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2007.10.14(Sun)

民営化至上主義者がわめく「便利さ」の誤謬 

  前回●郵政民営化の話題を扱った記事を挙げたので、ついでに気になっていた話題を取り上げます。

年賀状郵便局が印刷 図柄や差出人の住所・氏名
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2007101302056086.html
--------以下引用--------
 郵便局会社は十二日、年賀はがきを購入する顧客を対象に、見本から選んだ好みの図柄や、本人の住所と氏名を印刷して自宅に届ける「年賀状印刷ビジネス」を始めると発表した。

 年賀はがきを購入した人はこれまで、自分で印刷会社に名前などの印刷を頼んでいた。民営化で印刷会社への仲介業務が可能になり、新サービスで年賀はがきの需要を掘り起こす。

 簡易郵便局を除く全国の郵便局で取り扱い、申込期間は十五日から十二月十四日まで。販売目標は約五千万枚。

 顧客は、約八十種の図案を載せたカタログの中から希望のデザインを選び、申込書に自分の住所や電話番号などを記入して窓口で申し込めば、十日ほどで発送する。年賀はがきの送り先の氏名、住所の印刷は受け付けない。

 送料を含んだ印刷価格は、フルカラーの「おすすめ年賀状」の場合、百枚で七千四百円で、はがき代は別料金。自宅まで配送するため郵便局会社は「コンビニが扱う同様の商品よりやや高い」としている。
--------引用以上--------

  私がこの記事を見て、まず思ったことは、「人員不足で遅配や誤配が相次いでいるのに、その上また仕事が増えて郵便局の人も大変だなぁ」というものでした。
  前回の記事でも扱いましたが、年賀状の遅配が多く、郵便局には前年比2割増のクレームが来たそうです。いまさら年賀状の印刷の取り次ぎなんて、やっている余裕はないという感じもします。
  
  まあ、それをなんとかクリアできるとしても、私はこの「ビジネスモデル」がいいものだとは到底思えません。なぜなら、限られた年賀状の印刷需要を、郵便局が根こそぎ奪うことになれば、今まで年賀状の印刷を受け付けてきた印刷工場などが仕事を奪われる形になるからです。
  根こそぎ奪うなんて馬鹿な事態が起こるわけないだろう、という人もいるでしょう。しかし、郵便局が事実上年賀状印刷を独占できるやり方もあるのです。
  まず、超繁忙期である年賀状の配達時期の郵便配達料金を何割か上げます。今は難しいでしょうが、完全に民営化すれば十分に可能です。ヤマト運輸のメール便が、翌日到着だと値段が上がるのと同じように、「高度なサービスには特別な料金を」というのが、民間の常識だと言われればそれまでだからです。
  その上で、年賀はがきを大量に買う客に対して、「購入予約の際に郵便局で印刷を早めに申し込めば、配達料金を安くしますよ」と特別割引を持ちかけます。販売と同時にというのがコツです。
  コンビニだって同じようなことをやっているじゃないか、という人もいるでしょうが、大量の年賀はがきを扱う郵便局は料金をダンピングすれば競争相手を潰すことも出来ます。そんなことをしなくても、「郵便局の窓口に予約が多いから」と、企業向けの年賀はがきの卸価格をつり上げてしまえばいいのです。年賀はがきの販売については独占企業なのですから、こういうこともやろうと思えば出来ます。
  そうすれば、年賀はがき印刷は郵便局の独占状態にすることも可能になるのです。
  
  え?普通の印刷所や、ヤマト運輸なんかの民間運送会社も、「企業努力」をして値段を下げればいいじゃないかって?

  その立論は理論上は正解ですが、実際の経済社会にあてはめると100%間違っています。
  まず、年賀はがきという商品自体が、きわめて短期かつ膨大な需要なので、そのための設備投資が他の時期には利益のマイナスに働くという点です。日本郵便には各中央郵便局がありますから、初期導入コストが安く済みます。しかし、同じようなことを、はがきという特殊な運送物について、ヤマト運輸や佐川急便がやったら、絶対に採算割れします。
  そんな事業を「社会を便利にするために」進んでやろうという企業経営者がいるわけがありません。これで、ヤマトや佐川がこの事業に参入するという論理は破綻します。

  もっと重要なことは、年賀はがきというのは、いまさら大きな需要増を見込める業界ではないということです。
  電子メールなどのせいで、手軽に連絡を取り合うことができるようになっているからです。2007年の新年向け年賀はがきの発行枚数は37億9978枚で、前年度より7%減少しています。ピーク時の44億5936万枚(平成16年用)に比べるとかなり減っています。販売実績はこれよりさらに低いでしょう。

  ここで重要な法則があります。

「総需要が限定されている状態での競争強化は、短期的には経済の活性化を生むが、長期的には最強の経済主体を残して総崩れになる結果を生む」

  ということです。

  限られた需要である以上、競争が激化しても各経済主体が思うように利益を上げられません。そうなると、他者のシェアを奪うことでしか生き残れないので、共食い・共倒れという事態を招きます。そして結局、一番経営体力のある一社が勝つのです。
  これを大量の年賀はがき印刷でみれば、間違いなく生き残るのは郵便局でしょう。郵便局には財務的な余裕がありますから、ダンピングをしても赤字決算でしのぐことが可能です。しかし、他の業者、特に中小の印刷会社は、年賀状印刷の需要を奪われたら、かなりの経営悪化を招くでしょう。それがそのまま倒産につながるというケースがあり得ます。東京のような他にも需要開拓が期待できるような場所なら別ですが、地方の印刷会社は苦しいでしょうね・・・。

  「郵便局がまた便利になりました!」の結果が、これです。

  もちろん、郵便局も民営化した以上、他人の利益を食ってでも生きていかなければならないのであり、郵便局を責めるのは筋違いです。郵便局は、「便利さ」を商品化しただけであり、営利企業として生き残るにはやむを得ないことなのです。
  今度詳しく記事にしようと思っているのですが、こういう現象は国鉄の民営化でも見られた現象なのです。具体的に言えば「駅ナカ」と言われる商業施設です。あれによって、ただでさえ青息吐息だった駅前商店街が、さらに打撃を受けたという例を耳にします。
  JRにしても郵便局にしても、需要の根っこの部分(駅や郵便窓口)を握っていて、やり方によっては外に出て行く需要を全て青田買いすることが可能であるという点が共通しています。
  そして、それに対して、周囲にいる民間企業はすべからく無防備です。そりゃあそうでしょう。もともとそこにいたのは非営利企業であり、それを前提にして自分たちは営業していたわけです。それがいきなり民営化して、自分たちの競争相手になったのですから、対応できずにバタバタ倒れていくのは当然です。
  じゃあNTTはどうなんだ?という人がいるかもしれませんが、全く反論になっていません。NTTの場合は、IT技術の発達、特にインターネットの登場で、民営化以来総需要が拡大していく局面ばかりでした。これを、総需要が限定されている「駅周辺の購買力」や「年賀はがき需要」と同視するわけにはいきません。

  そうなると、今考えなくてはいけないのは、利便性の向上や財政負担の軽減を目的に公営企業を何でも民営化することが果たして国民経済全体にとって正しいことなのかということです。

  民営化以前は、民間は民間、郵便局は郵便局という風に、きちんとした棲み分けが出来ていたのです。不思議なもので、こういう棲み分けが出来ている方が経済的には成長するのです。過当競争が生じにくいからでしょう。
  ところが、巨大公営企業が突然民営化すると、その膨大な経営インフラを駆使して、油断している同業他社を潰しまくる「モンスター」になるのです。JRや日本郵便に銀行や外資が資本参加し、利益至上主義の経営を求めれば、そういう傾向に拍車がかかるでしょう。
  
  こういう負の側面は、他に需要がいくらでもある都会、なかんずく東京では見えてきません。たとえば、民営化しても、東京では簡易郵便局もつぶれませんし、ほとんどの郵便局は「統括支店」や「支店」といった有利な扱いを受けています(前回記事のrcp様の指摘による。また、●こちらのリンクも参照)支店が1店舗しかない高知県東部の不便さは、都民にとってはどこ吹く風なのです。
  表面的な「便利さ」を旗頭にして導入されていることが、どこかで大きな犠牲を生んでいることもあるのです。利便性を向上さえすればなんとかなるような東京での生活が日本の今だと思ったら大間違いです。

  次回は、10月7日から9日にかけての新潟訪問(新潟市および柏崎)について記事にしたいと思っています。

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