行く前に「バラマキだ」「無駄遣いだ」という連呼が始まってしまう上に、政治家がもうすっかり「そう言う考え」に染まってしまっています。今回政権を獲得してしまった二大馬鹿政党の片割れは、●45兆円もの需給ギャップに全く言及せず、国民への手当金は予算の組み替えでなんとかすると明言しています。財政支出のザの字もありません。彼らは自民党から政権を取るために、自民党の政治をバラマキだ利権政治だと非難し続けてきたわけで、それに反する政策を採るわけに行かなくなっているのです。

  最後の「減税」については、かなり厳しい状況です。
  昨今では、「高齢化社会になるにあたって、国の財政には限界があるから、どこかで増税(しかも、なぜか消費税率アップ)をするしかない」というのが、マスコミの世界では常識になってしまっています。消費税導入や税率アップと同時に法人税が減税されているので、大企業にとっては非常に都合の良い論理だということができます。そうなると、当然減税などとんでもない、ということになるでしょう。
  しかし、それだけではありません。やはりここでも、自己責任の論理が傷口を広げるような働きをしているのです。
  たとえば医療費なら、病気になるのは自己責任だから、医療費の個人負担が重くなるのは当たり前だという風潮が、国民の間に蔓延しています。後期高齢者医療制度など、まさにそういう論理を具体化しているものでしょう。さすがに、あまりにひどい仕組みだったので次の政権は撤回すると宣言していますが、「国にカネを出してもらうのは自己責任に反する」というような風潮は、いろんなところで顔を出しています。
  こういう中で、減税をして低所得者を楽にしようという主張をしても、「納税という自己責任を果たさないのか」という攻撃を簡単に許してしまいます。「だからどうした」と政治家が言えればいいのですが、なぜか今の政治家はそういう開き直りができません。亀井静香のような昔の自民党政治家ならできるのでしょうが、民主党にいる若いだけが取り柄の松下政経塾出身者を中心とした政策バカどもにはまず無理です。彼ら自身が、自己責任論理の持ち主だからです。

  こうやってみてみると、自己責任原理が根付いてしまっている社会では、総需要を政府の力で増やす政策を思い切って実行するのは困難だというのが分かります。
  そうなると、皆さんの中には「なぜ自己責任という考えがこれほど蔓延するのだろう」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。ここまで見てきたように、自己責任論理と逆行するような制度や政策の方が、はるかに総需要を高めるのに役に立つのにもかかわらず、なぜみんな自分たちを痛めつけるような考え方を持ち続けるのだろうか・・・と。

  それは簡単です。そもそも近代という時代が自己責任原理の時代だからです。

  1789年に出されたフランス人権宣言は、第1条で「人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する」と書いています。これは、日本のお馬鹿な教科書では、まるで人類の福音のごとく扱われていますが、実際はそうではありません。
  フランス革命を支援していたのは、富裕市民です。要するに金持ちです。日本で言えば経団連みたいな連中です。そういう金持ちにとって邪魔なものは何かといえば、「共同体」や「しがらみ」です。そんなものがあるせいで、金儲けができなくなってしまうからです。
  その元締めになっているのが王侯貴族だったので、連中をギロチンにかけ、革命の名の下に財産を没収するための論理が「人は平等」だったわけです。
  農村や町の居住区に見られるような共同体は、とても窮屈なものですが、そこにいれば誰かが世話を焼いてくれる可能性が高いという点で、安心して生きられる場所です。しかし、労働力として工場に叩き込んで働かせるには、そんな場所にいてもらったら困ります。だから、「共同体は時代遅れで窮屈だ」ということになりました。だから、フランス人権宣言では、「結社の自由」が保障されていません。
  そうやって共同体と切り離されても、自由なんだからいいじゃないか、というのが、人権宣言の論理です。自由なのだから、自分で生き方を決めて、自分で生活の基盤を作ればいいわけです。あとから政府に助けてくれというのは間違っているのです。
  どうですか、日本の若者やサラリーマン、あるいは●奥谷某のようなクソ財界人が、「ワーキングプア」や「ハケン」をバカにするときの言い草と、全く同じだということに気がつきませんか?
  人間が生活するということは大変なことなので、自分だけで死ぬまで安心できる生活基盤を築くのはかなり難しいことです。そういうことが分かってきたので、19世紀になると共産主義が台頭してきてしまいました。それを押さえ込むために、仕方なく国家は社会保障という手段を講じたわけです。
  そういう経緯がありますから、実は近代的な社会では、人が他人を助けるというのは例外的な行為なのです。これは個々人の善意とかそういう問題ではありません。社会の中に、そういうシステムが組み込まれているかどうかということです。
  社会保障のような相互扶助の仕組みは例外であり、本来は自己責任だ、人間が生きて死ぬのは自分の責任によるものだ。これが近代経済システムの根本原則です。
  じゃあなんで政府が存在しているんだということになりますが、金持ちや企業が仕事をしやすくするためです。人間の価値を貨幣という単純な単位に置き換え、国民を洗脳して使いやすいコマにし、持っている金は租税という形で巻き上げて軍隊や警察を作って近代経済システムにエラーが怒らないようにする。これが政府の役目です。
  共産主義が台頭したり、犯罪が横行して社会の生産性が下がったりするのは好ましくないので、一応社会保障という仕組みは置いています。しかし、それはあくまで「納税単位」や「労働力としての国民の品質を下げないためのものです。こう考えると、社会保障があまり必要なく、文句を言わずに働いてくれる外国人労働者の方が都合が良いというのは当然だということになるでしょう。
  一番よく分かるのが教育です。日本の学校ではどこでも「努力は大切です」と言います。しかし、その結果あぶれた人間をどう扱ったらいいか、そもそもその「努力」は生きていくために本当に必要なものなのか、そのことに答えられる教師はいません。学習指導要領にも書いていません。これは、とりもなおさず、日本国政府が自己責任原理を国民に教え込もうとしていることを示しています。、努力して真面目な勤労者にならなければ(つまり、国家を支える歯車にならなければ)、納税してくれなくなりますから、当然でしょう。
  悔しかったら金持ちになればいいのです。そのための努力はいくらでもできます。何をどう努力するかは自由なのですから、その努力を怠っているのに人に助けてもらうなど虫が良すぎます。
  これは、別に私が小泉純一郎の信者だから書けるないようではありません。近代がそういうものだからです。
  私が思うに、このブログをお読みの方も含めた日本人のほとんどが、政府が善政を敷いてくれるはずだと素朴に信じすぎです。実際そういう面もあったのですが、それはたまたま冷戦があったり、敗戦から立ち上がって総需要が拡大するしかなかった時代だっただけであり、運が良かっただけなのです。
  そういう意味では、中曽根政権以前の自民党政権や、構造カイカクに抵抗してきた自民党の議員達は、本当によく頑張ってきたと思います。自己責任が当たり前という仕組みを強引に修正して、国民にカネが行き渡る仕組みを維持し続けたのですから。
  そうではなく、国家のために国民が使い捨てにされている国がどれだけ悲惨か、我々は韓国を見れば理解できるのではないかと思います。そういう意味で、韓国の経済を見ることは、我々自身を知ることにつながるのです。

  今の経済の仕組みが続くうちは、もう今の韓国のような崩壊の流れは止まりません。なにかこういう悲観的なことばかり書いているような気もしますが、それ以外に結論がないのです。
  このブログもそろそろただ頭で考えただけの未来予測はやめて、近代経済システムというレールからいかに外れるかというヒントを差し上げられるような記事を書かなければいけないなと感じています。

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Comment

●日銀の国債直接引受、自己責任

 皆さん、今晩は。国道134号鎌倉です。ろろさん、お世話様です。ろろさんのウェブログ、拝読していていつも勉強になります。

>当然、「バラマキだ」「ザイゲンはあるのか」といった反論(というか、もう馬鹿の一つ覚えといってもいい)があるのですが、それについてはちゃんと裏付けがあります。相続税を非課税にした無利子国債の発行です。

 ろろさん、これも財源の一つの案でしょう。しかし、いずれは償還しなければならないのが難点です。
 私は、財源として、国債を日銀に直接引受させることを提案いたします。これは事実上の通貨発行であり、通貨発行益を得られます。いかがでしょうか。

>自己責任

 私は、政策を論じる際に自己責任を持ち出すのは卑怯であると思っています。
 自己責任や自助努力は、精神論同様、人の上に立ち、口にする者にとっては本当に楽な言葉です。人が生きてゆく上で、何らかの形で自己責任や自助努力は必要だからです。
 しかし、政策を実行するものが自己責任を言い出すのは、責任を転嫁することと同じです。自己責任や自助努力が足りないからいけないのだというように、責任をなすりつけられるからです。

 私も、政策を論じるにあたっては、あえて、「自己責任」や「自助努力」を禁句にしていこうと思っています。そうすると、政策をより真剣に考えることができるようになると思います。
国道134号鎌倉 | 2009年09月15日(火) 22:16 | URL | コメント編集

●TBです

1000兆円の焚き火
http://sun.ap.teacup.com/souun/239.html
抜け出す第一歩は「隷属の認識」
http://sun.ap.teacup.com/souun/178.html
早雲 | 2009年09月15日(火) 23:07 | URL | コメント編集

●>>国道134号線鎌倉さん

>国債を日銀に直接引受させることを提案いたします

  無利子国債の話は、私の案ではなく、国民新党の提案です。
  御説の政策ですが、いくら金融担当大臣に亀井静香さんが就任したと言っても、日銀の政策委員会がこの案を飲むとは考えにくいです。それこそ、政府紙幣と同じくらいの衝撃があるでしょうから、わざわざ中央銀行制度を作った人びとからすると、自分たちへのテロだと認識する可能性が高いと思います。
  もっとも、現在の日本のマスコミやアカデミズムの状況を考えると、無利子国債すら事実上不可能でしょうね。残念ながら、もう財政政策による経済立て直しに期待するのはやめた方がよさそうです。
ろろ | 2009年09月15日(火) 23:12 | URL | コメント編集

●>>早雲さん

>1000兆円の焚き火

  いつ見ても衝撃的な政策です(笑)。
  しかし、金利負担というものがどれだけ国民経済を毀損しているか、これだけでよく分かります。貨幣など、所詮バーチャルな仕組みでしかないのですから、こういうことも許されるという意味で、頭のどこかに置いておきたい考えです。
ろろ | 2009年09月15日(火) 23:38 | URL | コメント編集

●昔読んだ本を思い出しました

フランス革命を主導した「市民(ブルジョア)」というものについて経済人類学者の栗本慎一郎氏は、これが特殊西ヨーロッパ的な存在で他の普遍的な人類社会(アジア、アフリカ等)では生み出されたことが無いと言っていたように記憶しています。
ただ栗本氏は同時にヨーロッパ近代は普遍人類史的にみれば異常な構築物だが、ヨーロッパ自身の歴史的文化的文脈においてはそうなる必然性があったのだとも言っています。
さらに氏は我々日本はヨーロッパ以外でおそらくただ一つ自分達の文化の内部から自発的に市場経済社会への移行を開始した社会だったとも述べています。
近代ヨーロッパ人(近代人)とはビョーキの人々だったというのが世界の公認教養体系になるにはあとどれくらいかかるかなぁ。
CatShitOne | 2009年09月16日(水) 14:02 | URL | コメント編集

●はじめまして

とても興味深く読ませていただいてます。

途中で気になった事があったんでコメントします。



>相続税を非課税にした無利子国債の発行です。
こうすると、現金で残しておくより相続させるのが簡単になるので、金持ちが進んで無利子国債を買うようになり、780兆円ほどある純貯蓄残高を吐き出させることができます。政府には利払いの心配がないので、この発行で吸い上げたお金を財政支出に回してもそれほど負担にはならないことになります。


ここのところですが、私も新聞で読みましたが、これは非常に危険な事だと思います。
「金持ちの金」は溜め込まれていくばかりで、消費にまわらないのが不況の原因の一つです。
その「金持ちの金」をまわす事で不況を克服しようという事なのでしょうが、先に述べられた方もいらっしゃいますが、償還の問題があります。
財政赤字を埋めてるのが国内の金だからといって、返さなくてもいいわけじゃありません。
結果、債務不履行にでもなろうものなら現在の不景気どころではなく、社会システムが一気に崩壊してしまいます。
インフレが進み、低所得者層の生活がますます困窮するのではないかと思います。
そしてそれよりもっと大きな問題として、「階層の固定化」が今より顕著になるのではないでしょうか?
相続税というものは、金持ちが世代交代するときに払った税金を貧乏人にばらまく(乱暴な言い回しになりますが)ものです。
これによって金持ちが更なる金持ちになるのを抑制していますが、相続税が非課税になると今よりも酷い所得の格差が生まれるのではないかと思います。
ステレオタイプな例ですが、今までの日本は貧乏人でも「学歴」により一発逆転できたものが、現状維持もできず、代を重ねるにしたがってますます貧乏になるのではないでしょうか。

相続税の割合を上げ、所得税の割合を下げることが、多くの人にとって生活しやすくなるのではないかと思います。
もちろん金持ちは資産を海外に移転する等の対策をとったりするだろうから、なかなか難しいと思いますが。
りょう | 2009年09月18日(金) 03:07 | URL | コメント編集

●>>りょうさん

  まず断っておきますが、私は「国民新党の政策には財源的裏付けがある」ということを説明しているだけで、私自身がこれを採用すべきということを積極的に訴えているわけではありません。

>相続税の割合を上げ、所得税の割合を下げることが、多くの人にとって生活しやすくなるのではないかと思います。

  相続税の割合を上げると、先祖代々の持ち家や、ひい爺さんの代から守ってきた田んぼや畑を物納せざるをえない保守層が出てくると思いますが、りょうさんはそれでも構いませんか?
  本来であれば、所得税の累進性を強化し、福利厚生の負担を考慮すると世界最低レベルにある法人税の税率を上げ、消費税を廃止することが一番です。しかし、それをいきなりやるのは無理です。だからこそ、国民新党もまず金持ちのカネを吐き出させて、そこから景気拡大につなげようという意図なのでしょう。

  一応国民新党の立場を弁護しておきましたが、正直なところ、私はもう税制を金持ちや大企業の都合の悪い方へいじくるのは無理だと思っています。それが、近代経済システムの方向性だからです。
  政府の所得再分配機能を信じる人がいるのは構いませんが、期待が裏切られても仕方がないと思っています。
ろろ | 2009年09月18日(金) 03:26 | URL | コメント編集

●需給ギャップ

ろろさま

いつも愛読しております、ありがとうございます
ある程度のグローバル化はしかたないにせよ、
その痛みを最小限にして国民をまもるのが政治・大メディアの責任のはず

早雲さんのいわれる債権1000兆円の焚き火は、デフレギャップ(需給ギャップ)を埋める丹羽春喜氏の政府通貨発行による需要創出に通じると感じます。
決して不可能とおもいませんが、おっしゃるとおりメディア・学者が猛反対するでしょう
ハンディ12 | 2009年09月23日(水) 20:43 | URL | コメント編集

●>>ハンディ12さん

>ある程度のグローバル化はしかたないにせよ、

  これはどうでしょうね。竹中某やナントカ信夫みたいな連中にとっては、「必要だからグローバル化しているんだ!」という理屈なわけで、必要なものもあるとかいうと、連中は全てのグローバリゼーションが必要だと言うに決まっています。
  向こうが言わない限り、切り出すべきではない話だと思いますね。

>その痛みを最小限にして国民をまもるのが政治・大メディアの責任のはず

  それが理想なのですが、実現できた国や地域を私は、ベルリン封鎖からプラザ合意までの日本くらいしか知りません。メディアに関しては、まあ正直言って実例は「皆無」ですね。
  彼らが要求すれば責任を果たすと信じること、そのものが幻想だと思います。
  こんなことを言うとアナーキズムのように聞こえてしまうかもしれませんが、そうではありません。ご機嫌取りをしなければ行けない状況を作り出して、被害を最小限に食い止めることには意味があると思っています。
  
ろろ | 2009年09月24日(木) 00:25 | URL | コメント編集

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