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2007.12.13(Thu)

バルカン半島は、今も「世界の火薬庫」だ!! 

  最近取り上げていなかったので、ロシア関係のニュースを二つほど拾ってみました。

欧州通常戦力条約、ロシアが履行停止
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071213AT2M1102Q12122007.html
--------以下引用--------
 ロシアが12日、欧州各国の通常兵器の保有上限を定めた欧州通常戦力(CFE)条約の履行を停止した。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大や米国が計画する東欧へのミサイル防衛(MD)施設配備への反発が背景にあり、ロシアを条約にとどまらせようと米国が示した妥協案を拒否した。軍備増強をちらつかせ欧米諸国を揺さぶる狙いだ。

 ロシア側は具体的に条約が規定する戦力の報告義務や監視団の受け入れを拒否すると表明している。ラブロフ外相は「大規模な戦力増強の計画はない」とする一方、「西側の対応次第だ」とも述べ、米国のMD配備やグルジアやウクライナなど旧ソ連圏へのNATO拡大の動きをけん制。8日に弾道ミサイルの発射実験を行うなど威嚇行動も繰り返している。
--------引用以上--------

  従前からチェコへのMD(ミサイル防衛)を巡っては、米ロの間で激しい対立がありましたが、ついにロシアが「切れた」ようですね。
  ちょうどNATOが東欧に拡大した頃は、ロシア経済はどんぞこで、出稼ぎに北海道に来る「ダンサー」がたくさんいた時期でもありました。ところが今や、天然資源の価格高騰を受けて、ロシアは歳入を大幅に増大させ、昨年には対外債務を完済してしまうほどです。
  中国を見ていてもそうですが、経済の裏付けがあると、強気の政策が採れるといういい見本です。

  実はロシアの外交は、もう一つ別のところでかなり活発な動きを見せています。

コソボ独立阻止へ活発 ロシア外相、EU切り崩し
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007121202071453.html
--------以下引用--------
 国連暫定統治下にあるセルビア南部コソボ自治州の独立を阻止しようと、ロシアが欧州連合(EU)への工作を活発化させている。コソボの最終地位問題では、EU主要国は独立支持を打ち出したい構えだが、加盟国には異論もある。そのEU内の亀裂に、ロシアはくさびを打ち込もうとしている。

 ロシアのラブロフ外相は十日、キプロスを訪問した。キプロスはEU加盟国ながら、コソボ独立に慎重な立場を取る。トルコ系住民との間で領土の分裂問題を抱えるキプロスは、国連安全保障理事会の決定に基づかないコソボの独立には、素直にうなずけないためだ。

 ラブロフ外相は、パパドプロス・キプロス大統領との会談後、「コソボ独立はバルカン半島や世界各地に連鎖反応をもたらす」とけん制した。

 その足でブリュッセルへ向かったラブロフ外相は同日夜、EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表と会談。EUがコソボの警察力強化に追加支援を行う方針であることに対しても「新たな安保理決議が必要だ。一方的な解釈は極めて危険だ」とくぎを刺した。

 実際、十日にブリュッセルで開かれたEU外相理事会では、大方が独立を容認する中で、キプロスのほか、バスク問題に手を焼くスペインも「一方的な独立が成功したためしはない」と反対を表明。スロバキア、ギリシャも慎重論を唱えた。このため結論はまとまらず、議論は十四日のEU首脳会議に持ち越された。
--------引用以上--------

  コソボ・・・というのをもうすっかりお忘れの方も多いと思いますので、地図を出しておきます。

コソボ周辺


  旧ユーゴスラビアの中でも、コソボ自治州というのは非常に特殊な位置づけでした。セルビア人主体のユーゴの中で、アルバニア人の人口が9割を占めているのです。しかも、この場所では「コソボの戦い」といって、強国オスマン・トルコを相手に、セルビア王国が絶望的な戦いを挑んだことがあり、民族の聖地となっています。
  当時は、ユーゴ政権によるアルバニア人「弾圧」ばかりがクローズアップされました。「民族浄化」だとかいう不穏な言葉も飛び交っていました。そして、これに対するNATOの介入を、「世界で初めての人道による介入だ」などと褒めていた人間(たとえば●講演の度に自分が掘り当てた油田のバレル数が違う(笑)国際ジャーナリスト)も結構いました。

  しかし、地政学の視点から見ると、そんなことをアメリカや西欧諸国がすすんでやるわけがありません。以下の引用が「コソボ介入の本当の理由」です。

コソボに米軍の秘密収容所?
http://y-house.web.infoseek.co.jp/inaka/earth/cuba/cuba.html
--------以下引用--------
2005年11月26日読売夕刊に25日付仏ル・モンド紙の記事が紹介されていた。コソボ自治州・州都プリシュティナの南に位置する米軍「ボンドスティール Bondsteel基地」内に、キューバ・グアンタナモ基地から移送された囚人を収監する秘密収容所が設置されている、というのだ。ここで、オレンジ色の服を着た15~20人の囚人を確認した、としている。
早速、「プリシュティナの南」という情報をたよりに飛んだ。

ヨーロッパの火薬庫と呼ばれ、多民族が入り乱れるこの地域は、チトーのユーゴー・スラビア崩壊後幾つかの国に分裂した。「コソボ自治州」はセルビア・モンテネグロにある。プリシュティナは隣国「マケドニア」寄りだ。山岳地帯だが峻険ではない。東欧の多くは低解像度画像だが、どういうわけかボンドスティール基地の半分は高精細だった。ズームアップしてゆくと、基地が鮮明に見える。戦闘ヘリが並んでいた司令部と思われる大きな建物の脇には数多くの兵舎が並んでいる。このどの部分が「秘密収容所」なのか判らない。世界の警察を自認する米国らしく共産圏以外の地域には必ずといっていいほどこうした米軍基地を見つけることができる。
--------引用以上--------
  
  同盟国でもない地域に、アメリカ軍が基地を持っている!!

  こんなことは、日本では全く報道されません。仮にもコソボはセルビア(ユーゴスラビア→セルビアモンテネグロ→分裂して現国名)の主権下にある土地です。紛争が多いから、「国連」の暫定統治にあることになっているのです。
  東欧の片隅で、西側のジャーナリストが立ち入らない場所で、アメリカが好き勝手やっているのがよくわかります。  

  まあ、このことの道義的な側面は置いておくとして、これをセルビア国民の立場になってみたらどう思うか。
  旧ユーゴ連邦の分裂の際には、分裂を図るクロアチアをさんざん支援し、コソボ問題ではあることないことメディアで書き立てたあげくに空爆(ある大統領のホワイトハウス内でのセックス・スキャンダルの隠蔽だったという噂もある)、そして、自国領であるはずのコソボに勝手に基地。

  「アメリカ死ね!!米軍出てけ!!」

  これが普通です。そして、アメリカ政府首脳やアメリカ国民は、こういう反応を甘く見すぎています。
  そこを狙って、ロシアがセルビアに手を突っ込んできたというわけです。ロシアは、セルビアとの間にFTA(自由貿易協定)を結んでいます。セルビアの経済規模は大変小さいため、実際はロシアが協定を通して経済面でセルビアをコントロールする可能性が高いと言えるでしょう。
  セルビアの隣接地域であるブルガリアやルーマニアさえEUに加盟するくらいですから、もちろんここも経済的にはEUが優位に立っています。セルビアの貿易の6割以上がEU相手の貿易です。しかし、逆にいえば、そういう地域に「明らかに反米」のセルビアがある意味は大きいと言えます。以前私が見たロシアの「プラウダ」という新聞にも、グルジアの大統領が「セルビアが裏切り者になる可能性がある」という発言をしたことが載っていました。

  では、ロシアはただ単にアメリカを妨害するためだけに、コソボの独立を反対しているのでしょうか。

  そんな暇な国はいません(笑)。こういう理由です。

ロシアからのパイプライン、完成は2013年
http://www.love-italy.net/lastampa/071207/01.html
--------以下引用--------
11月22日、ロシアのプーチン大統領は、クレムリン宮殿でプローディ首相と共に、Eni(イタリア炭化水素公社)とロシアの天然ガス会社ガスプロムが、ロシアから黒海を経て欧州へ天然ガスを供給するパイプラインを建設する合意に至ったことを発表した。ラインは黒海を経由しブルガリアで2本にわかれ、1本は南西ルートでギリシャ、イタリアのプーリア州に達し、もう1本は北西ルートでルーマニア、ハンガリー、チェコ、オーストリアを通る。

プーチン大統領は「建設は欧州へのエネルギー供給を保証するための重要な戦略的合意の成果」と述べ、EniのスカローニCEOとガスプロムのミラーCEOは、2013年から最高300億?のガスを供給できると説明した。プーチン大統領は「ヘリコプター部隊、高速道路建設、ソチ(ロシア)での冬季オリンピック施設のインフラなど、ロシア‐イタリア両国が協力して推進しているプログラムの一環である」と強調した。プローディ首相は「合意はエネルギー分野における両国の戦略的パートナーシップをより堅固なものとし、それ以外の分野での協力関係をも強めるだろう」と述べた。とはいえ、

パイプラインは複数の国を通るため、2国だけでは対応できず、関係国全ての協力が不可欠である。EU本部の協力も仰ぐ必要があるが、EUのピエバルグス エネルギー担当委員は「合意はロシアの欧州市場に対する深い関心の表れであり満足している」と早くも前向きコメントを出している。
--------引用以上--------

  ロシアの基本戦略は「価格高騰するエネルギー資源によって欧州を支配する」ということにあります。
  ロシアにとっては東欧自体が魅力的というより、西欧のエネルギー市場への輸送ルートとして見ているということです。特に狙っているのは、イタリア・フランス・スペイン・ドイツという人口の大きな国々です。

  さて、国名をよく見てみると、「チェコ」が入っているのはお気づきでしょうか。アメリカが、ミサイル防衛を配置しようとしている国です。これがミサイル防衛の意味です。チェコはアメリカのものであり、パイプラインを自由に敷設させはしないということを打ち出すためだったわけです。
  チェコとハンガリーに関しては、それぞれ●「プラハの春」●「ハンガリー動乱」という、自主独立運動をロシア人に武力で叩きつぶされた過去を持っています。この二カ国が「親ロシア」になることはおそらくないでしょう。
  これは、何も単に歴史教科書の上だけの話ではありません。最近私が見た映画に、●「君の涙ドナウに流れ~ハンガリー1956」というのがあるのですが、ソ連軍やソ連の水球チームがすさまじいまでの悪役として描かれています。あれを見てロシアを好きになる人間はまずいません。ハンガリー側はエンターテインメントを通じて、ロシアに屈しないという意思表示をしているのだと感じました。
  この二カ国にパイプラインを通すと、その反ロシア感情を利用されて、思わぬ妨害が入る可能性があります。
  そこで、ちょっと妄想ではありますが、「ブルガリア→セルビア→モンテネグロ→アドリア海→イタリア」というルートの天然ガスパイプラインを作るということを考えてみました。
  一応、それっぽい資料もあります。

地中海に軍事拠点の構築必要と、ロシア海軍総司令官
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200708030024.html(リンク切れ)
--------以下引用--------
モスクワ――ロシア海軍のマソリン総司令官は3日、同国軍が地中海に常時、兵力を配備すべきだとの考えを表明した。ロシアのインタファクス通信が報じた。黒海艦隊にとって地中海は戦略的に重要な海域と強調した。

ウクライナの黒海沿岸セバストポリにあるロシ軍港を視察した際に語った。北方艦隊、黒海艦隊の関与でロシア海軍は地中海でプレゼンスを保持すべきだと述べた。東欧でミサイル防衛計画を進める米国をけん制する狙いもあるとみられる。

地中海のどの港を想定にしているのかは不明。黒海からはトルコ・ボスポラス海峡などを通じて地中海へ抜けることが出来る。
--------引用以上--------

  どうでしょう。アドリア海や地中海にパイプラインを敷設するための布石だと思えませんか?

  ドイツやフランスじゃない国を籠絡してどうするんだ?とお思いの方もいるかも知れません。イタリアは、確かに治安もよくなく、勤勉とは言い難い国民性ですが、それでも世界で6番目の工業国です。ここが安い天然ガスで潤うとなれば、ドイツやフランスの国民がどう思うか。
  政界の汚職も多く、EUの主要国の中で最も隙があるのがイタリアです。まずここを攻め落とし、EUの中で「トロイの木馬」として動かす・・・天然資源が枯渇する今後の世界でなら、十分あり得ます。
  そのための布石、オセロ盤の角がセルビアであり、コソボなのです。こんな小さなところがなぜ・・・と思わないでください。バルカン半島は、いつでも西側(米欧)とロシアの戦場なのです。
    今後の注目は、アドリア海に面する「モンテネグロ」がどう動くかだと思われます。コソボの独立が回避されれば、おそらくロシアはここに工作をしかけて来るでしょう。

  ロシアがこの地域で優位になると、実は世界の逆側で大変なことが起きます。中国向けの石油・天然ガスの供給が大幅に削減されるということです。
  もうすでに、その兆候が現れてきています。

ロシア:中国への石油輸出量 07年は10%減か
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=1114&f=business_1114_003.shtml
--------以下引用--------
  ロシア駐中国通商代表部の関係者は13日、北京晨報の取材に対して「ロシアから今年、中国に輸出される石油は前年比で約10%減少するだろう」と語った。ロシアの中国への石油輸出量は2004年が570万トン、05年が760万トン、06年が1030万トンと毎年増えていた。
--------引用以上--------

  こちらの●「或る浪人の手記」様の記事を参照していただくとよくわかりますが、中国のエネルギー事情は相当悪化しています。なにしろ、自国製の武器をバンバン援助してまで「ダルフール問題」を引き起こしているほどです。もはや資源乞食といっても過言ではないでしょう。

  そこで、ロシアが「欧州向けの方が大事だから、中国へはちょっとしか売らないよ」などと言ってきたら?

  そのときが、日本を含めた中国の周辺国にとっての本当の危機の始まりでしょう。


  中東で手一杯であり、サブプライムローンのような「詐欺」でもしないと世界中から資金を集められないほど弱体化したアメリカは、果たしてバルカン半島で優位を保てるのか・・・私は正直疑問です。日本も、そろそろ自分の足でエネルギー調達や安全保障に乗り出さないといけないようです。

<参考記事>

● Россия - царь Газового Мира!(ロシアは天然ガスの皇帝)
●冷戦だ!!冷戦が再開したぞ!! (12月13日の追記あり)


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