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2008.09.22(Mon)

ゼネラル・モーターズの凋落が物語るもの(前) 

  今日の記事は、実験的にいつもと文体を変えてみます。「違和感がある」「こっちの方がいい」など、コメント欄にて遠慮無くご感想をお寄せ下さい。

  さて、近頃、リーマンブラザーズの破産や、世界最大級の保険会社AIGの破綻をアメリカ政府が救済した事件などから、アメリカ発の金融不安を危ぶむ声が上がっている。
  しかし、このブログでは、そういう時こそ別の角度からアメリカという国を観察し、「少し上から眺めてみる」ことにしたいと思う。今回、私が注目したのは以下のニュースだ。

米GM:いすゞにトラック部門の売却打診 譲渡価格隔たり
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080920ddm008020097000c.html
--------以下引用--------

 経営不振に陥っている米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が、国内トラック大手のいすゞ自動車に、商用トラック部門の売却を打診したことが19日分かった。いすゞは正式に申し入れがあれば検討に入る考えだ。ただ、譲渡価格の隔たりは大きいと見られ、実現の可能性は流動的だ。仮に交渉がまとまれば、日本メーカーが米自動車大手の事業を買収する初のケースになる。

 関係者によると、GM側が9月中旬までに、トラック部門の大半を占める中型トラック部門を売却する意向をいすゞ側に伝えた。GMが近く譲渡額などを提示する模様だ。

 GMは主に「GMC」というブランドで北米などで商用トラック事業を展開している。乗用車では世界トップだが、商用トラックの世界シェアは06年の中大型トラック分野で2・1%(15位)と振るわず、収益面でも「足を引っ張っている部門」(国内トラック大手役員)とされる。

 いすゞの中大型トラックの世界シェアは2・7%(12位)。他社が手薄な小型トラックを主力としており、新興国などで販売を伸ばしている。

 買収が実現すれば、中大型トラックのシェアも5%近く(8位前後)に高まり、トヨタ自動車と子会社の日野自動車の合算シェア(3%)を抜き国内首位となる。

 いすゞは06年までGMから出資を受けたほか、現在も海外事業で連携するなど親密な関係を維持している。
--------引用以上--------

  世界ナンバーワンの自動車会社であるゼネラル・モーターズが、不採算になっている商用トラック部門を、友好関係にあるいすゞ自動車に売却するということである。これが意味するところは、私が思うに、単なる事業譲渡を超えた意味がある。
  ゼネラル・モーターズの歴史は、まさにアメリカの自動車産業発展の歴史だったといってもいい。
  私は今、何の気なしに「ゼネラル・モーターズ」という会社名を用いているが、実はこれは、日本で考えるところの自動車会社の名前ではない。「シボレー」や「キャデラック」といった、複数の自動車製造業者の株式を保有している「持ち株会社」である。日本で言えば、トヨタがダイハツや日野自動車を保有しているのに近いが、トヨタと異なり、GMは自分自身で車を作ってはいないということだ。
  この会社の最大の功績は、なんといっても、自動車という高級消費財を大衆の手の届く商品にしたということに尽きる。先に大量生産の自動車製造を実現したフォード社と異なり、GM(特に大衆車のシボレー・ブランド)は同じ性能の車であってもデザインを工夫し、広告を工夫して大衆に訴えて大成功した。
  また、高額な代金は、GMが用意したカーローンを利用することでカバーした。これによって中産階級でもがんばれば車を買うことが出来る状況が生まれた。つまり、今では当たり前になった「スタイリッシュなデザイン」「派手な広告戦略」そして「ローンによるマイカー購入」を、この業界に定着させたのがGMだったのだ。
  GMのブランド展開は多岐にわたる。先に挙げたシボレーやキャデラックのみならず、いかにもアメリカ人が好みそうな重装備SUV「ハマー」や、冒頭の記事で出てきた「GMC」がある。GMCは分からなくても、サファリとかユーコンといえば、アメ車ファンでなくとも知っている人はいるだろう。もちろん、そのようなレジャー色の強い車ではなく、商用トラック分野でも相当のシェアを占めている。
  GMは二度の石油ショックで打撃を受けたものの、その後もピックアップトラックやSUVといった車で相応のシェアを占め、積極的に海外に市場を求めることによって、世界一の自動車メーカーとしての地位を保持してきた。

  そのGMが、不採算部門を他に売り出す、というところまで追い詰められている。この出来事を突き詰めて考えると、アメリカの社会が抱える二つの問題点が浮かび上がってくるということができる。

  その一つが、「異常なまでの株主至上主義」である。

  GMが不振ではないか、ということはかなり前から言われていた。GM自身が、2年前にこんな発表をしている。
  
GMといすゞ自動車の資本提携関係解消について
--------以下引用--------

‐ 戦略的業務提携は継続 ‐

 ゼネラルモーターズ・コーポレーション(NYSE:GM、以下GM)といすゞ自動車株式会社(東証7202、以下いすゞ)は、資本提携の解消について合意、GMによるISZ株売却に拘わらず両社は、従来通り業務提携関係を維持継続することで合意した。

 GMは北米事業黒字化に向けて重要な局面にあり、バランスシートの強化と、すでに相当規模に上る手元流動性の更なる強化のために、GMが保有するいすゞ株の売却を決定した。「過去35年間にわたる協業の歴史を通じて、GMはいすゞ自動車に深い尊敬の念を抱き、いすゞを高く評価している」とGM会長兼CEOリック・ワゴナーは語る。「両社の関係は強固で、この関係はさらに強くなってきている。GMはこのパートナーシップが継続することを期待している。今回の株式取引では、いすゞとの業務提携関係を維持しながら、北米事業黒字化に向け重要な局面にあるGMが、すでに相当規模に上る手元流動性を更に増強することができる」とコメントした。
--------引用以上--------

  この発表で、日経新聞を日常的に読んでいない(筆者に言わせれば、幸運な)人や、金融やら財務といった世界に疎い人にとって、読んでいて妙な感じがする場所があるのではないだろうか。何を隠そう、私もその一人なのだが・・・(笑)。
  その部分は、ここである。

>バランスシートの強化と、すでに相当規模に上る手元流動性の更なる強化のため

  バランスシートというのは、いわゆる「貸借対照表」のことで、企業のプラスの資産(保有する財産や現金など)が右側に、マイナスの資産(借金など)と資本(その気になれば使えるお金の額)が左側にが載っている表である。右と左を合わせるとちょうど釣り合っている「はず」なので、バランスという名前が使われている。
  それはなんとか分かるにしても、みなさんには「手元流動性」という言葉の意味が分からないのではないか。
  私も実は聞いたことがなかったので、なんのことだろうと思って調べてみたら、このような意味があるそうだ。

●手元流動性
--------以下引用--------
short-term liquidity

手元にあって何にでも使える流動的な資金が、どの程度あるかを示す指標。資金の残高それ自体を指す場合と、それを1日当たりの売上げで割って計算する場合がある(手元にある流動資金としては、現金預金と短期的に所有している有価証券がある)。

手元流動性 = 現金預金 + 短期所有の有価証券
手元流動性 = (現金預金 + 短期所有の有価証券) ÷ (売上高 ÷ 365)

この比率は、会社の厳密な意味での支払能力の余裕度を示す。
--------引用以上--------

  要するに、手持ちのカネがどの程度あるかということを言うようである。人間で言うと、財布の中にお札や小銭やプリペイドカードがどのくらい入っているかということだと考えればいいのかもしれない。
  しかし、妙な感じがするのは、「すでに相当規模に上る」という手持ちのカネについて、なぜ「更なる強化」が必要なのかということだ。上のGMによる発表によると、資本提携関係にあったいすゞ自動車の株を売却することで、その「更なる強化」とやらを達成するのだという。これも人間に置き換えて考えてみると、財布の中身をもっと増やしたいから、自分が持っているマンガやDVDを古本屋に売るという感じかも知れない。カネがすでにあるというのに、なぜそんなことをする必要があるのか、ということだ。
  こういうときは、経済新聞だとかビジネス雑誌で「常識」とされていることを疑うことから始めた方がいい。上場企業に勤めている(会社の名前が)一流のビジネスパーソン諸氏や、日経BP出版の本を愛読しているような方々には辛いかも知れないが、それをやらないとこの記事の意味が見えてこない。
  簡単な話だ。要するに、GMに「もっと手持ちのカネを増やせ」と言っている人間がいるのである。それが、株主という連中である。
  なぜ株主がGMに手持ちの金を増やせと言っているのかというと、そうやってこしらえた現金を「配当として俺たちに配れ」と言いたいからである。
  日本の●会社法もそうだが、欧米生まれの資本主義の根本にある考えは、「会社は株主の所有物であり、好きなように売ったり買ったりいじくり回したりできる」ということに尽きる。近代(フランス革命後のナポレオン法典くらいから)になってヨーロッパで成立した「所有権」という概念が、そのまま企業活動に持ち込まれた結果である。この論理を敷衍すれば、会社が保有する株を売却させようが、不採算部門を切り離そうが、株主の勝手ということになる。
  そして、ここが重要なのだが、そういう場面では、会社の経営がどうなるとか、社会的な影響がどうなるとか、そういうことは全く問題にならない。株主にとって会社は自分のロボットみたいなもので、ちゃんと動かなくなったら、古道具屋にたたき売ってしまえばいいだけの話である。
  つまり、経済の実態とは関係なく、株主が儲かりさえすればいいという発想で、会社の運命を左右するような決定がなされているのである。冒頭記事の商用トラックの売却についても、間違いなくそういう文脈で出てきている。
  こういうものを、業界再編などといえば格好がいいが、実態はそんなに明るいものではない。みなさんが「不採算」部門を買い取った側の経営者なら、まず何をするだろうか?「リストラ」だろう。同じ会社の身内だと躊躇する首切りや減給も、他人のところから買い取ったものであれば口実がつけやすい。買い取った側もボランティアでやっているわけではないので、そのような行動に出たとしても部外者は文句を言う筋合いはない。
  この身売り以前から、GMという会社にはそういう株主至上主義を匂わせる行動があった。その一つが、国内で発表する新車を「ピックアップトラック」や「SUV」に絞っていたことである。理由は単純で、こういう車種は単価が高く、(こちらも単価の高い)オプションもたくさん付けられるので、利益率が高いからだ。日本のメーカーが作るような、日常の足として役に立つごくフツーの乗用車などは作らないわけだ。だいいち、GMが作ったコンパクトカー(一応、他社と共同して作った●シボレー・クルーズなどはあるにせよ)など、見向きもされないだろう。「柄じゃない」というやつである。だから、小さい車をたくさん作って、という戦術を、GMは使えなかった。そんなことより、儲けになるSUVやピックアップを売れ、というのが株主の要望だったわけだ。
  こういう感じで書くと、アメリカの企業というのは寂しいなあ、という感じがしないだろうか。新しいことをやって市場を開拓するより、何でも良いから儲けろ、採算が悪ければ切れ、売れそうな手持ちの株は売れ、一事が万事こんな調子である。
  別に、GMに限らず、アメリカの企業はみなそういう傾向がある。つまり、世の中で役に立つものや、斬新なものを作ることよりも、株主の利益に奉仕する方が正しいという風潮だ。そういう世界では、新しい工場建設や、機械の増強などといった「設備投資」にカネが回らない。そんなカネがあるなら、手元流動性を確保して、株主への配当に回せ、ということだ。
  これでは、製造業が育つはずがない。アメリカが、常に新しいものを作り出しているというイメージは幻想だ。竹中平蔵のようなネオリベラル(新自由主義)思想の信奉者がもてはやすアメリカ企業の「イノベーション」などというものは、ITや軍事産業など、限られた分野で成し遂げられているにすぎない。
  もう、アメリカでは、時代を変えるような車など生まれないだろう。日本車やドイツ車に食われるがままという状態は、今後なお一層加速するに違いない。

  では、仮にGMの株主たちが考え方を変えたとしよう。年間いくらいくらまでの利益は自己資本に回して、設備を増強しなさい、という風に株主総会で決まったと考えてみる。
  しかし、そんなことをしても無駄だろう。なぜなら、もうアメリカには、GMが作る魅力的なピックアップや斬新なSUVを買う人間などほとんどいないからだ。

  時間がないのでここで一旦切って、次回に続けたいと思う。

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