2017年07月 / 06月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫08月
--.--.--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
EDIT  |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2009.02.05(Thu)

「バイ・アメリカン条項」が持つ意味(1)~なぜバイ・アメリカンで大騒ぎするのか 

  話題になっているニュースを一つ扱います。

米下院が「バイ・アメリカ」鉄鋼条項を承認、景気対策法案の一環
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK836355520090129

米下院は28日、リセッションに陥った経済を立て直すための8250億ドルの景気対策法案の一環として、米国製鉄鋼の購入を義務付ける「バイ・アメリカ」鉄鋼条項を承認した。賛否両論あった同条項は、景気対策法案に基づき資金を供給される公共事業で使用される鉄と鉄鋼は米国製のみ容認される、としている。

米商工会議所や他の経済団体は、これを例に他国が同様の経済対策を検討する可能性があるとして、同条項の導入に反対していた。

全米鉄鋼労働組合(USW)のレオ・ジェラルド代表は「米国の製造業は深刻な打撃を受けており、経済で愛国心を発揮する時期だろう」と述べた。

同法案は幹線道路や鉄道、その他のインフラ計画に約900億ドルを配分している。

「バイ・アメリカ」鉄鋼条項は、空港や橋梁、運河、ダム、堤防、パイプライン、鉄道、公共輸送システム、道路、トンネル、港湾、桟橋などを適用範囲とする。米下院歳出委員会は今月、同条項を賛成55票、反対ゼロ票で可決した。


  アメリカという国は、ことに景気対策については、非常に思い切ったことをする国だと感心させられることがあります。●こちらの記事でも書かれていますが、総額79兆円です。ひとり辺り数万円の給付金を「私はもらう」「私は辞退する」などとどうでもいいことでゴチャゴチャやっているどこかの内閣と、決断力が違います。
  中でも目玉になっている、「バイ・アメリカン条項」というやつですが、反対している人がいます。

「米国産使えという“バイ・アメリカ”は貿易紛争の原因」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=110916&servcode=A00§code=A00

米国製品を使わせる“バイ・アメリカ”(Buy America)政策に対してバラク・オバマ米大統領もこの条項が過度に適用されることに反対するという意思を明らかにした。

3日、オバマ大統領はABCニュースとのインタビューで 「(現在、上院に係留中のバイ米国条項は)間違いだと思う。これは貿易紛争の原因になる上、今のような景気低迷期、米国はこのようなことはできないと述べた。また「我々が保護主義のメッセージを送ってはいけないということに同意する」と付け加えた。

バイ・アメリカは先週下院を通過した景気浮揚法案に含まれた条項だ。景気浮揚のための社会間接資本(SOC)事業に米国産鉄鋼だけ使うことにする件は発表直後、各国から「保護主義措置だ」と非難が殺到した。しかし上院ではむしろバイアメリカの適用範囲を政府予算で推進するすべての事業と米国産製品・装備に拡大し、交易国を刺激した。


  引用元は「中央日報」です。韓国の新聞が、オバマ大統領の名前も出さずに「米国産を使えというのは紛争の原因だ」という断定的な見出しを掲げる理由は、このブログをご覧の皆さんならすぐ気づくと思います。
  それにしても、アメリカ大統領が、自国の景気対策にダメ出しをしているというのは重大です。この「バイ・アメリカン条項」に、何かまずいところがあるようです。

  さて、この「バイ・アメリカン条項」を巡るニュースを見ていると、非常に疑問に思うことがあります。それは、「アメリカが貿易の国際協定に反することが、なぜそんなにいけないことなのだろうか」ということが、全く説明されていないことです。
  新聞やネットの記事では、そういう背景を全く説明しないか、したとしても、当たり前のことを当たり前だと述べるにとどまっています。みなさんは、それで満足してはいけません。現代の世界では、「当たり前」だとして一言ですませてしまうことが、実はある種の人間にとって都合のいい仕掛けになっていることが多いのです。このブログの役目は、そこを丸裸にして、一部の人間の胡散臭さを暴露することです。

  今回、みなさんに知っておいていただきたいのは、アメリカという国が第2次世界大戦の後、一貫して果たしてきた役割のことです。
  簡単に言えば、アメリカの役割は、「世界中で生産されるあらゆるものの買い手になること」です。
  第二次大戦が終わる少し前、「ブレトン・ウッズ協定」というものが結ばれました。この協定によって、アメリカドルは世界で唯一金(ゴールド)との交換が保証された通貨になりました。つまり、アメリカのドルだけは、金という文明史上一貫して価値があるものだとされてきた貴金属と交換できるので、みんな安心して使ってほしい、ということを、世界経済の支配層が打ち出したということです。
  これによって、日本や西ドイツといった、戦争で荒廃した国々がやるべきことが明確になりました。それは、アメリカもしくはアメリカと経済的な結びつきのある国に物を売って、アメリカドルを手に入れることです。この二カ国は特にそうですが、多くの国が戦後復興のためにドル建てで利子付き援助を受けていたので、それをスムーズに行うという意味合いもあります。
  その一方で、冷戦が始まってくれたおかげで、物も作れず、資源供給元としてもあまり魅力がない落ちこぼれの地域(東欧や北朝鮮、油田が見つかっていなかった中央アジアなど)は、ソ連という暴力教師が管理してくれるようになりました。全てユーラシアの内陸地です。
  イデオロギーなど持ち込んで語る必要はありません。アメリカは第二次大戦後、イギリスの国際貿易網を引き継ぐ形で「シーパワー(海洋国家)」として台頭した国です。船による貿易でアメリカとリンクできない「非効率的な」地域をソ連に引き受けてもらったというのが、冷戦の真相だったということです。
  その体制が、日本や西ドイツが対外債務を完済したあたりからおかしくなります。これらの国が、もはやアメリカの国内産業すら脅かす危険が出てきたのです。彼らを代表とした西側諸国は、ドルを死ぬほど貯め込んでおり、一気に金と交換しろと言われたら、アメリカは窮地に陥ります。それでも、アメリカは世界で一番の買い手であり続けなければなりません。
  そこで、アメリカは1971年に金・ドルの交換停止を打ち出します(いわゆるニクソンショック)。これによって、アメリカはドルの発行限度額に歯止めがきかなくなります。逆に言えば、いくらでも垂れ流しができるようになったということです。ドルを刷れば、いくらでも物を買うことができてしまうようになったとも言えます(暴落を防ぐには、日本のような国に国債を買わせて、余ったドルを「氷漬け」にすればいい)。
  そこで、アメリカの産業構造が決定的に変化していくことになるわけです。物を作って売るという実業の世界から、架空の数字をいかに増殖させるか(金融)、輸入した物をいかに国内でたらいまわしにするか(流通・サービス)ということに、関心がシフトしました。●こちらの記事で紹介した、ゼネラル・モーターズの没落は、その過程で起きたことです。
  もはや、アメリカには自国で物を作って国民生活を支える力はありません。アメリカの製造業人口は、全就業人口の10%ほどにすぎず、工業中間財(製品を作るのに必要な道具)や部品も輸入に依存しています。近頃は、最終財(できあがった品物)の輸入は、中国に丸投げにしているような状態です。

  そんな中で、「バイ・アメリカン条項」が出てきたわけです。

  この条項は、公共事業に使う鉄材をアメリカ製にしろというものです。アメリカは自由貿易を謳っていますが、結構な頻度で鉄鋼業界を保護しています。ブッシュ政権も、外国からの安い鋼材に対して、何度かセーフガードを発動してます(●こちらを参照)。雇用を守るという姿勢(=選挙対策)を曲がりなりにも打ち出さなければいけないからです。
  しかし、そういうセーフガードと、「バイ・アメリカン条項」は、全く意味合いが違います。前者がWTO(世界貿易機関)も認める緊急措置なのに対して、後者は、アメリカの議会が、「我が国の雇用を脅かしているのは、国際貿易である」ということを明言してしまったことを意味するからです。

  すみません、時間の都合などもあるので、次回に続きます。

★人気blogランキングへ←クリックして応援よろしくお願いします。



スポンサーサイト
EDIT  |  13:32 |  経済とグローバリゼーション  | TB(2)  | CM(4) | Top↑

Comment

●TBです

米国が“内にこもる”可能性
http://sun.ap.teacup.com/souun/490.html
20世紀の「大恐慌」と21世紀の差異性:20世紀「大恐慌」と21世紀「世界同時デフレ不況」」
http://sun.ap.teacup.com/souun/1016.html
貿易収支赤字の日本
http://sun.ap.teacup.com/souun/425.html
早雲 | 2009年02月05日(木) 18:42 | URL | コメント編集

私の投稿を続き物のエントリーに取り上げて下さって、ありがとうございます。

>アメリカの製造業人口は、全就業人口の10%ほどにすぎず、工業中間財(製品を作るのに必要な道具)や部品も輸入に依存しています。
このことは、正直意外でした。
アメリカは金融がさかんだという記事を目にする一方で、航空宇宙や半導体などの産業もさかんだ(と思っていた)からです。
とすると、実はアメリカも為替相場の変動の影響を受けやすいのかな、思えてしまいます。

>アメリカの議会が、「我が国の雇用を脅かしているのは、国際貿易である」ということを明言してしまった
これは、重要だと思います。
この機会に、日本も「貿易立国は幻想だ」といって方向転換したほうが、傷口は浅くて済むでしょうね。
LEM | 2009年02月07日(土) 07:24 | URL | コメント編集

失礼ながら、ブログ主様は日本の経済対策で75兆円を投入されてるのを御存知じゃないのですか?
首相官邸のHPで詳細が紹介されてますので、ぜひご覧下さい。
アメリカの79兆円は誉めて、日本の75兆円を馬鹿にするのは如何なものかと思います。

給付金でごちゃごちゃ言ってるのは、マスコミです。
自民批判は結構ですが、それなりに情報を集めた上で批判しないと片手落ちです。
せっかく内容は濃くて面白いだけに残念でなりません。
名前未入力 | 2009年02月11日(水) 00:58 | URL | コメント編集

●せっかくだから名前くらい聞きたかったです

>日本の経済対策で75兆円を投入されてるのを御存知じゃないのですか?

民主党のせいで第二次補正予算が成立しないのでその成立に努力したいと首相がおっしゃっているのは存じ上げていますが、もう「投入」されていたとは初耳です。

しかも、保証額を含めた「予算規模」ではなくて、実価額でですか。

初耳です。で、あの清和会がよく納得しましたね?
ろろ | 2009年02月11日(水) 09:27 | URL | コメント編集

コメントを投稿する


管理者だけに表示

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック

ハイエクの自生的秩序(1)

自生的秩序シリーズ、カルデロン家の話からここまで来てしまいました(笑)。 とはいってもここまでは来ることは、第2弾『続・カルデロ...
2009/02/05(木) 20:13:12 | 愚樵空論

Nothing To Say

製造業への派遣禁止に反対 自工会など  自民党の雇用・生活調査会(長勢甚遠会長)などの合同会議は3日、党本部で開いた会合で、労働者派...
2009/02/07(土) 01:18:43 | 或る浪人の手記
 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。