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2008.11.10(Mon)

【孫子の】 「毅然とした外交姿勢」以前にやるべきことがある 【兵法】 

  勇ましい主張を掲げて、敵をぶっ倒すというのは、はたから見ていて格好いいものですが、現実はなかなかそうはいかないようです。
  古代中国の思想家だった孫武という人物は、かの有名な著書『孫子』でこう述べています。

  「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」

  どういうことなのか、他の国がやっていることを具体的に見てみましょう。

タイ:タクシン元首相、英国が入国拒否 ビザ取り消し
http://mainichi.jp/select/world/news/20081109ddm007030085000c.html

 英政府は、タクシン・タイ元首相夫妻に発給した査証(ビザ)を取り消したと各航空会社に通知した。タイの空港当局者が8日明らかにした。元首相が先月、汚職防止法違反罪で実刑判決を受けたため、入国拒否を決めたとみられる。

 06年9月のクーデターで政権を追われた元首相は英国を拠点に事実上の亡命生活を続けている。現在は中国に一時滞在しているとみられる。今後は中国などを生活拠点としながら、タイ政界に水面下から影響力を行使し続けていくとみられる。


  タクシン首相は、●2006年のクーデターで失脚し、それ以降英国などで亡命生活を送っています。いまでも、相当数の支持者が国内にいるようです。

  ところで、、上の引用記事を読んで、何かひっかかったところがありませんか?

  たとえば、ここです。  

>今後は中国などを生活拠点としながら、タイ政界に水面下から
>影響力を行使し続けていくとみられる


  なんで中国が出てくるんだ?と思った方は、鋭いです。このタイ王国の元首相は、実はこういう人物です。

タクシン派8万人集結、タクシン元首相が国際電話
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/081102/asi0811020016000-n1.htm

 タイの親政府組織「反独裁民主連盟」(DAAD)の支持者約8万人が1日、首都バンコクの国立競技場で大規模集会を開き気勢を上げた。会場には、英国で亡命生活を続けるタクシン元首相から国際電話によるメッセージも寄せられた。

 8月に事実上の亡命生活に入って以来、タクシン氏が国民向けに直接のメッセージを送ったのは初めて。同氏は「タイ国民のために帰国したいが、最高裁から国家汚職防止法違反で有罪判決を受けるなど、自分の周辺には問題が山積しており今はできない。当面、金融危機で揺れる中国の経済問題のアドバイザーとして過ごす。皆さんには新たなクーデターから国を守ってほしい」と述べた。



  他にもいろいろ「裏情報」的なものはあるのでしょうが、これだけでもう十分ですね。そうです。タクシン元首相は、中国のエージェント(代理人)です。
  なんで中国がこの地域にエージェントを仕込んでいるのかというと、短期・中期的には経済権益の拡大です。中国と、タイを含めた東南アジア諸国連合(ASEAN)は、●2005年にFTA(自由貿易協定)を締結しています。これを結べば、WTOを通さずに二者間交渉で無関税貿易が可能になりますから、産業競争力に差があると、強い方が弱い方を経済的に支配できる可能性が高まります。日本や欧米より、有利な立場に立てるわけです。
  そして、長期的には、この地域を政治的・軍事的に支配するという狙いもあるでしょう。中国の最大の弱点は、日本同様、エネルギー資源を中東に依存していることです。そして、それをカバーするためには、中東までの海上輸送路(シーレーン)を独力で確保するしかありません。
  そのために、もっとも重要なのは、太平洋とインド洋の間に位置する●マラッカ海峡です。その先端にあるシンガポールは、19世紀以降欧米が支配しており、いまだに金融資本がここを拠点に東南アジアを経済的にコントロールしています(同地は香港と並ぶ金融センターでもある。●こちらを参照)
  今回イギリスが「中国の犬」をなぜ突然入国拒否にしたのか(イギリスの情報収集能力なら、その前から怪しい人物だと言うことは分かっていたはず)、私には分かりませんが、中国と何らかの駆け引きをしていて、一枚カードを切ったというところでしょうか。ひょっとすると、シンガポールや香港を巡る水面下での戦いが始まっているのかも知れません。

  しかしまあ、●毒インゲンの事件といい、産経新聞は、本当に中国の側面支援が好きだなぁ、という気がします。サッカーW杯のサポーターを彷彿とさせる見栄えのいいトップの写真と、新たなクーデターを憂慮するセリフで、民主的なリーダー像をしっかり宣伝しています。
  我が国の「保守」とか「右寄り」を売りものにしているメディアの、底の浅さや腐った魂胆がかいま見える・・・というのは考えすぎでしょうか?

  さて、このタクシンという人物ですが、よく知られているように、中華系タイ人です(小平と同じ客家系)。
  華人といわれる中国系の帰化人は、全世界に5000万人ほどいると言われています。大なり小なり、本国と結びつきを持って暮らしている人たちですから、中にはかなりの数の中国のエージェントがいるでしょう。日本にいる中国人だって例外ではないはずです。
  中国は、そういう民族的な利点を生かして、各国の情報収集や、世論工作を行うことができます。そういう時に使える現地協力者を、●「第五列」とか「細胞」とか呼んでいます。そういう仕込みをやっておくと、直接戦う前から相手をコントロールできる可能性が高くなります。

  翻って、我が国日本は本当にこの「細胞」や「第五列」の仕込みが下手です。

  これは、多分に日本人の潔い性格から来ているということができます。上のような中国のやり方を見たら、「あいつら、きたねえなぁ」などと思うのが普通の日本人ではないでしょうか。  
  ヘーワ主義、ジンケン尊重のサヨクはいうに及ばず、愛国や保守を名乗る人びとの国際政治に対する認識も、非常にナイーブです。彼らは中国や朝鮮を過剰に敵視しますが、想定している場面は常に日本がやられる側です。「核武装しろ」とか「竹島を武力で奪還しろ」とかいった、過激な方策だったりします。中には、現地住民をドン引きさせるような「デモ」に名を借りた騒動を起こしている人たちもいますね(笑)。これらは全て、『孫子』からすれば、下策中の下策です。
  これも、対外関係をリアリズムで考えられないという、日本人の悪いクセの現れなのかも知れませせん。それだけ平和に暮らしてきたということですが、世界中で日本企業が活動していて(筆者は別に肯定しているわけではないが、現実はそうなっている)、様々な国と関係が出来ている以上、いつまでも「人のいいおじさん」ではまずいわけです。

  せめて、日本人が人種的ハンデ(白人の国で活動するのはまず無理)を抱えることなく活動できて、なおかつ我が国の防衛に欠かせないような国や地域で「細胞」や「第五列:」を作っておきたいところですが、日本人には、それすらも無理なのでしょう?

  そんなことはありません。

  実は、日本の歴史上、そういった「細胞」や「第五列」の育成のみならず、諜報活動において一定の成果を上げた例があるのです。次回は、その辺を紐解きながら、日本にとっての「善の善なる」安全保障のあり方について考えてみます。

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