2007.10.29(Mon)
食品偽装の真の原因~人間のための経済を取り戻せ!
●以前の記事で取り上げた比内地鶏の偽装問題の続報です。
「比内鶏」正社員15人解雇へ
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20071029gr02.htm
------------以下引用------------
秋田県大館市の食肉加工・製造会社「比内鶏」(藤原誠一社長)が比内地鶏の製品を偽装していた問題で、藤原社長が同社の正社員15人全員に対し、解雇の方針を伝えたことが28日、わかった。
同社の桜井久美営業課長によると、27日、同社に全社員を集めて説明会が行われた。藤原社長は冒頭、偽装問題を起こしたことについて、「迷惑をかけて申し訳なかった」と謝罪した上で、「会社の存続が難しい」と解雇の理由を説明したという。
------------引用以上------------
ある意味「当然」の結果ではあります。しかし、人口減少率が全国でトップクラスの秋田県で、しかも県庁所在地でない都市で正社員の雇用が15人分なくなるのはかなり痛いです。
こういう事態を指をくわえて見ているわけにはいかないと、行政も動き始めました。
「比内地鶏」確認書を発行=ブランドの信頼回復へ-秋田県
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007102601204
------------以下引用------------
秋田県大館市の食肉加工会社「比内鶏」による「比内地鶏」の偽装問題で県は26日、ブランド回復に向けた当面の措置として、生産者などに対して本物の比内地鶏であることを示す知事名の確認書の発行を始めた。1カ月をめどに新たな認証制度も創設する。
県によると、対象は比内地鶏の生産者とひな供給業者で、適正に生産、管理、出荷されていることが確認できれば、県が「他の鶏と混じることのないよう生産管理されていることを確認した」と書かれた確認書を発行。小売店などは、生産者などから渡された確認書の写しを店頭に表示できる。
------------引用以上------------
そもそも、秋田県がなぜこのような認証制度を始めるのか。別に住民を助けたいわけではありません。税収がなくなるのが困るからです。つまり、地方企業だけではなく、地方自治体もまた日本円という貨幣の獲得に血道を上げているわけです。
その地方自治体ですが、現在は「構造カイカク」という兵糧攻めによって、正常に稼働するための金銭さえも足りなくなってきています。
たとえば、平成10年に約770億円あった秋田県の一般会計予算でうすが、平成19年には約690億円しかありません(特別会計の約261億円も前年比で26億円減)。公共事業費など、ピーク時の3分の1にまで落ち込んでいます。
こういう状況で、比内地鶏の認証制度の運営のために割く予算や人員が確保できるのでしょうか。私には疑問です。
このような地方財政の悪化にはちゃんと仕掛けた人間たちがいるのですが、この動きの「犯人」たちが、最近新しい動きを見せました。
都道府県ごとに経済財政モデル、年度内に作成へ
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20071027i413.htm?from=navr
------------以下引用------------
政府の経済財政諮問会議メンバーらが地方都市を訪れる「経済財政に関する地方会議」が27日、高松市で開かれた。
大田経済財政相のほか、民間議員の伊藤隆敏・東大教授、八代尚宏・国際基督教大教授が参加し、四国地方の経済人と意見交換した。今後、月1回のペースで開く計画で、2回目は11月に青森市で実施する。
大田経財相は終了後の記者会見で、都道府県ごとの経済財政モデルを新たに作成し、社会保障などの分野で給付と負担の先行き見通しを年度内に示す方針を明らかにした。「社会保障制度の変更は、高齢化の進んだ地域ほど影響を受ける。地域ごとに細かく見ることが必要」と述べた。年齢ごとの人口構成の推移などに基づいて、先行き10年程度の予想値を示す見通しだ。今後の年金制度改革などの議論に生かす狙いがある。
この日の会議では、愛媛県のタオル製造会社社長、高知県の運送会社社長などが出席した。「高速道路網を早期に整備して」「公共事業を急激に減らさないでほしい」など歳出増を求める声が相次いだ。
諮問会議は地域再生の柱の一つとして、農地を集約して大規模化するとの方針を示している。これに対し、会場からは「徳島県は山間地の比率が高く、大規模化したくてもできない。全国一律の施策は問題だ」と厳しい意見が出た。
内閣府が地方の経済人との意見交換の場を設けたのは、福田内閣が地方再生を重要施策の一つと位置付けたのを受け、諮問会議の審議に地方の声を反映させるためだ。
------------引用以上------------
>経済財政諮問会議
●以前の記事でも紹介しましたが、この団体こそ日本におけるグローバリストの大本営です。民間議員と称して、グローバリスト企業の役員が参加しているだけでなく、進行役である大田経済財政相は竹中平蔵の弟子である筋金入りの新自由主義者です。
>年齢ごとの人口構成の推移などに基づいて、先行き10年程度の
>予想値を示す見通しだ。
これでとりわけ悲惨な人口構成を見せ「ショーシコーレーカ」という魔法の呪文で、歳出削減を正当化するつもりです。
>農地を集約して大規模化するとの方針
あのライブドアの堀江元社長が「農業は儲かる」と発言していたのは、これがあるからです。大規模化された農地をモンサントやドールのような外資系アグリビジネス企業が買い取り、そこに中国人やベトナム人、フィリピン人(研修生という名目ですでに大量に入ってきている)を送り込んで、奴隷のようにこき使う。これこそ、21世紀型のプランテーションです。まさか、日本でこれをやろうと思っている人間がいるとは思いませんでした。
このように、経済財政諮問会議の目的は、地場産業である農業や食品加工産業をさらに衰退させ、農地を大企業が支配し、失業者を増大させることで雇用市場を買い手市場化することです。名目はもちろん「国際競争力の強化」です。みなさんは、絶対にこんな言葉に騙されてはいけません。
次期政権を担う非自民党政権には、是非この悪の巣窟を叩き潰してもらいたいものですが、この団体は既存のシステムを効率よく回すためのエージェントに過ぎません。本当の問題は彼らを生み出している仕組みなのです。
そもそも、なぜ食糧自給率が高く(167%)、秋田杉のような木材も算出し、ハタハタに代表されるように漁業資源も豊富なはずの秋田県が、なぜ財政悪化で苦しめられ、生活が危なくなっているのか、みなさんはお考えになったことがあるでしょうか?
秋田県は公共事業に頼ってばかりで、自助努力が足りないから?
そう考えている人がいるとしたら、はっきり言って馬鹿です。あなたはグローバリストに洗脳されています。今すぐテレビや2ちゃんねるを見るのをやめた方がいいです。
それでは、その公共事業とやらに秋田県が頼らざるを得ないのはどうしてでしょうか?簡単です。そうやって貨幣価値(要するにカネ)を分配しないと、住民の生活が成り立たないような仕組みができあがっているからです。
比内地鶏を燻製にして全国に販売しているのも、同じなのです。秋田県は人口が少ないので、総需要には限界があります。そんな中で、以前も述べたように、企業は金利の負担を抱えながら事業規模を拡大することを余儀なくされる場合が多々あります。
そこで、県外に需要を求めることで、生活の糧である日本円という通貨を獲得しているということなのです。
しかし、ここで問題になるのは、このような手段で貨幣を獲得したとしても、結局地方は大都市の資本に屈服する運命にあるということです。
たとえば、秋田県であれば、公共事業を続けるための補助金や地方交付税を中央政府に握られている形になっています。自分たちの利害を代表してくれる勢力(たとえば、●郵政造反組の野呂田方正議員)が中央政界でそれなりの力を持っていれば問題はあまり起きません。しかし、小泉・安倍政権の自民党のように、都市の浮動票や、都市型の宗教勢力(創価学会や統一協会)、そして何よりグローバリストが跋扈している財界を基盤とする勢力が伸張すれば、真っ先に切り捨てられる運命にあります。
それじゃあ、地方分権を進めればいいのかというと意見もありそうです。明言しますが、地方分権を進めたら地方はもっと荒廃します。
財源の委譲を進めれば、財政の自主性が確保できる、などと、安倍晋三前首相、竹中平蔵元大臣(典型的なグローバリストの犬)や総務省の官僚がよく言っていましたが、だからといって東京で取った税金が秋田県に委譲されるわけではありません。秋田県は、秋田県が取った税金を自由に使える、というだけです。
そうなると、人口のパイが少ないところは圧倒的に不利になります。財政は今以上に悪化することが必至です。
こんなことも分からずに、地方分権を支持している人間は、因果関係というもっとも基本的な論理を理解できない、しようとしない本物の馬鹿か、地方を切り捨てようという極悪人です。前者の典型が安倍氏、後者の典型が竹中氏でしょう。
はっきり言いますが、今の経済の仕組みは、どんなに抵抗しても最後には「東京」「大企業」「中央政府」が勝つ仕組みになっているのです。
その最大の原因は何か、と言えば、もう答えは一つしかないのです。「通貨」です。
通貨というのは、持っていれば持っているほど得をするという、おそらく世界で唯一の道具です。タンスやゲーム機は何十個もほしいという人はいません。しかし、お金があればそれらを必要に応じて買うことができます。
これは、交換の手段としては便利なのですが、二つ前の記事で述べた「金利」という仕組みと結びつくと、カネを持っているだけで豊かになる一方の人間と、カネを借りることでどんどん貧しくなっていく人間とに二分されていくという特徴があります。
そして、重要なのは、地方は常にカネを借りることで貧しくなっていく側にいるということです。秋田県やその中の市町村は、政府に対して地方債を引き受けてもらっています。比内地鶏の企業は銀行にカネを借りています。そうやって、金を出した人間のいいなりになっているというのが現状なのです。
やっかいなことに、交通事情の改善や規制の緩和によって、ここに大都市の資本や消費者が直接乗り込んできてしまうという事態が生じています。ジャスコのような大型店舗が地方にたくさん進出していること、そして、比内地鶏の燻製が東京や大阪にもたくさん出荷されていたことは、その現れです。こうなるともう、地方の企業や農家は、常に都会の顔色をうかがいながらやっていくしかありません。通貨がなければ、生活できなくなってしまっているからです。
こういう観点からすると、最近特に進んでいる東京や大都市への一極集中というのは、非常に合理的な仕組みなのです。仕事や需要は、通貨がたくさん回っているところでしか発生しないからです。
これに地方企業が勝とうとすれば、常軌を逸したコストダウン、すなわち保存料などの化学物質の多用(土産物は結構添加物が多い)だとか、偽装だとかに頼らざるを得ないのです。これは、努力で何とかなるレベルではありません。お金がたくさん回っている東京や名古屋の論理で、何でも妥当な判断ができると思ったら大間違いです。
そこで、提案したいのが、「地域通貨」という考えです。
この考えは、●オーストリアのヴェルグルという町での成功例があり、●ドイツのキームガウアーでも順調に運営されています。
それらと大筋で変わりませんが、私の考えをここで述べておきましょう。
地域通貨というのは、簡単に言ってしまえば、ポイントカードのようなものです。CDを買ったり、カラオケボックスを利用したりすると、変なカードにスタンプを押してくれることがあります。10個貯まると何かサービスが受けられるというあれです。
そのポイントカードを、初めからやってしまおうというのが地域通貨です。
もちろん、「地域」通貨ですから、特定の地域だけでしか使えませんが、そこが味噌なのです。ここにその地域の農産品などを結びつけることによって、「地産地消」が促進されるのです。
私が考えているのは、「一次産品」と「自然エネルギー」を地域通貨で取引するというものです。
秋田県を例に取りましょう。秋田県は食糧自給率が高いので、地元産の米や野菜(秋田県だけでも●これだけある)、魚などを買えるようにするのです。
農家の肥料や耕耘機の費用はどうするんだ、という疑問がありそうですが、それこそ堆肥や人手という「エコロジカル」な発想をすべきです。また、大型機械を必要としない●無農薬無肥料栽培という方法を導入するのもいいでしょう。
さらに、秋田県は風力発電もさかんです。冬の時期に北西の季節風が吹いてくるからです。この電力を、地域通貨で買えるようにするのです。春夏は、秋田杉に代表される森林資源を利用して「バイオエタノール」や薪炭を作り、これを地域通貨で購入できるようにしておけばいいのです。
そうして、あとは家賃の分だけ稼げばよくなり(ここもできれば地域通貨で支払えるようにしたい)、生活が楽になります。公営住宅をタダにしてしまうのが一番いいでしょう。そうすれば、飢えて死ぬということはとりあえずなくなります。このように、地域通貨には、セーフティーネットという役割もあるわけです。
では、それ以外のたとえば工業製品はどうやって買うのかといえば、これは従来通りの日本円で構いません。地域通貨は「使える」ということが大事なのであって、日本円を閉め出すことが目的ではありません。会社の給料は日本円で払うという仕組みを買える必要はありません
。こうすれば、日本が外貨獲得手段にしている二次産品の売り上げを低下させる必要がなくなります。
そして、最後には社会福祉を地域通貨で行うようにするのです。たとえば、ヘルパーを頼んだら、支払いは地域通貨でやるのです。こうすれば、福祉予算を増大させる必要がなくなります。地元に住んでいて老人のヘルプをやれば、とりあえず飢えて死ぬことがなくなるという状況が出来てくるでしょう。
そればかりでなく、その地域に住んでいる人たちで、地域の老人の面倒をみるという、本来あるべき介護の姿に立ち戻ることができるというメリットもあります。介護の現場で暴力やらセクハラが相次いでいるというのは、金だけでつながっている関係だからです。そうではなくて、地域のつながりの中で互いが助け合うようになれば、恥とか申し訳なさが手伝って、そういう問題は激減します。人材は地域住民にヘルパーの講習を無料でやれば済むだけのことです。現行の民間育成機関にしても、どうせ金だけ取ってたいした人材育成をしているわけではありません。
じゃあ、その地域はどうやって日本円を獲得すればいいんだ、という話ですが、地域通貨で回しきれない分を地域外に「輸出」すればいいだけの話です。本来、交易というのはそういう形を取っていたはずです。グローバリストがやっているような、遠隔地を結びつける大量消費志向の貿易(たとえば、●ウナギの輸入と大量消費)というのは、自然に反しているのです。こんなものに人間の生存を依存させてはいけません。
でも、地域通貨を発行しまくったら、インフレになるんじゃない?という声が聞こえてきそうですが、ご安心ください。この通貨は、一定期間が来たら使えなくなる(減価通貨)にするのです。
野菜は放っておいたら腐ります。米も、普通の室内であれば、そのうちコクゾウムシがついたり傷んだりして1年持てばいい方です。発電した電力はその場で使わなければ意味がありません。
自然界にあるものは、このようにすべからく「減価」するのです。通貨もそれに合わせておけば、物と金の不均衡(インフレやデフレ)は起こりようがありません。
しかも、減価すれば「貯めておいて他人に貸し、金利を取る」という、諸悪の根源になっている仕組みを取ることができなくなります。これによって、地元企業は救われるでしょう。規模を拡大する必要も、まぜものをする必要もないのですから。
当然金融業は規模を縮小したり、場合によっては廃業をせざるを得なくなりますが、それによって借り手が一緒に死ぬという状況はなくなります。
これがなぜ実現できないのかといえば、理由は簡単で、グローバリストが地域通貨を恐れているからです。
特に、上のような状況を一番恐れているのは、「日本銀行」と「商社」でしょう。日銀は実は営利企業です(東証二部に上場している)。彼らが儲かるためには、金利を取って金を貸すという商売がどんどん拡大することが必須です。そして、通貨の需給調整を行っているのも日銀です。「商社」は、遠隔地取引が少なくなればもうけが少なくなると言う意味で、地産地消を敵視している可能性が最も高い企業です。
しかし、彼らは力こそあれ、あくまで少数派です。多数派である国民、特に地方の住民が束になれば、地域通貨の導入で経済を半分くらい自立させることが可能です。
いきなり全部の自治体でやる必要はなく、秋田県だったら大館市からとか、そういう風にやれるところから漸次導入する方がいいでしょう。財政破綻した夕張市など、絶好のケースになりうると思われます。
何度でも強調しますが、現行の経済の仕組みを取っている限り、第二、第三の赤福、ミートホープ事件の再発は必ず起こります。
出てくるたびにモグラ叩きのように潰していても、何も改善しません。グローバリストの地方企業つぶしに荷担しているだけです。特に「メディアリテラシー」の高さを自負していらっしゃる「保守」のみなさんに言いたいのですが、彼らやマスコミに踊らされていていいんでしょうか?
とりあえず、経済の仕組みがおかしいからこういう事件が起こるのだと言えば、大騒ぎする必要もなくなります。そして、その仕組みを改めて、地方が自律的な経済を営むことができるきっかけこそが、「地域通貨」なのだということです。
普通に生活を営んでいて、ものをお金で買うことが当たり前になっていると見えてきませんが、もともと経済というのは我々人間が生きていくための手段だったはずです。ところが、バーチャルな通貨の力がどんどん増していくに従って、人間が経済のための道具になってしまいました。グローバリゼーションというのは、その究極の形だと思います。
このことが、結局は環境破壊や資源の浪費、貧富の差の拡大につながっているのです。どれだけの人がこのことで不幸になっているか分かりません。
人間あっての経済、人間を不幸にしないためにあるのが経済なのです。
その点をご理解いただけると、政治や経済の見方も変わってくるんじゃないかと思っています。
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「比内鶏」正社員15人解雇へ
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20071029gr02.htm
------------以下引用------------
秋田県大館市の食肉加工・製造会社「比内鶏」(藤原誠一社長)が比内地鶏の製品を偽装していた問題で、藤原社長が同社の正社員15人全員に対し、解雇の方針を伝えたことが28日、わかった。
同社の桜井久美営業課長によると、27日、同社に全社員を集めて説明会が行われた。藤原社長は冒頭、偽装問題を起こしたことについて、「迷惑をかけて申し訳なかった」と謝罪した上で、「会社の存続が難しい」と解雇の理由を説明したという。
------------引用以上------------
ある意味「当然」の結果ではあります。しかし、人口減少率が全国でトップクラスの秋田県で、しかも県庁所在地でない都市で正社員の雇用が15人分なくなるのはかなり痛いです。
こういう事態を指をくわえて見ているわけにはいかないと、行政も動き始めました。
「比内地鶏」確認書を発行=ブランドの信頼回復へ-秋田県
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007102601204
------------以下引用------------
秋田県大館市の食肉加工会社「比内鶏」による「比内地鶏」の偽装問題で県は26日、ブランド回復に向けた当面の措置として、生産者などに対して本物の比内地鶏であることを示す知事名の確認書の発行を始めた。1カ月をめどに新たな認証制度も創設する。
県によると、対象は比内地鶏の生産者とひな供給業者で、適正に生産、管理、出荷されていることが確認できれば、県が「他の鶏と混じることのないよう生産管理されていることを確認した」と書かれた確認書を発行。小売店などは、生産者などから渡された確認書の写しを店頭に表示できる。
------------引用以上------------
そもそも、秋田県がなぜこのような認証制度を始めるのか。別に住民を助けたいわけではありません。税収がなくなるのが困るからです。つまり、地方企業だけではなく、地方自治体もまた日本円という貨幣の獲得に血道を上げているわけです。
その地方自治体ですが、現在は「構造カイカク」という兵糧攻めによって、正常に稼働するための金銭さえも足りなくなってきています。
たとえば、平成10年に約770億円あった秋田県の一般会計予算でうすが、平成19年には約690億円しかありません(特別会計の約261億円も前年比で26億円減)。公共事業費など、ピーク時の3分の1にまで落ち込んでいます。
こういう状況で、比内地鶏の認証制度の運営のために割く予算や人員が確保できるのでしょうか。私には疑問です。
このような地方財政の悪化にはちゃんと仕掛けた人間たちがいるのですが、この動きの「犯人」たちが、最近新しい動きを見せました。
都道府県ごとに経済財政モデル、年度内に作成へ
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20071027i413.htm?from=navr
------------以下引用------------
政府の経済財政諮問会議メンバーらが地方都市を訪れる「経済財政に関する地方会議」が27日、高松市で開かれた。
大田経済財政相のほか、民間議員の伊藤隆敏・東大教授、八代尚宏・国際基督教大教授が参加し、四国地方の経済人と意見交換した。今後、月1回のペースで開く計画で、2回目は11月に青森市で実施する。
大田経財相は終了後の記者会見で、都道府県ごとの経済財政モデルを新たに作成し、社会保障などの分野で給付と負担の先行き見通しを年度内に示す方針を明らかにした。「社会保障制度の変更は、高齢化の進んだ地域ほど影響を受ける。地域ごとに細かく見ることが必要」と述べた。年齢ごとの人口構成の推移などに基づいて、先行き10年程度の予想値を示す見通しだ。今後の年金制度改革などの議論に生かす狙いがある。
この日の会議では、愛媛県のタオル製造会社社長、高知県の運送会社社長などが出席した。「高速道路網を早期に整備して」「公共事業を急激に減らさないでほしい」など歳出増を求める声が相次いだ。
諮問会議は地域再生の柱の一つとして、農地を集約して大規模化するとの方針を示している。これに対し、会場からは「徳島県は山間地の比率が高く、大規模化したくてもできない。全国一律の施策は問題だ」と厳しい意見が出た。
内閣府が地方の経済人との意見交換の場を設けたのは、福田内閣が地方再生を重要施策の一つと位置付けたのを受け、諮問会議の審議に地方の声を反映させるためだ。
------------引用以上------------
>経済財政諮問会議
●以前の記事でも紹介しましたが、この団体こそ日本におけるグローバリストの大本営です。民間議員と称して、グローバリスト企業の役員が参加しているだけでなく、進行役である大田経済財政相は竹中平蔵の弟子である筋金入りの新自由主義者です。
>年齢ごとの人口構成の推移などに基づいて、先行き10年程度の
>予想値を示す見通しだ。
これでとりわけ悲惨な人口構成を見せ「ショーシコーレーカ」という魔法の呪文で、歳出削減を正当化するつもりです。
>農地を集約して大規模化するとの方針
あのライブドアの堀江元社長が「農業は儲かる」と発言していたのは、これがあるからです。大規模化された農地をモンサントやドールのような外資系アグリビジネス企業が買い取り、そこに中国人やベトナム人、フィリピン人(研修生という名目ですでに大量に入ってきている)を送り込んで、奴隷のようにこき使う。これこそ、21世紀型のプランテーションです。まさか、日本でこれをやろうと思っている人間がいるとは思いませんでした。
このように、経済財政諮問会議の目的は、地場産業である農業や食品加工産業をさらに衰退させ、農地を大企業が支配し、失業者を増大させることで雇用市場を買い手市場化することです。名目はもちろん「国際競争力の強化」です。みなさんは、絶対にこんな言葉に騙されてはいけません。
次期政権を担う非自民党政権には、是非この悪の巣窟を叩き潰してもらいたいものですが、この団体は既存のシステムを効率よく回すためのエージェントに過ぎません。本当の問題は彼らを生み出している仕組みなのです。
そもそも、なぜ食糧自給率が高く(167%)、秋田杉のような木材も算出し、ハタハタに代表されるように漁業資源も豊富なはずの秋田県が、なぜ財政悪化で苦しめられ、生活が危なくなっているのか、みなさんはお考えになったことがあるでしょうか?
秋田県は公共事業に頼ってばかりで、自助努力が足りないから?
そう考えている人がいるとしたら、はっきり言って馬鹿です。あなたはグローバリストに洗脳されています。今すぐテレビや2ちゃんねるを見るのをやめた方がいいです。
それでは、その公共事業とやらに秋田県が頼らざるを得ないのはどうしてでしょうか?簡単です。そうやって貨幣価値(要するにカネ)を分配しないと、住民の生活が成り立たないような仕組みができあがっているからです。
比内地鶏を燻製にして全国に販売しているのも、同じなのです。秋田県は人口が少ないので、総需要には限界があります。そんな中で、以前も述べたように、企業は金利の負担を抱えながら事業規模を拡大することを余儀なくされる場合が多々あります。
そこで、県外に需要を求めることで、生活の糧である日本円という通貨を獲得しているということなのです。
しかし、ここで問題になるのは、このような手段で貨幣を獲得したとしても、結局地方は大都市の資本に屈服する運命にあるということです。
たとえば、秋田県であれば、公共事業を続けるための補助金や地方交付税を中央政府に握られている形になっています。自分たちの利害を代表してくれる勢力(たとえば、●郵政造反組の野呂田方正議員)が中央政界でそれなりの力を持っていれば問題はあまり起きません。しかし、小泉・安倍政権の自民党のように、都市の浮動票や、都市型の宗教勢力(創価学会や統一協会)、そして何よりグローバリストが跋扈している財界を基盤とする勢力が伸張すれば、真っ先に切り捨てられる運命にあります。
それじゃあ、地方分権を進めればいいのかというと意見もありそうです。明言しますが、地方分権を進めたら地方はもっと荒廃します。
財源の委譲を進めれば、財政の自主性が確保できる、などと、安倍晋三前首相、竹中平蔵元大臣(典型的なグローバリストの犬)や総務省の官僚がよく言っていましたが、だからといって東京で取った税金が秋田県に委譲されるわけではありません。秋田県は、秋田県が取った税金を自由に使える、というだけです。
そうなると、人口のパイが少ないところは圧倒的に不利になります。財政は今以上に悪化することが必至です。
こんなことも分からずに、地方分権を支持している人間は、因果関係というもっとも基本的な論理を理解できない、しようとしない本物の馬鹿か、地方を切り捨てようという極悪人です。前者の典型が安倍氏、後者の典型が竹中氏でしょう。
はっきり言いますが、今の経済の仕組みは、どんなに抵抗しても最後には「東京」「大企業」「中央政府」が勝つ仕組みになっているのです。
その最大の原因は何か、と言えば、もう答えは一つしかないのです。「通貨」です。
通貨というのは、持っていれば持っているほど得をするという、おそらく世界で唯一の道具です。タンスやゲーム機は何十個もほしいという人はいません。しかし、お金があればそれらを必要に応じて買うことができます。
これは、交換の手段としては便利なのですが、二つ前の記事で述べた「金利」という仕組みと結びつくと、カネを持っているだけで豊かになる一方の人間と、カネを借りることでどんどん貧しくなっていく人間とに二分されていくという特徴があります。
そして、重要なのは、地方は常にカネを借りることで貧しくなっていく側にいるということです。秋田県やその中の市町村は、政府に対して地方債を引き受けてもらっています。比内地鶏の企業は銀行にカネを借りています。そうやって、金を出した人間のいいなりになっているというのが現状なのです。
やっかいなことに、交通事情の改善や規制の緩和によって、ここに大都市の資本や消費者が直接乗り込んできてしまうという事態が生じています。ジャスコのような大型店舗が地方にたくさん進出していること、そして、比内地鶏の燻製が東京や大阪にもたくさん出荷されていたことは、その現れです。こうなるともう、地方の企業や農家は、常に都会の顔色をうかがいながらやっていくしかありません。通貨がなければ、生活できなくなってしまっているからです。
こういう観点からすると、最近特に進んでいる東京や大都市への一極集中というのは、非常に合理的な仕組みなのです。仕事や需要は、通貨がたくさん回っているところでしか発生しないからです。
これに地方企業が勝とうとすれば、常軌を逸したコストダウン、すなわち保存料などの化学物質の多用(土産物は結構添加物が多い)だとか、偽装だとかに頼らざるを得ないのです。これは、努力で何とかなるレベルではありません。お金がたくさん回っている東京や名古屋の論理で、何でも妥当な判断ができると思ったら大間違いです。
そこで、提案したいのが、「地域通貨」という考えです。
この考えは、●オーストリアのヴェルグルという町での成功例があり、●ドイツのキームガウアーでも順調に運営されています。
それらと大筋で変わりませんが、私の考えをここで述べておきましょう。
地域通貨というのは、簡単に言ってしまえば、ポイントカードのようなものです。CDを買ったり、カラオケボックスを利用したりすると、変なカードにスタンプを押してくれることがあります。10個貯まると何かサービスが受けられるというあれです。
そのポイントカードを、初めからやってしまおうというのが地域通貨です。
もちろん、「地域」通貨ですから、特定の地域だけでしか使えませんが、そこが味噌なのです。ここにその地域の農産品などを結びつけることによって、「地産地消」が促進されるのです。
私が考えているのは、「一次産品」と「自然エネルギー」を地域通貨で取引するというものです。
秋田県を例に取りましょう。秋田県は食糧自給率が高いので、地元産の米や野菜(秋田県だけでも●これだけある)、魚などを買えるようにするのです。
農家の肥料や耕耘機の費用はどうするんだ、という疑問がありそうですが、それこそ堆肥や人手という「エコロジカル」な発想をすべきです。また、大型機械を必要としない●無農薬無肥料栽培という方法を導入するのもいいでしょう。
さらに、秋田県は風力発電もさかんです。冬の時期に北西の季節風が吹いてくるからです。この電力を、地域通貨で買えるようにするのです。春夏は、秋田杉に代表される森林資源を利用して「バイオエタノール」や薪炭を作り、これを地域通貨で購入できるようにしておけばいいのです。
そうして、あとは家賃の分だけ稼げばよくなり(ここもできれば地域通貨で支払えるようにしたい)、生活が楽になります。公営住宅をタダにしてしまうのが一番いいでしょう。そうすれば、飢えて死ぬということはとりあえずなくなります。このように、地域通貨には、セーフティーネットという役割もあるわけです。
では、それ以外のたとえば工業製品はどうやって買うのかといえば、これは従来通りの日本円で構いません。地域通貨は「使える」ということが大事なのであって、日本円を閉め出すことが目的ではありません。会社の給料は日本円で払うという仕組みを買える必要はありません
。こうすれば、日本が外貨獲得手段にしている二次産品の売り上げを低下させる必要がなくなります。
そして、最後には社会福祉を地域通貨で行うようにするのです。たとえば、ヘルパーを頼んだら、支払いは地域通貨でやるのです。こうすれば、福祉予算を増大させる必要がなくなります。地元に住んでいて老人のヘルプをやれば、とりあえず飢えて死ぬことがなくなるという状況が出来てくるでしょう。
そればかりでなく、その地域に住んでいる人たちで、地域の老人の面倒をみるという、本来あるべき介護の姿に立ち戻ることができるというメリットもあります。介護の現場で暴力やらセクハラが相次いでいるというのは、金だけでつながっている関係だからです。そうではなくて、地域のつながりの中で互いが助け合うようになれば、恥とか申し訳なさが手伝って、そういう問題は激減します。人材は地域住民にヘルパーの講習を無料でやれば済むだけのことです。現行の民間育成機関にしても、どうせ金だけ取ってたいした人材育成をしているわけではありません。
じゃあ、その地域はどうやって日本円を獲得すればいいんだ、という話ですが、地域通貨で回しきれない分を地域外に「輸出」すればいいだけの話です。本来、交易というのはそういう形を取っていたはずです。グローバリストがやっているような、遠隔地を結びつける大量消費志向の貿易(たとえば、●ウナギの輸入と大量消費)というのは、自然に反しているのです。こんなものに人間の生存を依存させてはいけません。
でも、地域通貨を発行しまくったら、インフレになるんじゃない?という声が聞こえてきそうですが、ご安心ください。この通貨は、一定期間が来たら使えなくなる(減価通貨)にするのです。
野菜は放っておいたら腐ります。米も、普通の室内であれば、そのうちコクゾウムシがついたり傷んだりして1年持てばいい方です。発電した電力はその場で使わなければ意味がありません。
自然界にあるものは、このようにすべからく「減価」するのです。通貨もそれに合わせておけば、物と金の不均衡(インフレやデフレ)は起こりようがありません。
しかも、減価すれば「貯めておいて他人に貸し、金利を取る」という、諸悪の根源になっている仕組みを取ることができなくなります。これによって、地元企業は救われるでしょう。規模を拡大する必要も、まぜものをする必要もないのですから。
当然金融業は規模を縮小したり、場合によっては廃業をせざるを得なくなりますが、それによって借り手が一緒に死ぬという状況はなくなります。
これがなぜ実現できないのかといえば、理由は簡単で、グローバリストが地域通貨を恐れているからです。
特に、上のような状況を一番恐れているのは、「日本銀行」と「商社」でしょう。日銀は実は営利企業です(東証二部に上場している)。彼らが儲かるためには、金利を取って金を貸すという商売がどんどん拡大することが必須です。そして、通貨の需給調整を行っているのも日銀です。「商社」は、遠隔地取引が少なくなればもうけが少なくなると言う意味で、地産地消を敵視している可能性が最も高い企業です。
しかし、彼らは力こそあれ、あくまで少数派です。多数派である国民、特に地方の住民が束になれば、地域通貨の導入で経済を半分くらい自立させることが可能です。
いきなり全部の自治体でやる必要はなく、秋田県だったら大館市からとか、そういう風にやれるところから漸次導入する方がいいでしょう。財政破綻した夕張市など、絶好のケースになりうると思われます。
何度でも強調しますが、現行の経済の仕組みを取っている限り、第二、第三の赤福、ミートホープ事件の再発は必ず起こります。
出てくるたびにモグラ叩きのように潰していても、何も改善しません。グローバリストの地方企業つぶしに荷担しているだけです。特に「メディアリテラシー」の高さを自負していらっしゃる「保守」のみなさんに言いたいのですが、彼らやマスコミに踊らされていていいんでしょうか?
とりあえず、経済の仕組みがおかしいからこういう事件が起こるのだと言えば、大騒ぎする必要もなくなります。そして、その仕組みを改めて、地方が自律的な経済を営むことができるきっかけこそが、「地域通貨」なのだということです。
普通に生活を営んでいて、ものをお金で買うことが当たり前になっていると見えてきませんが、もともと経済というのは我々人間が生きていくための手段だったはずです。ところが、バーチャルな通貨の力がどんどん増していくに従って、人間が経済のための道具になってしまいました。グローバリゼーションというのは、その究極の形だと思います。
このことが、結局は環境破壊や資源の浪費、貧富の差の拡大につながっているのです。どれだけの人がこのことで不幸になっているか分かりません。
人間あっての経済、人間を不幸にしないためにあるのが経済なのです。
その点をご理解いただけると、政治や経済の見方も変わってくるんじゃないかと思っています。
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2007.10.28(Sun)
食品偽装はなくならない!?
●前回の記事の続きです。
前回私は、一連の「食品偽装」は現在の経済の仕組みが続いている限り、絶対になくなることはないと述べました。その辺をもう少し詳しく突き詰めてみたいと思います。
現時点で、とにかく第二の「赤福」や「ミートホープ」を出さないようにするとなれば、以下の二つの方法が考えられます。
(1)経営者の倫理・道徳を向上させる
(2)立ち入り検査などの監視システムを強化する
まず、(1)についてですが、多くのマスメディアが食品偽装の問題の結論として掲げているものです。「消費者の気持ちになって」とか「経営者として恥ずかしくない行動を」とか、そんな感じです。
しかし、私に言わせれば、順序が逆です。赤福にしろミートホープにしろ、消費者の気持ちになっている経営者だからこそ虚偽表示だとか混ぜものとか、そういう道義的には不当な行為に踏み切ったと言うべきです。
バブル崩壊以降、現在に至るまでの日本がそうですが、購買力が低下している局面では、どうしても価格が全ての基準になってしまいがちです。消費者が低価格を求める以上、企業側がそれに応えようとするのは当然でしょう。低価格で高品質など無理なのですが、「企業努力」「コストカット」という美辞麗句が、企業に常識ではありえない低価格路線を歩ませるのです。「激安」などという言葉をはやらせたマスコミにも責任の一端はあるのですが・・・。
おそらく、業界は消費者に対して、「どうせ彼らは品質など分からないから」という観念を持っているのだと思います。いい悪いではないのです。消費者全体を大きくとらえると、そういうものだからです。特に、大量生産が義務づけられている企業は、どうしてもスケールメリットや製造原価の方に重点を置きがちです。
その代わり、企業はどうしているのかというと、「イメージ」でものを売ろうとしているのです。非常に深いテーマなので、また別の機会に取り上げようと思っていますが、現代の消費活動は「中身よりもイメージ」なのです。
簡単な例が、ペットボトルの緑茶です。中身は夏場の安い茶葉(農薬が大量に使われるため取引価格が下がる)もしくは中国産の馬鹿みたいに安い茶葉なのですが、そういう中身については言及せず、「濁っている」とか「甘い」とか、変なコンセプトで作られていてたり、昔から有名なお茶の店の名前を掲げていたりします。そして、必ずギャラの高そうな有名人(たとえば松嶋菜々子)が、いかにも日本という感じのCMに出ています。茶葉の値段より、松嶋菜々子と広告代理店に払うお金の方が高いかもしれません。良い悪いは別として、お茶というのはそうやって売られているものだということです。
こういう状況ですから、消費者に本物の味を、といってもなかなか通じません。むしろ、パッケージにだけ「本物の味」だの「国産素材使用」(たとえ90%が中国産でも虚偽表示にはならない)だのという文字だけ出しておいて、そのイメージで消費者に気持ちよく買っていただこう(=騙されてもらおう)という企業が出てきてもおかしくはありません。
これらは全て、安く作って高く売るというグローバリスト(意味は●こちらを参照)的価値観に基づいているものです。いわば、商人の基本みたいなものですが、現代のグローバリストとの違いは、政府やマスメディアも動員して買い手を騙し、そういう悪行に都合のいい考え方をいろいろな形で発信しているということです。
残念ながらというべきか、赤福やミートホープはあくまでローカルな企業だったので、情報管理体制が甘く、関係諸処に手を回すことが出来なかったということなのだと思います。今回はたまたま露見してしまいましたが、根本的に行動様式を変えることはないでしょう。そんなことをしたら、競争に勝てないことは明白だからです。
では、監視態勢の強化についてはどうでしょうか。
たとえば、食品の原材料表示については、日本農林規格(JAS)法というものがあります。たとえば、この規定を厳格なものにして、抜き打ち検査や市場調査を頻繁に行う、などという方法がいいかもしれません。
しかし、この方法には今のご時世ではかなり痛い欠点があります。それは、役所が負担する費用や人員が膨大なものになるという点です。
たとえば、食品の市場調査(モニタリング)をやる人間を増やすというケースを考えましょう。モニタリング用に公務員を増やすというのはなかなかできません。そのため、自治体は消費生活調査員みたいな人を雇っています。当たり前ですが有給です。この分、税金の負担は増えます。調査にかかる経費も税金から出ます。こういう税金を、素直に出す気になる人はあまりいません。
こういうことを言うと、「そんなのは他の部分の経費を削ったり、公務員が人一倍働いてなんとかすべきだ!公僕だろう!」とか言い出す馬鹿が必ず出てきます。そして、どうもそういう人間に限って、「赤福はひどい。行政は何をやっているんだ」などと文句を言うことが多いように思うのです。公務員を税金泥棒などと非難する人は、公的機関など一切信用しなければいいとおもうのですが、そういう人に限って公務員に過度な期待をしていることがよくあるのです。変な話ですね。
公務員と言っても、労働者であることは変わりないわけで、みんなが3時間かかっている仕事を30分で終えられるようなスーパーマン揃いではないのです。高密度の仕事をやってほしいなら、それに応じた高額の給料を出すべきか、人員の増加を認めるべきなのです。それなのに、公務員に限ってはそういう常識が無視されて、とにかく減らせ、みんなのために馬車馬のように働け、などという論調が多いように思います。
JAS法にしてもそうですが、行政はそれなりの仕事をしているのです。しかし、世の中で扱われる商品が膨大であり、以下の例のようなあくどい手口の業者がいたりするわけです。
北朝鮮産アサリ、5業者転々「国産」に
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20050415uj24.htm
--------以下引用--------
北朝鮮産アサリの産地不正表示問題で、農林水産省が九州の2業者に改善を指示したアサリは、輸入後の流通過程で五つの業者を経由する間に、産地表示が中国産から無表示、さらに国産へと変わっていったことが、同省の調査や関係者の話で分かった。
(中略)
農水省は1月からアサリの産地表示調査を全国で実施。福岡県久留米市の小売店で「熊本産砂ヌキアサリ」と表示された産地不明のアサリが見つかったことから、同省が流通ルートをさかのぼって調べた。
その結果、問題のアサリは、民間輸入業者「福岡県魚市場」(福岡市)が北朝鮮から中国の業者を介して輸入、2月までの約1年2か月間に計約8000トンを仕入れ、うち1000トン余が卸売業者(福岡県)に販売されたことが分かった。
その際、「海州(ヘジュ)」など北朝鮮の地名が産地として表示されていたが、卸売業者は、鮮度回復や出荷調整を行う蓄養業者(同)に対し、これを「中国産」として引き渡していたことも判明した。
アサリはその後、蓄養業者から産地表示のない状態で別の卸売業者(同)に渡り、さらに複数の小売業者に販売された。
このうち久留米市の小売店を経営する「あんくるふじや」(佐賀市)が、一部の中国産アサリとともに計1280キロを「熊本産」として売っていた。日本農林規格法(JAS法)に基づく適正な国名表記は、どの過程にも見られなかった。
福岡県魚市場は、読売新聞の取材に「北朝鮮産アサリに関しては、地名を表示して商談をしている。国名を併記すべきだったが、(北朝鮮産であることを)隠してはいない」と説明。
(中略)
北朝鮮産アサリは、輸入後に複数の卸売業者が介在したり、出荷調整などで国内の干潟にいったん蓄養したりするなど、今回のような流通ルートをたどることが多く、不正表示がどの段階で行われたかは把握しづらい。
アサリの昨年の全輸入量のうち「福岡県魚市場」が輸入したのは約2割で、今回判明したルートは一部に過ぎないのが実情だ。
◆アサリの産地表示調査=農水省が全国の約1300の小売店で1月15日から実施。約1700の商品について、仕入れ伝票と突き合わせるなどして、アサリの産地表示が適正かどうかを調べた。その結果、アサリの国内消費量の約4割を占めるはずの北朝鮮産アサリと表示されたものは、2商品しか見つからなかった。
--------引用以上--------
まあ別に北朝鮮産に将軍様が毒を入れろと言っているわけではないので食べても問題ないのですが、やはりイメージの問題なのでしょう。
しかし、この不正表示摘発は、当時の小泉政権が北朝鮮に対して(表面上)強硬姿勢だったからこそ農水省が動いた、つまり政治的な側面が濃かった事例なのです。いつもいつもこういう検査態勢を取れるわけではありません。
このような検査をあらゆる食品についてやるにも関わらず、人員が今のままとなると、現場の公務員が過労死します。●公務員虐殺ショーにばかり熱心な基地外政治家を支持するネット右翼や、食糧自給率に触れもしない自称愛国ブログなどは、そうやって公務員が追い詰められるのを逆に喝采するのでしょう。しかし、問題は何も解決しません。
そもそも、何で日本で育てることが可能なシジミを、わざわざ北朝鮮から買わなくてはいけないかという問題から考えないと駄目なのです。同じように、なぜ赤福が中国産の原料を使ったり賞味期限切れの食品を再利用しなくてはならないのか、なぜ比内地鶏のスモークに近所の農家の普通の鶏が使われてしまうのか、そこから考えないと、この問題は解決しません。
そうなると、必ず思い当たるはずです。
そもそも、人が食べるものを、安く買って高く売るという行動原理に基づいて扱うべきではないのではないか?
そのへんを次回は考えてみたいと思います。時間がないため、記事が切れ切れになってしまい申し訳ありません。
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前回私は、一連の「食品偽装」は現在の経済の仕組みが続いている限り、絶対になくなることはないと述べました。その辺をもう少し詳しく突き詰めてみたいと思います。
現時点で、とにかく第二の「赤福」や「ミートホープ」を出さないようにするとなれば、以下の二つの方法が考えられます。
(1)経営者の倫理・道徳を向上させる
(2)立ち入り検査などの監視システムを強化する
まず、(1)についてですが、多くのマスメディアが食品偽装の問題の結論として掲げているものです。「消費者の気持ちになって」とか「経営者として恥ずかしくない行動を」とか、そんな感じです。
しかし、私に言わせれば、順序が逆です。赤福にしろミートホープにしろ、消費者の気持ちになっている経営者だからこそ虚偽表示だとか混ぜものとか、そういう道義的には不当な行為に踏み切ったと言うべきです。
バブル崩壊以降、現在に至るまでの日本がそうですが、購買力が低下している局面では、どうしても価格が全ての基準になってしまいがちです。消費者が低価格を求める以上、企業側がそれに応えようとするのは当然でしょう。低価格で高品質など無理なのですが、「企業努力」「コストカット」という美辞麗句が、企業に常識ではありえない低価格路線を歩ませるのです。「激安」などという言葉をはやらせたマスコミにも責任の一端はあるのですが・・・。
おそらく、業界は消費者に対して、「どうせ彼らは品質など分からないから」という観念を持っているのだと思います。いい悪いではないのです。消費者全体を大きくとらえると、そういうものだからです。特に、大量生産が義務づけられている企業は、どうしてもスケールメリットや製造原価の方に重点を置きがちです。
その代わり、企業はどうしているのかというと、「イメージ」でものを売ろうとしているのです。非常に深いテーマなので、また別の機会に取り上げようと思っていますが、現代の消費活動は「中身よりもイメージ」なのです。
簡単な例が、ペットボトルの緑茶です。中身は夏場の安い茶葉(農薬が大量に使われるため取引価格が下がる)もしくは中国産の馬鹿みたいに安い茶葉なのですが、そういう中身については言及せず、「濁っている」とか「甘い」とか、変なコンセプトで作られていてたり、昔から有名なお茶の店の名前を掲げていたりします。そして、必ずギャラの高そうな有名人(たとえば松嶋菜々子)が、いかにも日本という感じのCMに出ています。茶葉の値段より、松嶋菜々子と広告代理店に払うお金の方が高いかもしれません。良い悪いは別として、お茶というのはそうやって売られているものだということです。
こういう状況ですから、消費者に本物の味を、といってもなかなか通じません。むしろ、パッケージにだけ「本物の味」だの「国産素材使用」(たとえ90%が中国産でも虚偽表示にはならない)だのという文字だけ出しておいて、そのイメージで消費者に気持ちよく買っていただこう(=騙されてもらおう)という企業が出てきてもおかしくはありません。
これらは全て、安く作って高く売るというグローバリスト(意味は●こちらを参照)的価値観に基づいているものです。いわば、商人の基本みたいなものですが、現代のグローバリストとの違いは、政府やマスメディアも動員して買い手を騙し、そういう悪行に都合のいい考え方をいろいろな形で発信しているということです。
残念ながらというべきか、赤福やミートホープはあくまでローカルな企業だったので、情報管理体制が甘く、関係諸処に手を回すことが出来なかったということなのだと思います。今回はたまたま露見してしまいましたが、根本的に行動様式を変えることはないでしょう。そんなことをしたら、競争に勝てないことは明白だからです。
では、監視態勢の強化についてはどうでしょうか。
たとえば、食品の原材料表示については、日本農林規格(JAS)法というものがあります。たとえば、この規定を厳格なものにして、抜き打ち検査や市場調査を頻繁に行う、などという方法がいいかもしれません。
しかし、この方法には今のご時世ではかなり痛い欠点があります。それは、役所が負担する費用や人員が膨大なものになるという点です。
たとえば、食品の市場調査(モニタリング)をやる人間を増やすというケースを考えましょう。モニタリング用に公務員を増やすというのはなかなかできません。そのため、自治体は消費生活調査員みたいな人を雇っています。当たり前ですが有給です。この分、税金の負担は増えます。調査にかかる経費も税金から出ます。こういう税金を、素直に出す気になる人はあまりいません。
こういうことを言うと、「そんなのは他の部分の経費を削ったり、公務員が人一倍働いてなんとかすべきだ!公僕だろう!」とか言い出す馬鹿が必ず出てきます。そして、どうもそういう人間に限って、「赤福はひどい。行政は何をやっているんだ」などと文句を言うことが多いように思うのです。公務員を税金泥棒などと非難する人は、公的機関など一切信用しなければいいとおもうのですが、そういう人に限って公務員に過度な期待をしていることがよくあるのです。変な話ですね。
公務員と言っても、労働者であることは変わりないわけで、みんなが3時間かかっている仕事を30分で終えられるようなスーパーマン揃いではないのです。高密度の仕事をやってほしいなら、それに応じた高額の給料を出すべきか、人員の増加を認めるべきなのです。それなのに、公務員に限ってはそういう常識が無視されて、とにかく減らせ、みんなのために馬車馬のように働け、などという論調が多いように思います。
JAS法にしてもそうですが、行政はそれなりの仕事をしているのです。しかし、世の中で扱われる商品が膨大であり、以下の例のようなあくどい手口の業者がいたりするわけです。
北朝鮮産アサリ、5業者転々「国産」に
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20050415uj24.htm
--------以下引用--------
北朝鮮産アサリの産地不正表示問題で、農林水産省が九州の2業者に改善を指示したアサリは、輸入後の流通過程で五つの業者を経由する間に、産地表示が中国産から無表示、さらに国産へと変わっていったことが、同省の調査や関係者の話で分かった。
(中略)
農水省は1月からアサリの産地表示調査を全国で実施。福岡県久留米市の小売店で「熊本産砂ヌキアサリ」と表示された産地不明のアサリが見つかったことから、同省が流通ルートをさかのぼって調べた。
その結果、問題のアサリは、民間輸入業者「福岡県魚市場」(福岡市)が北朝鮮から中国の業者を介して輸入、2月までの約1年2か月間に計約8000トンを仕入れ、うち1000トン余が卸売業者(福岡県)に販売されたことが分かった。
その際、「海州(ヘジュ)」など北朝鮮の地名が産地として表示されていたが、卸売業者は、鮮度回復や出荷調整を行う蓄養業者(同)に対し、これを「中国産」として引き渡していたことも判明した。
アサリはその後、蓄養業者から産地表示のない状態で別の卸売業者(同)に渡り、さらに複数の小売業者に販売された。
このうち久留米市の小売店を経営する「あんくるふじや」(佐賀市)が、一部の中国産アサリとともに計1280キロを「熊本産」として売っていた。日本農林規格法(JAS法)に基づく適正な国名表記は、どの過程にも見られなかった。
福岡県魚市場は、読売新聞の取材に「北朝鮮産アサリに関しては、地名を表示して商談をしている。国名を併記すべきだったが、(北朝鮮産であることを)隠してはいない」と説明。
(中略)
北朝鮮産アサリは、輸入後に複数の卸売業者が介在したり、出荷調整などで国内の干潟にいったん蓄養したりするなど、今回のような流通ルートをたどることが多く、不正表示がどの段階で行われたかは把握しづらい。
アサリの昨年の全輸入量のうち「福岡県魚市場」が輸入したのは約2割で、今回判明したルートは一部に過ぎないのが実情だ。
◆アサリの産地表示調査=農水省が全国の約1300の小売店で1月15日から実施。約1700の商品について、仕入れ伝票と突き合わせるなどして、アサリの産地表示が適正かどうかを調べた。その結果、アサリの国内消費量の約4割を占めるはずの北朝鮮産アサリと表示されたものは、2商品しか見つからなかった。
--------引用以上--------
まあ別に北朝鮮産に将軍様が毒を入れろと言っているわけではないので食べても問題ないのですが、やはりイメージの問題なのでしょう。
しかし、この不正表示摘発は、当時の小泉政権が北朝鮮に対して(表面上)強硬姿勢だったからこそ農水省が動いた、つまり政治的な側面が濃かった事例なのです。いつもいつもこういう検査態勢を取れるわけではありません。
このような検査をあらゆる食品についてやるにも関わらず、人員が今のままとなると、現場の公務員が過労死します。●公務員虐殺ショーにばかり熱心な基地外政治家を支持するネット右翼や、食糧自給率に触れもしない自称愛国ブログなどは、そうやって公務員が追い詰められるのを逆に喝采するのでしょう。しかし、問題は何も解決しません。
そもそも、何で日本で育てることが可能なシジミを、わざわざ北朝鮮から買わなくてはいけないかという問題から考えないと駄目なのです。同じように、なぜ赤福が中国産の原料を使ったり賞味期限切れの食品を再利用しなくてはならないのか、なぜ比内地鶏のスモークに近所の農家の普通の鶏が使われてしまうのか、そこから考えないと、この問題は解決しません。
そうなると、必ず思い当たるはずです。
そもそも、人が食べるものを、安く買って高く売るという行動原理に基づいて扱うべきではないのではないか?
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2007.10.24(Wed)
なぜ「食品偽装」が起こるのか
最近、加工食品を安心して口に入れることが出来なくなった人も多いのかもしれません。こんなところまで来たか、というニュースが出てきました。
比内地鶏の薫製を偽装 秋田の業者「10年前から」
http://www.asahi.com/national/update/1020/TKY200710200169.html
------------以下引用------------
秋田県の特産で、「日本三大地鶏」の一つとして知られる比内地鶏で、加工商品として出荷した薫製の肉や卵に、比内地鶏でない鶏を使用した疑いがあるとして、秋田県は20日、同県大館市の食肉加工会社「比内鶏」(藤原誠一社長)を景品表示法などに触れるとして立ち入り調査した。同社は偽装を認めているという。
比内地鶏の県内の消費は全体の2割ほどで、8割は県外に出荷している。「比内鶏」社は通信販売で商品を出荷しており、全国の消費者に影響を及ぼしそうだ。
県などによると今月15日、「薫製の卵に比内地鶏以外の鶏を使っている」との匿名の電話が県に寄せられたため調べた。藤原社長は県の調査に対して「自分が就任した約10年前からすでに偽装がされていた」と話しており、使用された肉は周辺の農家から仕入れたニワトリのものだという。
同社は今月17日から製造を中止、商品の回収を始めた。比内地鶏の肉かどうかを確定する検査方法はないため、県は今後、仕入れから出荷までの経路を伝票や聞き取りなどから調べる。
民間の信用調査機関によると、「比内鶏」社は、全国に店舗を持つスーパーや百貨店、食品メーカーを取引先に持ち、今年3月期決算の売上高は4億円。大手スーパーのホームページからも同社の商品がインターネットで購入できるようになっている。
同社は薫製のほか、きりたんぽセットや精肉なども扱っているが、薫製以外の商品については比内地鶏を使用していると話しているという。
同社の石川徹総務課長は朝日新聞の取材に、「調査結果が確定するまでコメントは差し控えたい」と話している。
加藤雅広・県生活環境文化部長は「信頼にかかわる問題。事実関係を明らかにし、信頼回復に努めたい」とした。
------------引用以上------------
私は家にテレビがないので、ワイドショーやニュース番組が何を言っているのか知りませんが、おそらく無意味に危機感を煽るような言動をコメンテーターとかいう得体の知れない連中がしているのでしょう。民法のテレビのやっている番組というのは、スポンサーの宣伝のおまけです。CMとCMの間の短い時間についている付録だと思って見ていた方がいいでしょう。
割とまともなことを言っているマスメディアを見つけたので、そちらをたたき台にしてこの問題を掘り下げてみます。
食品偽装/社会的責任の自覚欠如(日本農業新聞社説)
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=347
------------以下引用------------
ミートホープ、「白い恋人」、名古屋コーチン、「赤福」、そして比内地鶏。賞味期限の改ざんや食品表示の偽装が後を絶たない。これだけ続くと、誰もが手にとる食品一つ一つを「大丈夫か」と疑ってしまう。食べ物を買う際に、最も注意深く見るのは表示だ。その表示と異なる中身であれば、何を選択の基準にすればいいのか分からなくなる。価格競争など厳しい販売環境が背景にあるとしても、不正は食品全体への信頼を損なう。メーカーの、食品企業としての社会的な責任を、あらためて喚起したい。
最近の一連の事件で共通しているのは、不正が長期間行われていたこと、匿名による通報がきっかけとなったことだ。比内地鶏を偽装した秋田県の食肉加工会社では、社長自身が「就任した10年ほど前に既に偽装が行われていた」と認めている。その時点で事実を公表すれば、まだ食品企業としての最低限のモラルがあったと言えるが、不正を隠ぺいし続けてしまった。経営者として失格といえる。
しかし、「悪事千里を走る」だ。「赤福」でも比内地鶏の問題でも、内部精通者が公の機関に通報したことで不正が発覚した。多くの従業員が携わる食品製造では法令違反などを内々に処理したり、いつまでも隠ぺいしたりすることはまず不可能だ。昨年4月に公益通報者保護法が施行されたことで、内部告発や匿名通報は今後も増えることは間違いない。食品企業は、先例を教訓とする体質に早急に転換してもらいたい。
食品の不正で怖いのは、問題を起こした企業だけで事が済まないことだ。ミートホープの問題が発生した時も、スーパーに陳列してある牛肉コロッケの売れ行きが一時落ちた。風評に惑わされる消費者が多いとは思わないが、さりとて同じような商品をわざわざ購入する消費者も少ない。万が一、長期化でもすれば生産・販売に与える影響は大きく、資本力の乏しい企業は事業の先行きさえ危うくなる。
それにしても、食品にかかわる法令違反や不正がなぜ頻発するのか。バブル崩壊以降続く価格競争が、少なからず影響している。消費低迷の長期化の下で小売りは激しい価格競争を強いられている。そのあおりを受けて食品メーカーも、できるだけ安い原材料を仕入れ商品化することを迫られている。その結果、商品の「価値と価格」のバランスが失われ、「より安く価値のあるもの」が求められる。いわば異常ともいえる商品開発が起きているのだ。
もちろん、厳しい消費環境の下でも懸命に企業努力を続けるメーカーもある。食品偽装はいかなる理由があろうと許されるわけではない。そう断った上で、食品に表示してある価格は商品価値を判断する一つの材料だと指摘したい。価格を軽視した商品には落とし穴があることを、消費する側もいま一度考えたい。
------------引用以上------------
>消費低迷の長期化の下で小売りは激しい価格競争を強いられている。
>そのあおりを受けて食品メーカーも、できるだけ安い原材料を
>仕入れ商品化することを迫られている。その結果、商品の
>「価値と価格」のバランスが失われ、「より安く価値のあるもの」が
>求められる。いわば異常ともいえる商品開発が起きているのだ。
これは半分当たってもいますが、半分間違ってもいます。
昨今頻発している食品関連の偽装が、国内の消費低迷に端を発することが多いのは確かです。たとえば、国産原料を売りにしていた伊勢名物の「赤福」に外国産の材料が使われ始めたのが1994年でしたが、この年は、「価格破壊」という言葉が流行になった
年でもあります。バブルが崩壊したにも関わらず円高が続き(ここをきちんと説明できないところが、市場原理主義的な経済学の限界だと考える。アメリカの誘導によって作られた「政治的円高」)、急激なデフレが進んだ時期でもあります。
しかし、それだけで説明するのは無理があります。「赤福」が製造日の偽装や消費期限切れ製品の再利用をし始めたのは30年ほど前だということですし、上記の比内地鶏の偽装も20年の「歴史」があります。バブル崩壊後の消費低迷だけに原因を求めるのは妥当ではありません。
私は、最近の食品偽装事件は流通というもののはらむ根本的な問題が現れたものだと理解しています。
私が「赤福」という商品を初めて見たのは、確か新大阪駅だったという記憶があります。ここからして何か変です。赤福というのは、江戸時代のお伊勢参りの時期に売られ始めた商品だったはずで、だからこそ「伊勢名物」なのです。伊勢の品物をどうして大坂で売るのか。ここに、根本的な問題が潜んでいるのです。
本来であれば、赤福にしても比内地鶏にしても、当初は地元での消費を前提とした商品だったはずです。それでもなんとかなっていたのは、農家やお茶屋さんが本業の傍らで生産していたからです。副業ならば、浮き沈みがあっても本業さえきちんとやっていれば生活はできます。
ところが、現代ではこういった地方の名産銘品が「会社経営」になってしまっています。会社として経営する以上は、ものを売ってお金(貨幣)を稼ぎ出さなければ存続できません。これがそもそもの「転落」の始まりなのです。
会社経営というのは、いかにして売るかということももちろん大事なのですが、それと同じくらい大事なのは、「借金をいかに返すか」という命題です。全て自前の資本で運営しているという会社はほとんどありません。どの会社も、銀行など金融機関からの借入金で凌いでいるというのが現状です
そして、この借入金には金利がついてきます。放っておくとどんどん借金がふくらむのです。だから、これを返済する、もしくは金利分だけでも払い続けるということが大きな目標の一つになります。
このような制約がある以上、純粋に「もうけ」を得ようとすると、金利の負担を上回るペースで利益を上げるしかなくなります。具体的に言うと、会社の売り上げのパイを増やすしかないという結論になります。だから、赤福の工場を大きくして、名古屋駅や新大阪駅で売ったり、比内地鶏の燻製を作って全国出荷したりするのです。
そうなると、設備投資や販売促進費用、新商品の開発費などでまたお金が必要になるわけで、またぞろ借入金が必要になります。するとこれにまた金利の負担がかかり・・・という感じで、結局借金に追われるように経営を続けざるを得なくなるのです。
もちろん、地元で観光客や、グルメマニアだけを対象にした経営をしていてもかまいません。しかし、それでは存続ができません。それが現実です。
つまり、現在の経済の仕組みを前提にすれば、食品は必ず「価格競争」が生じ、いずれ「価格破壊」に突き進むことは当然の理ということです。
日本農業新聞の社説では、
>メーカーの、食品企業としての社会的な責任を、あらためて喚起したい。
と主張し、その一方で、
>価格を軽視した商品には落とし穴があることを、消費する側もいま一度考えたい。
と、消費者に対する注意を喚起しています。
不思議だと思いませんか。食品の偽装に関する事件が出てくると、最後に出てくる結論は、このようにだいたいは当事者や消費者の倫理を問題にしてしまうのです。
しかし、食品を扱う主体が企業であり、売り上げ増大や事業規模の拡大を至上命題にしている以上、このようなかけ声はあまり意味がありません。ほとぼりが冷めれば、また同じような事件が出てくるでしょう。あるいは、もっと上手に隠蔽がなされる可能性もあります。
かといって、この事態を放置するわけにもいきません。「消費者も騙されてやっていると思えばいいじゃないか」「安全な食品なんて今の世の中ありえない」などと言ってはいけないということです。
私が思うに、このような食品関連の偽装事件が「頻発」している、もしくは、上の記事にあるような「公益通報者保護法」が制定されたのは、ある狙いに基づいていると思っています。
その狙いとは、ズバリ言うと、「グローバリストによる地方企業絶滅作戦」です。
何をオーバーな・・・と思わず、もう少しお付き合いください。
グローバリストというのは、利益を極大化するために、自国への影響を考慮せず積極的に海外に進出し、国家間の垣根を取り払おうとする勢力のことをいいます(詳しくは●こちらを参照)。特に「商社」や「大型スーパー」の最大の武器は、日本と海外の価格差を利用した薄利多売です。これを、マスコミを通じた広告で消費者に売り込むのです。こういう連中にとっては、デフレはかえってチャンスです。低価格競争になれば、中国やアメリカという低価格な原材料調達先とパイプがあるグローバリスト企業には圧倒的に有利であり、デフレになればダンピング(シェアを奪うための値下げ)をしかけて、競合他社を潰すことができるからです。
そのような行動の邪魔になるのは、地元に根付いている企業です。彼らがいるだけで自分たちのシェアが低下するからです。赤福にしろ、「白い恋人」にしろ、「ミートホープ」にしろ、共通しているのは、地元で長年営業している企業だということです。こういう企業が特定の市場に根を張っていると、グローバリストにとっては非常に邪魔なのです。
そこで、バブル崩壊後の「価格破壊」で価格競争に持ち込み、偽装問題で息の根を止めようとしている、というわけです。マスコミというのは大企業がスポンサーについているので、そういう動きには喜んで荷担するでしょう。
よく考えてみて下さい。なぜこれだけ食品の偽装が騒がれているのに、伊藤ハムだとかハウス食品や森永製菓のような大手食品企業や、ジャスコのような大型スーパーの「内部通報者」が出てこないのか。
大手だから気をつけている・・・というのもあるかもしれません。たとえば、小麦製品からほとんど殺虫剤が検出されない日清食品のような例もあります。しかし、それが一般的だという保証はありません。
簡単な話です。グローバリスト企業やその系列の企業は、もうそういう面での配慮などしていないのです。その代わり、聞かれない代わり触れないし、いざというときに外国のせいに出来るように中国産やタイ産を使っているのです。
へたをすると、もうあと10年もすれば、赤福のような地方に根付いた名物企業は日本から姿を消すかもしれません。以下の記事のような状況があるからです。
まだまだ続く? 相次ぐ値上げ、企業努力そろそろ限界
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/m20071024032.html
------------以下引用------------
食パンにカップめん、カレー、トイレットペーパー、ガソリン…。この秋、生活必需品の値上げが相次いだ。新興国の需要拡大などで原料高騰に直面した食品業界が値上げの先陣を切り、原油価格の高騰がタクシー、電力・ガス料金の値上げへと影響のすそ野を広げ、家計を直撃する。今のところ大手スーパーが巨大な商品調達力をバックにした値上げ拒否姿勢でそのダメージをやわらげているが、本当の影響はこれからが本番だ。
食品原料の高騰は、中国など新興国の消費拡大に加え、需要が高まるバイオエタノール生産向けに振り向けられるなど食料争奪戦が背景にある。最近のパンやめん類の原料となる小麦価格は、政府売り渡し価格の引き上げもあり、平成12年の1・8倍に上昇。日清フーズが11月から家庭用パスタや小麦粉を17年ぶりに値上げするのに続き、カップめん、パン、うどんへと連鎖している。
大手商社は、今後は13億人の胃袋を抱える中国が穀物輸入大国となり、「穀物や食品原料の価格は高止まりし、畜産農家が飼料コストを吸収できずに食肉の値上げにも波及する」とみる。
原油価格の高騰による生活品への影響も大きい。学生やサラリーマンに身近な文具品では、大手のコクヨが10月からのコピー用紙に続き、来年1月からはノート類も値上げする。
古紙や重油などのコスト増で製紙各社も悲鳴をあげる。日本製紙連合会の鈴木正一郎会長(王子製紙会長)は22日、「もう一度価格改定をお願いせざるを得ない」と追加値上げを示唆した。ティッシュやトイレットペーパーは11月出荷分から7月に続く第2弾の値上げを打ち出したばかり。スーパーの特売作戦にも影響が出そうだ。
家庭向けの電力、ガスにも値上げの波が押し寄せている。電力料金は燃料となる石油、ガスの値上がりを反映して「(来年1~3月分を)値上げすることになる」(東京電力・勝俣恒久社長)見通しだ。
第一生命保険経済研究所は、今年7月までの生活必需品の値上げによって、17年12月時点と比べて家計負担が実質で年間1万9018円増加したと試算する。今後の電気料金などの影響を考慮すると負担額は膨らむ一方だ。
ただし、相次ぐ食品メーカーの値上げ表明に対して、大手スーパーなどには受け入れを拒否する動きもある。「100円ショップ」を展開するザ・ダイソー(広島県東広島市)も「110円ショップになったらお客さまに申し訳ない」と、当面は企業努力で乗り切る方針だ。
さらに、花王の尾崎元規社長は23日の中間決算発表の席上、原料高の影響は避けられないが、化粧品などの消費財は当面企業努力でコストを吸収する姿勢を強調している。
とはいえ、企業努力が限界に達するのは時間の問題。消費者の懐具合にもジワリと影響が広がるのは間違いない。
------------引用以上------------
中国の経済発展はグローバリストである国際金融資本やトヨタのような輸出依存企業の投資によるものですし、バイオエタノールでうれしい悲鳴を上げているのは「カーギル」や「モンサント」のようなアメリカのグローバリスト企業です。
そして、各国では中小企業が青息吐息になり、大手企業や大規模な流通業者がシェアを伸ばすチャンスになっている・・・もう、何か出来レースを見せられているようで腹が立ちます。
では、こういう流れをどうやって止めるか、という問題になります。はっきり言っておきますが、今の経済の仕組みを前提にしたままで、この問題を解決することはできません。
いったん切って、続きを書くことにします。「話し言葉で歴史を語る」の続編は、もう少々お待ちください。
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比内地鶏の薫製を偽装 秋田の業者「10年前から」
http://www.asahi.com/national/update/1020/TKY200710200169.html
------------以下引用------------
秋田県の特産で、「日本三大地鶏」の一つとして知られる比内地鶏で、加工商品として出荷した薫製の肉や卵に、比内地鶏でない鶏を使用した疑いがあるとして、秋田県は20日、同県大館市の食肉加工会社「比内鶏」(藤原誠一社長)を景品表示法などに触れるとして立ち入り調査した。同社は偽装を認めているという。
比内地鶏の県内の消費は全体の2割ほどで、8割は県外に出荷している。「比内鶏」社は通信販売で商品を出荷しており、全国の消費者に影響を及ぼしそうだ。
県などによると今月15日、「薫製の卵に比内地鶏以外の鶏を使っている」との匿名の電話が県に寄せられたため調べた。藤原社長は県の調査に対して「自分が就任した約10年前からすでに偽装がされていた」と話しており、使用された肉は周辺の農家から仕入れたニワトリのものだという。
同社は今月17日から製造を中止、商品の回収を始めた。比内地鶏の肉かどうかを確定する検査方法はないため、県は今後、仕入れから出荷までの経路を伝票や聞き取りなどから調べる。
民間の信用調査機関によると、「比内鶏」社は、全国に店舗を持つスーパーや百貨店、食品メーカーを取引先に持ち、今年3月期決算の売上高は4億円。大手スーパーのホームページからも同社の商品がインターネットで購入できるようになっている。
同社は薫製のほか、きりたんぽセットや精肉なども扱っているが、薫製以外の商品については比内地鶏を使用していると話しているという。
同社の石川徹総務課長は朝日新聞の取材に、「調査結果が確定するまでコメントは差し控えたい」と話している。
加藤雅広・県生活環境文化部長は「信頼にかかわる問題。事実関係を明らかにし、信頼回復に努めたい」とした。
------------引用以上------------
私は家にテレビがないので、ワイドショーやニュース番組が何を言っているのか知りませんが、おそらく無意味に危機感を煽るような言動をコメンテーターとかいう得体の知れない連中がしているのでしょう。民法のテレビのやっている番組というのは、スポンサーの宣伝のおまけです。CMとCMの間の短い時間についている付録だと思って見ていた方がいいでしょう。
割とまともなことを言っているマスメディアを見つけたので、そちらをたたき台にしてこの問題を掘り下げてみます。
食品偽装/社会的責任の自覚欠如(日本農業新聞社説)
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=347
------------以下引用------------
ミートホープ、「白い恋人」、名古屋コーチン、「赤福」、そして比内地鶏。賞味期限の改ざんや食品表示の偽装が後を絶たない。これだけ続くと、誰もが手にとる食品一つ一つを「大丈夫か」と疑ってしまう。食べ物を買う際に、最も注意深く見るのは表示だ。その表示と異なる中身であれば、何を選択の基準にすればいいのか分からなくなる。価格競争など厳しい販売環境が背景にあるとしても、不正は食品全体への信頼を損なう。メーカーの、食品企業としての社会的な責任を、あらためて喚起したい。
最近の一連の事件で共通しているのは、不正が長期間行われていたこと、匿名による通報がきっかけとなったことだ。比内地鶏を偽装した秋田県の食肉加工会社では、社長自身が「就任した10年ほど前に既に偽装が行われていた」と認めている。その時点で事実を公表すれば、まだ食品企業としての最低限のモラルがあったと言えるが、不正を隠ぺいし続けてしまった。経営者として失格といえる。
しかし、「悪事千里を走る」だ。「赤福」でも比内地鶏の問題でも、内部精通者が公の機関に通報したことで不正が発覚した。多くの従業員が携わる食品製造では法令違反などを内々に処理したり、いつまでも隠ぺいしたりすることはまず不可能だ。昨年4月に公益通報者保護法が施行されたことで、内部告発や匿名通報は今後も増えることは間違いない。食品企業は、先例を教訓とする体質に早急に転換してもらいたい。
食品の不正で怖いのは、問題を起こした企業だけで事が済まないことだ。ミートホープの問題が発生した時も、スーパーに陳列してある牛肉コロッケの売れ行きが一時落ちた。風評に惑わされる消費者が多いとは思わないが、さりとて同じような商品をわざわざ購入する消費者も少ない。万が一、長期化でもすれば生産・販売に与える影響は大きく、資本力の乏しい企業は事業の先行きさえ危うくなる。
それにしても、食品にかかわる法令違反や不正がなぜ頻発するのか。バブル崩壊以降続く価格競争が、少なからず影響している。消費低迷の長期化の下で小売りは激しい価格競争を強いられている。そのあおりを受けて食品メーカーも、できるだけ安い原材料を仕入れ商品化することを迫られている。その結果、商品の「価値と価格」のバランスが失われ、「より安く価値のあるもの」が求められる。いわば異常ともいえる商品開発が起きているのだ。
もちろん、厳しい消費環境の下でも懸命に企業努力を続けるメーカーもある。食品偽装はいかなる理由があろうと許されるわけではない。そう断った上で、食品に表示してある価格は商品価値を判断する一つの材料だと指摘したい。価格を軽視した商品には落とし穴があることを、消費する側もいま一度考えたい。
------------引用以上------------
>消費低迷の長期化の下で小売りは激しい価格競争を強いられている。
>そのあおりを受けて食品メーカーも、できるだけ安い原材料を
>仕入れ商品化することを迫られている。その結果、商品の
>「価値と価格」のバランスが失われ、「より安く価値のあるもの」が
>求められる。いわば異常ともいえる商品開発が起きているのだ。
これは半分当たってもいますが、半分間違ってもいます。
昨今頻発している食品関連の偽装が、国内の消費低迷に端を発することが多いのは確かです。たとえば、国産原料を売りにしていた伊勢名物の「赤福」に外国産の材料が使われ始めたのが1994年でしたが、この年は、「価格破壊」という言葉が流行になった
年でもあります。バブルが崩壊したにも関わらず円高が続き(ここをきちんと説明できないところが、市場原理主義的な経済学の限界だと考える。アメリカの誘導によって作られた「政治的円高」)、急激なデフレが進んだ時期でもあります。
しかし、それだけで説明するのは無理があります。「赤福」が製造日の偽装や消費期限切れ製品の再利用をし始めたのは30年ほど前だということですし、上記の比内地鶏の偽装も20年の「歴史」があります。バブル崩壊後の消費低迷だけに原因を求めるのは妥当ではありません。
私は、最近の食品偽装事件は流通というもののはらむ根本的な問題が現れたものだと理解しています。
私が「赤福」という商品を初めて見たのは、確か新大阪駅だったという記憶があります。ここからして何か変です。赤福というのは、江戸時代のお伊勢参りの時期に売られ始めた商品だったはずで、だからこそ「伊勢名物」なのです。伊勢の品物をどうして大坂で売るのか。ここに、根本的な問題が潜んでいるのです。
本来であれば、赤福にしても比内地鶏にしても、当初は地元での消費を前提とした商品だったはずです。それでもなんとかなっていたのは、農家やお茶屋さんが本業の傍らで生産していたからです。副業ならば、浮き沈みがあっても本業さえきちんとやっていれば生活はできます。
ところが、現代ではこういった地方の名産銘品が「会社経営」になってしまっています。会社として経営する以上は、ものを売ってお金(貨幣)を稼ぎ出さなければ存続できません。これがそもそもの「転落」の始まりなのです。
会社経営というのは、いかにして売るかということももちろん大事なのですが、それと同じくらい大事なのは、「借金をいかに返すか」という命題です。全て自前の資本で運営しているという会社はほとんどありません。どの会社も、銀行など金融機関からの借入金で凌いでいるというのが現状です
そして、この借入金には金利がついてきます。放っておくとどんどん借金がふくらむのです。だから、これを返済する、もしくは金利分だけでも払い続けるということが大きな目標の一つになります。
このような制約がある以上、純粋に「もうけ」を得ようとすると、金利の負担を上回るペースで利益を上げるしかなくなります。具体的に言うと、会社の売り上げのパイを増やすしかないという結論になります。だから、赤福の工場を大きくして、名古屋駅や新大阪駅で売ったり、比内地鶏の燻製を作って全国出荷したりするのです。
そうなると、設備投資や販売促進費用、新商品の開発費などでまたお金が必要になるわけで、またぞろ借入金が必要になります。するとこれにまた金利の負担がかかり・・・という感じで、結局借金に追われるように経営を続けざるを得なくなるのです。
もちろん、地元で観光客や、グルメマニアだけを対象にした経営をしていてもかまいません。しかし、それでは存続ができません。それが現実です。
つまり、現在の経済の仕組みを前提にすれば、食品は必ず「価格競争」が生じ、いずれ「価格破壊」に突き進むことは当然の理ということです。
日本農業新聞の社説では、
>メーカーの、食品企業としての社会的な責任を、あらためて喚起したい。
と主張し、その一方で、
>価格を軽視した商品には落とし穴があることを、消費する側もいま一度考えたい。
と、消費者に対する注意を喚起しています。
不思議だと思いませんか。食品の偽装に関する事件が出てくると、最後に出てくる結論は、このようにだいたいは当事者や消費者の倫理を問題にしてしまうのです。
しかし、食品を扱う主体が企業であり、売り上げ増大や事業規模の拡大を至上命題にしている以上、このようなかけ声はあまり意味がありません。ほとぼりが冷めれば、また同じような事件が出てくるでしょう。あるいは、もっと上手に隠蔽がなされる可能性もあります。
かといって、この事態を放置するわけにもいきません。「消費者も騙されてやっていると思えばいいじゃないか」「安全な食品なんて今の世の中ありえない」などと言ってはいけないということです。
私が思うに、このような食品関連の偽装事件が「頻発」している、もしくは、上の記事にあるような「公益通報者保護法」が制定されたのは、ある狙いに基づいていると思っています。
その狙いとは、ズバリ言うと、「グローバリストによる地方企業絶滅作戦」です。
何をオーバーな・・・と思わず、もう少しお付き合いください。
グローバリストというのは、利益を極大化するために、自国への影響を考慮せず積極的に海外に進出し、国家間の垣根を取り払おうとする勢力のことをいいます(詳しくは●こちらを参照)。特に「商社」や「大型スーパー」の最大の武器は、日本と海外の価格差を利用した薄利多売です。これを、マスコミを通じた広告で消費者に売り込むのです。こういう連中にとっては、デフレはかえってチャンスです。低価格競争になれば、中国やアメリカという低価格な原材料調達先とパイプがあるグローバリスト企業には圧倒的に有利であり、デフレになればダンピング(シェアを奪うための値下げ)をしかけて、競合他社を潰すことができるからです。
そのような行動の邪魔になるのは、地元に根付いている企業です。彼らがいるだけで自分たちのシェアが低下するからです。赤福にしろ、「白い恋人」にしろ、「ミートホープ」にしろ、共通しているのは、地元で長年営業している企業だということです。こういう企業が特定の市場に根を張っていると、グローバリストにとっては非常に邪魔なのです。
そこで、バブル崩壊後の「価格破壊」で価格競争に持ち込み、偽装問題で息の根を止めようとしている、というわけです。マスコミというのは大企業がスポンサーについているので、そういう動きには喜んで荷担するでしょう。
よく考えてみて下さい。なぜこれだけ食品の偽装が騒がれているのに、伊藤ハムだとかハウス食品や森永製菓のような大手食品企業や、ジャスコのような大型スーパーの「内部通報者」が出てこないのか。
大手だから気をつけている・・・というのもあるかもしれません。たとえば、小麦製品からほとんど殺虫剤が検出されない日清食品のような例もあります。しかし、それが一般的だという保証はありません。
簡単な話です。グローバリスト企業やその系列の企業は、もうそういう面での配慮などしていないのです。その代わり、聞かれない代わり触れないし、いざというときに外国のせいに出来るように中国産やタイ産を使っているのです。
へたをすると、もうあと10年もすれば、赤福のような地方に根付いた名物企業は日本から姿を消すかもしれません。以下の記事のような状況があるからです。
まだまだ続く? 相次ぐ値上げ、企業努力そろそろ限界
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/m20071024032.html
------------以下引用------------
食パンにカップめん、カレー、トイレットペーパー、ガソリン…。この秋、生活必需品の値上げが相次いだ。新興国の需要拡大などで原料高騰に直面した食品業界が値上げの先陣を切り、原油価格の高騰がタクシー、電力・ガス料金の値上げへと影響のすそ野を広げ、家計を直撃する。今のところ大手スーパーが巨大な商品調達力をバックにした値上げ拒否姿勢でそのダメージをやわらげているが、本当の影響はこれからが本番だ。
食品原料の高騰は、中国など新興国の消費拡大に加え、需要が高まるバイオエタノール生産向けに振り向けられるなど食料争奪戦が背景にある。最近のパンやめん類の原料となる小麦価格は、政府売り渡し価格の引き上げもあり、平成12年の1・8倍に上昇。日清フーズが11月から家庭用パスタや小麦粉を17年ぶりに値上げするのに続き、カップめん、パン、うどんへと連鎖している。
大手商社は、今後は13億人の胃袋を抱える中国が穀物輸入大国となり、「穀物や食品原料の価格は高止まりし、畜産農家が飼料コストを吸収できずに食肉の値上げにも波及する」とみる。
原油価格の高騰による生活品への影響も大きい。学生やサラリーマンに身近な文具品では、大手のコクヨが10月からのコピー用紙に続き、来年1月からはノート類も値上げする。
古紙や重油などのコスト増で製紙各社も悲鳴をあげる。日本製紙連合会の鈴木正一郎会長(王子製紙会長)は22日、「もう一度価格改定をお願いせざるを得ない」と追加値上げを示唆した。ティッシュやトイレットペーパーは11月出荷分から7月に続く第2弾の値上げを打ち出したばかり。スーパーの特売作戦にも影響が出そうだ。
家庭向けの電力、ガスにも値上げの波が押し寄せている。電力料金は燃料となる石油、ガスの値上がりを反映して「(来年1~3月分を)値上げすることになる」(東京電力・勝俣恒久社長)見通しだ。
第一生命保険経済研究所は、今年7月までの生活必需品の値上げによって、17年12月時点と比べて家計負担が実質で年間1万9018円増加したと試算する。今後の電気料金などの影響を考慮すると負担額は膨らむ一方だ。
ただし、相次ぐ食品メーカーの値上げ表明に対して、大手スーパーなどには受け入れを拒否する動きもある。「100円ショップ」を展開するザ・ダイソー(広島県東広島市)も「110円ショップになったらお客さまに申し訳ない」と、当面は企業努力で乗り切る方針だ。
さらに、花王の尾崎元規社長は23日の中間決算発表の席上、原料高の影響は避けられないが、化粧品などの消費財は当面企業努力でコストを吸収する姿勢を強調している。
とはいえ、企業努力が限界に達するのは時間の問題。消費者の懐具合にもジワリと影響が広がるのは間違いない。
------------引用以上------------
中国の経済発展はグローバリストである国際金融資本やトヨタのような輸出依存企業の投資によるものですし、バイオエタノールでうれしい悲鳴を上げているのは「カーギル」や「モンサント」のようなアメリカのグローバリスト企業です。
そして、各国では中小企業が青息吐息になり、大手企業や大規模な流通業者がシェアを伸ばすチャンスになっている・・・もう、何か出来レースを見せられているようで腹が立ちます。
では、こういう流れをどうやって止めるか、という問題になります。はっきり言っておきますが、今の経済の仕組みを前提にしたままで、この問題を解決することはできません。
いったん切って、続きを書くことにします。「話し言葉で歴史を語る」の続編は、もう少々お待ちください。
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2007.10.24(Wed)
【商人の歴史1】商業が生まれてきたころ
前回のフランス革命と明治維新の話が結構受けたので、二番煎じじゃないですが、やってみたいと思います。変なタイトルですが、適当にしゃべっているものですが、一応今回は商業とは何かという話をしてみたいと思っています。
これは本当に余談なんですが、どうも2ちゃんねるかどっかで、●「どうすれば日本は戦争をせずに済むか」という記事を「歴史を知らない奴が背伸びして書いてるわい」とかなんとか揶揄してくれていたんですね(笑)。ああ、俺も少しは有名になったのかな(笑)とかわけわからん感慨を覚えましたが、ああいうのは多分、歴史マニアだとか専門家の卵みたいな人が書くんでしょうね。つまり、私みたいな素人が歴史を語るとは何事かと。
こういう事態は愉快ですね。歴史って言うのは、教科書を書いている人間のものじゃないというのが私の考えです。つまり、国だとか、そこからおこぼれを頂戴している専門家さんたちが独占して、支配の道具とか金儲けの道具にするような状態は望ましくないということです。私が客観的な史料を基に研究された歴史をながめて、どういうことを考えたかがこのカテゴリーの記事になっていますから、みなさんも同じように歴史について考えてみるといいと思います。
さて、なんでまた商人の歴史なんていうテーマを選んだのかというと、このブログでは「グローバリゼーション」ということをかなり批判的にとらえていろいろな記事を書いているということがあります。
以前から記事を書いていて思ったのは、グローバリゼーション、まあ簡単に言うと貿易や経済の地球規模化ですが、それは別につい最近とか帝国主義の19世紀に始まったものではなくて、もしかしたら商業というものが本質的にはらんでいる問題なんじゃないかということです。つまり、ものを売ったり買ったりという活動そのものの中に、人間社会を破壊する原理みたいなものが含まれているんじゃないかということです。
そうはいったものの、もしかしたら商業の歴史というのは人類の歴史でもあるわけで、かなり長大な物語になるような予感がしています。まあ、要するにだらだら続くかもしれないよということですが(笑)。多分、かなり脇にそれたり、
今回はとりあえず、商業が成立する基盤というものについて、原理的なお話だけしておこうと思います。次に古代中国なんかの話が入ってきて、ヨーロッパの話や日本の話も入れていって、最後に最近の話をして、今の経済や商業をどう考えるかという流れになると思います。
さて、商業ってそもそも何なんでしょうか。
商業って、不思議な職業だと思いませんか。どうしてかっていうと、そもそも商業の担い手である商人という人種は、自分では何もものを生産していないんです。それなのに、どうして生計を立てていられるんだろうか・・・確か、中学の歴史の先生が、中国の「孔子」を取り上げた時にそんなことを言っていた記憶があります。
私が勝手に思っているんですが、おそらく初めは商人という職業が独立してあったわけじゃないと思うんですね。
経済というのは、どこの社会でもまずは現物経済です。自分たちで木の実やらイノシシやら取ってきて、自分たちで消費するという形です。この時は、家族やらそれがでかくなった部族みたいな単位で経済が営まれています。
狩猟採集の時代の最大の特徴は何かというと、「余剰」というものが発生しないことです。余剰というのは、消費しきれないで余った物ということです。これには二つ理由があって、まず一つはそもそも狩猟採集で獲得できる物に限界があるということです。もう一つは、余剰なんて必要ないということです。
特に後者は重要です。この頃に経済学で言うところの「財」というものが存在するとしたら、食べ物だけです。この食べ物は、放っておくと腐ってなくなってしまいます。だから、必要以上にとっておいてもしょうがないわけです。
これが激変するのが、農耕の開始です。日本ではこのへんがかなり錯綜しているのが現状ですが、一応教科書なんかで広く知られているのは、本格的に農耕が始まった時代は弥生時代だということです。外国ではもっと古くて、紀元前9000年くらいにメソポタミア文明といのが始まっていますが、このとき農耕が始まっているようです。日本の近くで言うと、中国北部の黄河文明、特に紀元前4000年くらいからの仰韶(ヤンシャオ)文化なんかで組織的な農耕が行われていた跡があるようです。
農業が始まったということなんですが、これによってある社会の中に余剰が蓄積されるようになったわけです。もちろん小麦とか米なんで永久にというわけにはいきませんが、それまでのイノシシの肉と違って長期間保存ができます。しかも、ドングリの実なんかと違って、主食と言われるほど高カロリーで、これさえ作っていればとりあえず飢えて死ぬことはなくなったという、非常に便利なものでした。
ああ、言っておきますけど、この頃は今と桁違いに生産力が低いというのは忘れないでください。2000円くらいで5キロの米を簡単に買える今とは比較にならないくらい物が少ないということです。
しかし、それでも余剰は出てくるんですね。そして、重要なのが、その余剰が集まっていく場所は権力者のもとだということです。
おそらく、商人というのは、この権力者に委託されて、余剰物を管理したり交換したりした人たちから始まったんじゃないかなと思うんです。よく、「御用商人」という言葉が使われますが、おそらく商人というのは初めはみんな御用商人だったんじゃないかということです。
つまり、古代の社会では、一般国民である農民が生産した物が、いったん権力者のところに集まり、そこで権力者が消費しきれなくなったものを運用していたのが商人だったということです。エジプト古王国(紀元前2686頃~)の時代に、すでに「フェニキア人」というのがいて、エジプトの金や穀物と、レバノンの木材、●レバノンの国旗にも書かれている「杉」ですが、あれを交換していたといいます。エジプトはナイル川の周りは全部乾燥帯ですから、レバノンの木材はありがたかったんじゃないかと思います。
もう少し時代が進むと、こういう余剰は、単なる生産活動ではなく、戦争の結果としても増大していきます。古代エジプトを例に取ると、今のスーダン一帯、この時代に「ヌビア」と言われていた地域を征服した時に、大量の金を獲得しています。これが中王国(紀元前2040年~)という頃なんですが、新王国(紀元前1500年前後~)の時期になると、シリアやパレスチナにも遠征して、膨大な戦利品を得ています。まあ、早い話が強盗みたいなもんなんですが、権力者である王のもとには、珊瑚で作られた像だとか鉄製の武器だとか、そういうものがたくさん入ってきます。
こういうものを交換して、権力者がほしいものを手に入れるよう動いていたのが商人です。エジプトだと中王国の時代から、メソポタミアにある国々と交易をしていたという記録が残っています。エジプト新王国の時代になると、いよいよ「商人」という意味の言葉が誕生することになります。この時代の商人は、シリア人です。エジプトとメソポタミア、アッシリアといったオリエント地域を結ぶ中間に住んでいたので、ちょうどよかったんでしょうね。さっき出てきたフェニキア人でいえば、今のレバノンやイスラエルにあった古代都市とエジプトの間を地中海でつないでいたというわけです。
しかし、あくまでこの時代の経済主体は権力者に限られています。生産した物が権力者のもとに集まってくるので、それを運用する御用商人が誕生したということです。
エジプトの話をしていると多分知識のない管理人のボロがどんどん出てくると思うので、次回は、日本や中国あたりの話に移りたいと思います。
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これは本当に余談なんですが、どうも2ちゃんねるかどっかで、●「どうすれば日本は戦争をせずに済むか」という記事を「歴史を知らない奴が背伸びして書いてるわい」とかなんとか揶揄してくれていたんですね(笑)。ああ、俺も少しは有名になったのかな(笑)とかわけわからん感慨を覚えましたが、ああいうのは多分、歴史マニアだとか専門家の卵みたいな人が書くんでしょうね。つまり、私みたいな素人が歴史を語るとは何事かと。
こういう事態は愉快ですね。歴史って言うのは、教科書を書いている人間のものじゃないというのが私の考えです。つまり、国だとか、そこからおこぼれを頂戴している専門家さんたちが独占して、支配の道具とか金儲けの道具にするような状態は望ましくないということです。私が客観的な史料を基に研究された歴史をながめて、どういうことを考えたかがこのカテゴリーの記事になっていますから、みなさんも同じように歴史について考えてみるといいと思います。
さて、なんでまた商人の歴史なんていうテーマを選んだのかというと、このブログでは「グローバリゼーション」ということをかなり批判的にとらえていろいろな記事を書いているということがあります。
以前から記事を書いていて思ったのは、グローバリゼーション、まあ簡単に言うと貿易や経済の地球規模化ですが、それは別につい最近とか帝国主義の19世紀に始まったものではなくて、もしかしたら商業というものが本質的にはらんでいる問題なんじゃないかということです。つまり、ものを売ったり買ったりという活動そのものの中に、人間社会を破壊する原理みたいなものが含まれているんじゃないかということです。
そうはいったものの、もしかしたら商業の歴史というのは人類の歴史でもあるわけで、かなり長大な物語になるような予感がしています。まあ、要するにだらだら続くかもしれないよということですが(笑)。多分、かなり脇にそれたり、
今回はとりあえず、商業が成立する基盤というものについて、原理的なお話だけしておこうと思います。次に古代中国なんかの話が入ってきて、ヨーロッパの話や日本の話も入れていって、最後に最近の話をして、今の経済や商業をどう考えるかという流れになると思います。
さて、商業ってそもそも何なんでしょうか。
商業って、不思議な職業だと思いませんか。どうしてかっていうと、そもそも商業の担い手である商人という人種は、自分では何もものを生産していないんです。それなのに、どうして生計を立てていられるんだろうか・・・確か、中学の歴史の先生が、中国の「孔子」を取り上げた時にそんなことを言っていた記憶があります。
私が勝手に思っているんですが、おそらく初めは商人という職業が独立してあったわけじゃないと思うんですね。
経済というのは、どこの社会でもまずは現物経済です。自分たちで木の実やらイノシシやら取ってきて、自分たちで消費するという形です。この時は、家族やらそれがでかくなった部族みたいな単位で経済が営まれています。
狩猟採集の時代の最大の特徴は何かというと、「余剰」というものが発生しないことです。余剰というのは、消費しきれないで余った物ということです。これには二つ理由があって、まず一つはそもそも狩猟採集で獲得できる物に限界があるということです。もう一つは、余剰なんて必要ないということです。
特に後者は重要です。この頃に経済学で言うところの「財」というものが存在するとしたら、食べ物だけです。この食べ物は、放っておくと腐ってなくなってしまいます。だから、必要以上にとっておいてもしょうがないわけです。
これが激変するのが、農耕の開始です。日本ではこのへんがかなり錯綜しているのが現状ですが、一応教科書なんかで広く知られているのは、本格的に農耕が始まった時代は弥生時代だということです。外国ではもっと古くて、紀元前9000年くらいにメソポタミア文明といのが始まっていますが、このとき農耕が始まっているようです。日本の近くで言うと、中国北部の黄河文明、特に紀元前4000年くらいからの仰韶(ヤンシャオ)文化なんかで組織的な農耕が行われていた跡があるようです。
農業が始まったということなんですが、これによってある社会の中に余剰が蓄積されるようになったわけです。もちろん小麦とか米なんで永久にというわけにはいきませんが、それまでのイノシシの肉と違って長期間保存ができます。しかも、ドングリの実なんかと違って、主食と言われるほど高カロリーで、これさえ作っていればとりあえず飢えて死ぬことはなくなったという、非常に便利なものでした。
ああ、言っておきますけど、この頃は今と桁違いに生産力が低いというのは忘れないでください。2000円くらいで5キロの米を簡単に買える今とは比較にならないくらい物が少ないということです。
しかし、それでも余剰は出てくるんですね。そして、重要なのが、その余剰が集まっていく場所は権力者のもとだということです。
おそらく、商人というのは、この権力者に委託されて、余剰物を管理したり交換したりした人たちから始まったんじゃないかなと思うんです。よく、「御用商人」という言葉が使われますが、おそらく商人というのは初めはみんな御用商人だったんじゃないかということです。
つまり、古代の社会では、一般国民である農民が生産した物が、いったん権力者のところに集まり、そこで権力者が消費しきれなくなったものを運用していたのが商人だったということです。エジプト古王国(紀元前2686頃~)の時代に、すでに「フェニキア人」というのがいて、エジプトの金や穀物と、レバノンの木材、●レバノンの国旗にも書かれている「杉」ですが、あれを交換していたといいます。エジプトはナイル川の周りは全部乾燥帯ですから、レバノンの木材はありがたかったんじゃないかと思います。
もう少し時代が進むと、こういう余剰は、単なる生産活動ではなく、戦争の結果としても増大していきます。古代エジプトを例に取ると、今のスーダン一帯、この時代に「ヌビア」と言われていた地域を征服した時に、大量の金を獲得しています。これが中王国(紀元前2040年~)という頃なんですが、新王国(紀元前1500年前後~)の時期になると、シリアやパレスチナにも遠征して、膨大な戦利品を得ています。まあ、早い話が強盗みたいなもんなんですが、権力者である王のもとには、珊瑚で作られた像だとか鉄製の武器だとか、そういうものがたくさん入ってきます。
こういうものを交換して、権力者がほしいものを手に入れるよう動いていたのが商人です。エジプトだと中王国の時代から、メソポタミアにある国々と交易をしていたという記録が残っています。エジプト新王国の時代になると、いよいよ「商人」という意味の言葉が誕生することになります。この時代の商人は、シリア人です。エジプトとメソポタミア、アッシリアといったオリエント地域を結ぶ中間に住んでいたので、ちょうどよかったんでしょうね。さっき出てきたフェニキア人でいえば、今のレバノンやイスラエルにあった古代都市とエジプトの間を地中海でつないでいたというわけです。
しかし、あくまでこの時代の経済主体は権力者に限られています。生産した物が権力者のもとに集まってくるので、それを運用する御用商人が誕生したということです。
エジプトの話をしていると多分知識のない管理人のボロがどんどん出てくると思うので、次回は、日本や中国あたりの話に移りたいと思います。
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2007.10.22(Mon)
柏崎は今(新潟その2)

最近非常に多忙なため、記事の更新が遅れて申し訳ございません。新潟旅行の記事の続きです。
10月8日のことですが、中越沖地震で被災した柏崎市を訪れました。
地図を見ておきましょう。
拡大地図を表示
(吹き出しは、右上の×印をクリックするとなくなります。)
さきの地震でも被害を受けた「柏崎・刈羽原発」は、市街から北東に5キロほど離れた場所にあります。現地に入ってわかったのですが、昼1時頃まで見学用のバスが出ているそうです。知っていれば乗ってみたのですが・・・ちゃんと下調べしなかったことを後悔しました。
もっとも、今回は原発うんぬんよりも、地震で被害を受けた場所の市民生活がどうなっているかという点を見てみたかったので、駅に着くと早速町中をぶらついてみました。
柏崎の駅は、上の地図で見てもらうとわかるのですが、駅が北口しかありません。南側には、駅に隣接した地下道を通っていくことができます(地元のFMラジオが流れている・・・寂しい雰囲気を紛らわすため?)。
まずは、駅の北側から見て回ることにしました。海水浴場へ向かう目抜き通りを北へ向かいます。
商店街の歩道の脇に、こんなものを見つけました。

例の地震で歩道のブロックがめくれてしまったようです。撤去されることもなく、こうしてあちこちに積まれています。しかし、商店街の町並み自体はそれほどダメージを受けているように見えません。
この通りには、イトーヨーカドー丸大(地元資本の丸大とフランチャイズ契約をしているらしい)という大きなスーパーもあります。私は観光スポットより、普通の人がどういう生活をしているかが気になる方なので、すかさずのぞいてみました。
もちろん、人でにぎわっていましたが、おもしろいものを見つけました。

地元新潟の「雪国まいたけ」を使った菓子パンです。
新潟のスーパーは、どこへ行っても「新潟産コシヒカリ」しか置いていないので、県内産の食料品が多いのだなと思って取り上げてみましたが、やられました。正真正銘の東京産(笑)でした。見ると、どうも某大手パンメーカーが新潟向けに作ったというだけのようです。
新潟県産のまいたけを東京の工場に持って行き、そこからトラックで出荷して柏崎のイトーヨーカドーで売る・・・ここに何か、不自然なものを感じるのは私だけでしょうか。
職場向けの土産などを買って店を出ると、海岸の方へ向かいます。
周囲と不釣り合いなほどきれいで大きな建物があるのでのぞいてみると、TEPCOプラザ柏崎という建物でした。1階が無料で使用できるラウンジのようになっていて、中学生や高校生が勉強や談笑に利用しています。
ロビーには、原子力発電関係のPRチラシがたくさん置いてありました。なるほど、「地元の理解」を得るために、東京電力が作った施設というわけです。
行政が作った箱物というと、マスコミや都会の人間に無駄だの既得権益だの好き勝手言われているようですが、ここは商工会議所や、新潟最大手の進学塾などが入居しており、きちんと利用されているようです。やはり、施設は人が集まるところに作らないと生かされませんね。
そのTEPCOプラザ柏崎を出てすぐのところにあったのが、これです。

けっこうな繁華街にあるのに、曲がったまま放置されている街灯です。東京から来た私に、「こんな地震があったんだぞ」と訴えているようです。
その後、雨が降ったりやんだりしている中、海水浴場の方へ向かいます。気温が急に低くなってきて、肌寒さを感じ始めました。
海水浴場はシーズンも過ぎているので、ただの砂浜でしかありませんでした。しかし、そのすぐそばにあったのがこれです。

仮設住宅です。失礼になるので敷地内までは入りませんでしたが、人の気配が確かにします。車の数などから見ても、どうやら「満杯」状態のようです。
ここだけではありません。市役所周辺や駅の南側にもあり、かなりの数の仮設住宅がいまだに利用されているのです。
一日二日で済むならいいのでしょうが、被災された方はもう3ヶ月近くこういう場所に住むことを余儀なくされているのだと思うと、やるせない気分になります。
帰り道に、目抜き通りから少し奥に入ってみると、さらに気分が重くなりました。
全壊したまま放置されている家が、何軒もあるのです。ロープが張られてはいますが、建築計画を示した立て札もなく、いまだに再建のめどがたっていないようです。
外観はしっかりしているのに、全く人気のない家もかなりあります。そういうところには、例外なくこのような張り紙が出ています。


これが現実なのか、と、肩を落としました。イトーヨーカドーで買い物をしていた人たちの中にも、我が家に帰るに帰れない人が混じっていたのでしょう。
他にも、アーケードが傾いたままになっていたり、歩道の陥没がそのまま放置されていたり、復興も糞もないような状態が市内のあちこちに見られます。
地元の新聞である●柏崎日報を見てみたのですが、どうも復興にむけた動きも芳しくないようです。
なにしろ、未だに有名人による「慰問」が地元の話題になっているほどなのです。●例の軍隊式ダイエットで有名なビリー・ブランクスさんや、●歌手の小林幸子さんが最近も柏崎を訪れています。
それすらも、東京に本拠地のあるテレビ局やインターネット上のニュースでは、原子力発電関連のニュースをのぞいてほとんど報道されていません。中越沖地震という地震の存在もすっかり忘れ去られているようです。
印象に残ったのが、柏崎日報に出ていた地元信用金庫の理事長の話です。経営的に苦しいのはわかっているが、それでも赤字覚悟で融資をせざるを得ない。住宅の再建を躊躇すれば、市外県外の親戚を頼って引っ越しするケースが増えて、人口流出につながる。そうなったら信用金庫もやっていけないのだ・・・という話でした。
私有財産である個人の住宅ならまだわかるのですが、繁華街の歩道に大きな穴が開いていても、埋めることすらままならないのです。よほど公共事業用のお金がないのでしょう。今の政府にとっては、●トヨタの部品工場さえ動いていれば、その周りにある市民生活はどうでもいいのかもしれません。
新潟県の政治は田中真紀子衆院議員の影響もあって民主党が優勢です。そういうことも関係があるのかもしれません。これが山口県、というか長州だったら、不自然に多い新幹線の駅や大工場の数同様、真っ先に中央政府の金が回ってくるんでしょうね。
つくづく、新潟や東北は冷遇されていると感じずにいられません。大災害が起こったら、立ち直れなくなる地方も出てきそうです。そういう事態にならないように、災害があったら十分な手当をすることで、人口流出を防ぐことができるのだと思うのですが・・・。
以上の「被害」は、全て駅の改札がある町の北側で実際に見たものです。
では、駅の南側はどうなのかというと、これがまた北側と好対照なのです。
何が一番違うのかというと、店の大きさや種類です。柏崎駅の北側にもイトーヨーカドーがありましたが、南側には郊外型の大型店舗が目白押しです。「ガスト」や「ミスタードーナツ」といった、東京で見慣れた店もかなりあります。
どうやら、駅の南側に国道8号線が通っているのが関係ありそうです。いわゆる国道16号線化という現象です。
こちらに、関連した記事が出ています。
“国道16号線化する風景”
http://r25.jp/index.php/m/WB/a/WB001120/id/200704191107
--------以下引用--------
「どこも似てるな…」。郊外の国道沿いを走っていて、こんな感覚に陥ったことはないだろうか? 沿道にはファミレスやスーパーが建ち並び、どこでも均質的な風景が展開されてゆく…。
(中略)
社会学者の北田暁大氏に話を聞いてみると…。
「東京周辺の郊外を走る国道16号線沿いなどに顕著な風景ですね。これに対する批判は確かに多々あります。例えば、通り沿いがチェーン店で埋め尽くされることで、地域の持つ歴史的景観が破壊され、文化や愛着心が育たない、という批判です。ほかにも、大型店の進出により駅前の商店がつぶれる“シャッター商店街化”の問題もあります」
(中略。「そういう風景に親しみを感じる」という意見に対して)
「それが普通の感覚ですよ。特に若い世代には。僕も田舎でコンビニを見つけると安心します。もはや現代人の重要な居場所なんですよ、そういう場所って。チェーン店だらけの道沿いに、違和感どころか、生活のリアリティを感じる人は多いはず。だから批判するだけでは仕方ないと思います」
--------引用以上--------
まあ、都会の若者向けで軽いノリのフリーペーパー向けの記事ですから、あまり深い内容は期待してはいけないかもしれませんが、だいたいこういうことです。
確かに、この社会学者とかいう人物の言っていることは一面真理ではあります。私は夜中に柏崎を出るバスに乗る予定だったのですが、北口にはどこも時間を潰す場所がありませんでした。仕方なく、南側の「ガスト」で3時間近く粘る羽目になりました。そうなると不思議なもので、妙に落ち着くのです。都会で見慣れた、マスプロの空間にいるからでしょう。
しかし、これが「いいこと」なのかというと、私は全くそう思っていません。
理由は簡単です。このような現象が、都会の大資本による地方からの利潤収奪に他ならないからです。
「ガスト」にしろ「ミスタードーナツ」にしろ、本社は東京にあり、地元の商店とは桁違いの資金運用力があるわけです。また、家族経営ではないため、長時間の店舗の運営も、アルバイトのシフトを組み合わせるなどして可能です。コストを下げるための物流システムや、原材料の価格自体を低下させる方法(たとえば、中国からの輸入)も持っています。
本来であれば、そういう資本は大都会にいて、地方には出てこないはずなのですが、道路の整備によってその状況がすっかり変わってしまいました。物流システムを整えれば、短時間かつ頻繁な輸送が可能になったのです。
これに追い打ちをかけたのが「大規模小売店舗法」の緩和と、円高でした。前者は長年アメリカが改正を要求しており(この時点で●グローバリストの策動だということがバレバレ)していた法律で、94年に規制が緩和されました。また、円高は1985年の「プラザ合意」以降決定的になった流れであり、これによって輸入が有利になってファミリーレストランが一躍消費の主役格に躍り出ることになります。
そうやって都会の大資本が地方に殴り込みをかけ、地元の商店を駆逐していくことになります。
利便性が向上するならいいじゃないか、などという人は、経済というものを何も分かっていません。東京の資本が地方で利益を上げたら、その利益が再び地元に還元されることはありません。その会社の利益になり、拡大再生産や株主への配当に回るだけです。雇用の改善に役立つなどというのも虚妄です。なにしろ、そういう店舗はマネージャー以外はみんなアルバイトであり、そのマネージャーも地元出身者ではなく単身赴任や県外からの移住というケースが多いのです。
地方としては金が出て行く方が多いのですから、じり貧になるのは目に見えています。嫌な仕組みです。こんなものを礼賛できる人間は、車で東京から遊びに来ている人間や、上の引用記事に出ている(おそらく東京在住の)馬鹿学者、カイカク真理教信者といったアホだけでしょう。
南側の道路沿いは、どこにも地震の被害のあとが見られません。大規模店舗の持ち主である大企業が自分の庭を素早く補修したからでしょう。道路も国道ですから、国土交通省がいち早く整備したに違いありません。未だに歩道に穴が開いていて、車道にはみ出さないと通れないところがある北側とはえらい違いです。
どうも、今の日本では、至る所で「利潤の持ち出し」が目につくようになっています。都会の大資本が地方から利潤を持ち出し、その都会の大資本から、株主配当や利子返済という形で外国資本が利益を持ち出し・・・貧しい人や地域はどんどん貧しくなるという方向へ間違いなく動いています。
それに対する反発が、さきの参議院選挙での自民党の大敗という形になって現れたのでしょう。
今後は、企業の利益が地元にダイレクトに還流される仕組みを作らなくてはなりません。原子力発電所を作る代わりに、TEPCOプラザを作れば済む問題ではないのです。地元で出来ること、たとえば食糧生産やバイオマスエネルギーの生産、さらには単純な二次産品については、地元にやらせるべきです。
先ほど出てきた「雪国まいたけパン」のようになってはいけないのです。ましてや、中国産の食品をふんだんに用いたファミレスが隆盛を極めるようなことはあってはなりません。見せかけだけの利便性向上に名を借りた利潤の収奪行為だととらえるべきです。そういう「侵略者」を導き入れることは、結局地方の経済がやせ細ることを意味し、やがて衰滅することになりかねません。
柏崎駅の北側で夕食を取ったお店は、家族経営のようで、高校生くらいの娘さんがお店に出ていました。その子が、父親らしい店主の方に電卓片手に何か話しかけています。内容はよくわからなかったのですが、商品の計算の仕方を娘さんが工夫したようです。彼女の嬉しそうな口調と笑顔が印象に残りました。
店のお客さんも、近所の家族連ればかりです。考えてみればこの日は祝日だったのです。休みの日の夜は、お母さんも大変だろうし、外でみんなでご飯を・・・という感じなのでしょう。
一昔前の日本では、こういう光景が当たり前だったのかもしれません。
忘れてはならないのは、地方にまだ残っている緊密な人的関係も、それを支える経済があって初めて成立するということです。学校で日本の伝統を教えたり、国を愛する態度を教えてからといって戻ってくるものではありません。そういうことを勘違いしている「自称保守」が多すぎます(どうせ、都会の人間なのだろう)。
地方というのは、単なる場所ではなく、そこに生きる人々の結びつきなのです。私が住んでいる東京西部には、もうなくなってしまったものが、柏崎駅の北側にはまだ残っているはずです。中越沖地震の復興スローガンは、「がんばろう!輝く柏崎!」というものですが、駅の北側に活気が戻ってきてこそ柏崎という町も輝き始めるのだと思います。
柏崎の町の、一日も早い復興を祈っております。
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2007.10.19(Fri)
前回の記事について
その後いろいろ調べた見た結果、自分の知見にかなりの誤りがあることが分かりました。よって、記事を削除いたしました。
コメントいただいた方がたには大変申し訳なく思っております。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願いします。
コメントいただいた方がたには大変申し訳なく思っております。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願いします。
2007.10.16(Tue)
「21世紀の出島」となれ~国際港湾都市・新潟の未来図(新潟その1)
10月7日と8日の二日間、新潟県を回ってきました。
今回の目的は二つありました。(1)越後国一の宮(その地方の神社の親分)である「弥彦神社」訪問と(2)日本海側で初めて政令指定都市になった新潟市と、中越沖地震の被災地となった柏崎市の現状を、じかに目で見て回ることです。
私は東京在住なので、新潟まで夜行の高速バスを利用することにしました。これなら土曜日の勤務後にすぐ出発でき、時間を有効に利用することが出来るからです。
新潟行きの高速バスは池袋駅前から発車しています。同じことを考えている人はたくさんいるようで、かなりの乗客がいました。4号車まで満員です。結構繁盛しているようですね。
高速バスの魅力は、なんといってもその値段です。新潟まで片道わずか5000円ほどで行けます(ちなみに新幹線だと約10000円)。しかも、朝一番に現地で活動することができる夜行があるので、短期間の観光には実にありがたい存在です。
もっとも、新潟方面のバスの欠点は、「四列シート」であることです。長距離のバスでは「三列シート」が採用されていることが多く、これなら隣の乗客と干渉しあわずにトイレに行くことができます。四列だとまず無理です。
四列シートのバスに乗るときは、出来る限り乗車前にトイレをすませておく方がいいでしょう。
また、中で眠れるかどうかも大きいです。四列の場合窮屈だというハンデがあるのですが、同じくらい重要なのが「シートピッチ」と「リクライニングの程度」です。行きの越後交通のバスはリクライニングの角度が浅く、かなり頻繁に起きてしまう羽目になりました(帰りの頸城交通のバスはかなり快適だった)。
この辺は、高速バス用の時刻表で確かめておくしかありません。夜行バスは、格安のバスと新潟方面をのぞいては、ほとんどが三列シートのようです。
さて、バスが新潟駅前に着くのは朝の5時です。当然、周囲は真っ暗でした。10月7日は弥彦神社を訪ねる予定でしたので、電車が動き出さないと意味がありません。
新潟の駅前であれば、24時間営業している「ロイヤルホスト」というファミリーレストランがあるので、そこで休憩することにしました。6時半くらいまで粘って、いざ出発です。
弥彦神社のある弥彦村は、新潟市から1時間ほどで到着します。

越後線という在来線で柏崎方面に向かい、途中吉田駅で弥彦線に乗り換えます。新幹線で行く場合、燕三条から弥彦線一本で行くことができます。
弥彦駅から10分ほど歩くと、弥彦神社に到着します。

この周辺は、いわゆる門前町を形成していて、温泉も出るために観光旅館が何軒もあります。
では、境内に入ってみましょう。

神社のご神木です。傍らに、歌人・俳人としても有名な●良寛和尚が読んだ詩碑があります。
弥彦神社の成立は古く、万葉集にもその存在が見られます。越後国を開いたと言われている「天香山命(あめのかごやまのみこと)」が祀られている神社です。

写真でも分かるように、鬱蒼とした森に囲まれています。伊勢神宮をはじめとして、奈良以前の古い神社というのはこのような山林の中に建てられています。おそらく、木材や食料となる鳥獣、さらには水源としても機能している森林に、神秘的なものを感じていたのでしょう。
神社を訪れる意味は、その神秘的な何かを感じ取ることにあるように思います。
さて、一番奥にあるのが天香山命が祀られている本殿です。

背後にあるのが弥彦山です。この日は非常に天気がよかったので、このような壮大な景色を味わうことができました。
氏子なのでしょうか、お父さんと中学生くらいの娘さんが私より先に本殿を拝んでいきました。山門を出る際、お父さんだけでなく、お嬢さんの方も神様にお辞儀をして去っていったのが印象に残りました。
明治維新以降、近代化(国民教育と科学崇拝)によって破壊され続けてきた「神様をうやまう」という精神が、この地にまだ息づいていることに、私は安堵を覚えました。やはり、子供は親御さんの背中を見て育つのでしょう。
この後、裏山にあたる「弥彦山」に登ることにしました。
弥彦山は600メートル程度の標高しかありません。山頂にはロープウェイが行っているのですが、最近駅まで20分ほどの道を徒歩で通っている私は、粋がって徒歩での登頂に挑戦しました。
目で見た感じでは、たいした高さがなかったのですが、なかなかこれがつらかったです。ずいぶん登ったな、あと少しかと思ったら、まだ2合目(笑)。途中、五合目あたりで少し平坦なところがあったときは、思わずほっとしました。
七合目まで来ると、もう足がなかなか上がらなくなってきましたが、わき水で顔を洗って気合いを入れ、最後の力を振り絞りました。
九合目を過ぎると、木々の隙間に日本海らしき青いものが見えてきます。しかし、もったいぶっているのか、山頂まではっきりとは見えません。
そして、1時間半かかってやっと登頂しました。頂上からの眺めです。

日本海です。うっすらとではありますが、鮮魚の直売で有名な「寺泊」の港が見えます。実に爽快です。
その後山頂の弥彦神社のご分祀にお参りをして帰ったのですが、さすがにロープウェイで下ってしまいました(笑)。昔なら、徒歩で何度も行ったり来たりしたのでしょう。昔の人にはかなわないなと思いました。
その後は、新潟市の中心部まで戻り、夜まで散策して見ることにしました。
以前訪問した山形市や米沢市と随分違うのは、若者向けの店がずいぶんと多いということです。特に、中心街の古町(アクセントは「降る町」と同じ)にそれが目立ちます。
まあ、山形県全体で人口が120万人弱で、新潟市だけで80万人いるという違いはあるのでしょうが、そればかりでない勢いを感じます。これが、政令指定都市効果というやつでしょうか。
しかし、東京に日本中から人が集まるように、新潟市だけが栄えてあとがさっぱり・・・というのでは、結局地方の没落は早まっていくだけでしょう。
そこで、面白い案を考えてみました。
拡大地図を表示
新潟空港を中心とした地図です(グーグルの地図を埋め込んでいるので、よろしければ左下の「拡大図」をクリックしてみてください)。すぐ近くに新潟市中心部と、新潟港があります。少し大きくしてみます。
拡大地図を表示
こちらも、「拡大図」の方をクリックしてもらうとよくわかりますが、海を隔てて、ロシア・韓国・北朝鮮と向かい合っています。このブログでも何度も取り上げている「中国東北部」も近くです。
現実に、新潟空港は中国の上海、ハルピン(東北部)や、ロシアのウラジオストクなどとも国際便で結ばれており、新潟港および東港にはロシアや韓国の船が頻繁に来港します。
それだけでなく、市内には北陸道が走っており、大阪や京都ともつながっています。長岡まで出れば関越道経由で東京もすぐです。つまり、新潟は日本海側の交通の要衝なのです。
そこで、考えました。
この地の利を生かして、新潟を日本の中心にしてしまえばいいのではないか?
要するに、新潟を国際貿易都市、それも戦前の神戸や横浜に並ぶほどの「外国への窓」にしてしまおうということです。
え?このブログって、外国との交流はなるべくするなって言ってなかったっけ?
その通りです。しかし、それは「貿易を完全にやめる」ということではありません。限定された場所で、管理された形での貿易はむしろ続けるべきだという考えなのです。
そのためには、外国に開かれた場所が必要です。新潟は、そのための条件を備えているのです。
では、具体的にどうするのか。
まず、新潟港を中心にして、「新井郷川」「県道204号線」「新潟サンライズゴルフクラブ」に囲まれた地域を「日本海国際貿易特区」に指定します。
その上で、県道204号線をそのまま運河にして、特区を取り囲むようにし、新井郷川も川幅を広げる工事をします。これで「21世紀の出島」ができあがりです。
そうして、この日本海国際貿易特区についてのみ、環日本海の諸国に対してのビザなし渡航を認めるのです。狙いは、貿易・商業活動の活発化です。
もちろん、安全保障に考慮して、新潟港には海上自衛隊基地を置き、イージス艦の母港にします。さらに海上保安庁の基地も設置します。だめ押しで、新発田市(既存の駐屯地を拡張)および阿賀野市に陸上自衛隊を配置し、「出島」を完全包囲するのです。
「出島」への出入りは、新潟港との間の高速船、および新潟空港東南に新設する船着き場だけに限定します。運河には海上保安庁の巡視船を24時間就航させます。物資輸送用のゲートは阿賀野川沿岸に一カ所だけ作り、陸上自衛隊が警備に当たることにします。北陸道とも直結させて、大量の物流にも対応できるようにするといいでしょう。
それだけではありません。これに平行して陸上自衛隊を新潟県中越地域に大規模に誘致するのです。
主たる狙いは、もちろん「出島」監視部隊の控えです(緊張が強いられるので、三ヶ月に一度程度でローテーションする)。しかし、それに加えて、彼らには平時に農作業をやってもらいます。休耕田を耕して、食料生産をさせるのです。その食料は、自衛隊と「出島」で消費します。余ったら、越後山脈の山腹に冷暗所を作って備蓄すればいいのです。
この部隊は、柏崎・刈羽原発の警備や、新潟県特有の雪害にも威力を発揮します。「出島」との物資の行き来が活発になるので、除雪作業は今まで異常に重要になります。それをやってもらうのです。
そして、最近新潟に多い豪雨被害などの時も、迅速な救助活動を行うことができます。新潟県民にとって、いいことばかりです。
以前、●対馬に防衛特区を作ろうという提案をしましたが、それと同じです。
政府も、借金だの少子化だの財政均衡だの、暗くなるようなことばかり言ってないで、こういう景気のいい、夢のある話をしてみたらどうでしょうか?
明るい話をしてばかりいましたが、今度は少し深刻な話になるかもしれません。つい最近中越沖地震で被災した柏崎市の話題を扱います。
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今回の目的は二つありました。(1)越後国一の宮(その地方の神社の親分)である「弥彦神社」訪問と(2)日本海側で初めて政令指定都市になった新潟市と、中越沖地震の被災地となった柏崎市の現状を、じかに目で見て回ることです。
私は東京在住なので、新潟まで夜行の高速バスを利用することにしました。これなら土曜日の勤務後にすぐ出発でき、時間を有効に利用することが出来るからです。
新潟行きの高速バスは池袋駅前から発車しています。同じことを考えている人はたくさんいるようで、かなりの乗客がいました。4号車まで満員です。結構繁盛しているようですね。
高速バスの魅力は、なんといってもその値段です。新潟まで片道わずか5000円ほどで行けます(ちなみに新幹線だと約10000円)。しかも、朝一番に現地で活動することができる夜行があるので、短期間の観光には実にありがたい存在です。
もっとも、新潟方面のバスの欠点は、「四列シート」であることです。長距離のバスでは「三列シート」が採用されていることが多く、これなら隣の乗客と干渉しあわずにトイレに行くことができます。四列だとまず無理です。
四列シートのバスに乗るときは、出来る限り乗車前にトイレをすませておく方がいいでしょう。
また、中で眠れるかどうかも大きいです。四列の場合窮屈だというハンデがあるのですが、同じくらい重要なのが「シートピッチ」と「リクライニングの程度」です。行きの越後交通のバスはリクライニングの角度が浅く、かなり頻繁に起きてしまう羽目になりました(帰りの頸城交通のバスはかなり快適だった)。
この辺は、高速バス用の時刻表で確かめておくしかありません。夜行バスは、格安のバスと新潟方面をのぞいては、ほとんどが三列シートのようです。
さて、バスが新潟駅前に着くのは朝の5時です。当然、周囲は真っ暗でした。10月7日は弥彦神社を訪ねる予定でしたので、電車が動き出さないと意味がありません。
新潟の駅前であれば、24時間営業している「ロイヤルホスト」というファミリーレストランがあるので、そこで休憩することにしました。6時半くらいまで粘って、いざ出発です。
弥彦神社のある弥彦村は、新潟市から1時間ほどで到着します。

越後線という在来線で柏崎方面に向かい、途中吉田駅で弥彦線に乗り換えます。新幹線で行く場合、燕三条から弥彦線一本で行くことができます。
弥彦駅から10分ほど歩くと、弥彦神社に到着します。

この周辺は、いわゆる門前町を形成していて、温泉も出るために観光旅館が何軒もあります。
では、境内に入ってみましょう。

神社のご神木です。傍らに、歌人・俳人としても有名な●良寛和尚が読んだ詩碑があります。
弥彦神社の成立は古く、万葉集にもその存在が見られます。越後国を開いたと言われている「天香山命(あめのかごやまのみこと)」が祀られている神社です。

写真でも分かるように、鬱蒼とした森に囲まれています。伊勢神宮をはじめとして、奈良以前の古い神社というのはこのような山林の中に建てられています。おそらく、木材や食料となる鳥獣、さらには水源としても機能している森林に、神秘的なものを感じていたのでしょう。
神社を訪れる意味は、その神秘的な何かを感じ取ることにあるように思います。
さて、一番奥にあるのが天香山命が祀られている本殿です。

背後にあるのが弥彦山です。この日は非常に天気がよかったので、このような壮大な景色を味わうことができました。
氏子なのでしょうか、お父さんと中学生くらいの娘さんが私より先に本殿を拝んでいきました。山門を出る際、お父さんだけでなく、お嬢さんの方も神様にお辞儀をして去っていったのが印象に残りました。
明治維新以降、近代化(国民教育と科学崇拝)によって破壊され続けてきた「神様をうやまう」という精神が、この地にまだ息づいていることに、私は安堵を覚えました。やはり、子供は親御さんの背中を見て育つのでしょう。
この後、裏山にあたる「弥彦山」に登ることにしました。
弥彦山は600メートル程度の標高しかありません。山頂にはロープウェイが行っているのですが、最近駅まで20分ほどの道を徒歩で通っている私は、粋がって徒歩での登頂に挑戦しました。
目で見た感じでは、たいした高さがなかったのですが、なかなかこれがつらかったです。ずいぶん登ったな、あと少しかと思ったら、まだ2合目(笑)。途中、五合目あたりで少し平坦なところがあったときは、思わずほっとしました。
七合目まで来ると、もう足がなかなか上がらなくなってきましたが、わき水で顔を洗って気合いを入れ、最後の力を振り絞りました。
九合目を過ぎると、木々の隙間に日本海らしき青いものが見えてきます。しかし、もったいぶっているのか、山頂まではっきりとは見えません。
そして、1時間半かかってやっと登頂しました。頂上からの眺めです。

日本海です。うっすらとではありますが、鮮魚の直売で有名な「寺泊」の港が見えます。実に爽快です。
その後山頂の弥彦神社のご分祀にお参りをして帰ったのですが、さすがにロープウェイで下ってしまいました(笑)。昔なら、徒歩で何度も行ったり来たりしたのでしょう。昔の人にはかなわないなと思いました。
その後は、新潟市の中心部まで戻り、夜まで散策して見ることにしました。
以前訪問した山形市や米沢市と随分違うのは、若者向けの店がずいぶんと多いということです。特に、中心街の古町(アクセントは「降る町」と同じ)にそれが目立ちます。
まあ、山形県全体で人口が120万人弱で、新潟市だけで80万人いるという違いはあるのでしょうが、そればかりでない勢いを感じます。これが、政令指定都市効果というやつでしょうか。
しかし、東京に日本中から人が集まるように、新潟市だけが栄えてあとがさっぱり・・・というのでは、結局地方の没落は早まっていくだけでしょう。
そこで、面白い案を考えてみました。
拡大地図を表示
新潟空港を中心とした地図です(グーグルの地図を埋め込んでいるので、よろしければ左下の「拡大図」をクリックしてみてください)。すぐ近くに新潟市中心部と、新潟港があります。少し大きくしてみます。
拡大地図を表示
こちらも、「拡大図」の方をクリックしてもらうとよくわかりますが、海を隔てて、ロシア・韓国・北朝鮮と向かい合っています。このブログでも何度も取り上げている「中国東北部」も近くです。
現実に、新潟空港は中国の上海、ハルピン(東北部)や、ロシアのウラジオストクなどとも国際便で結ばれており、新潟港および東港にはロシアや韓国の船が頻繁に来港します。
それだけでなく、市内には北陸道が走っており、大阪や京都ともつながっています。長岡まで出れば関越道経由で東京もすぐです。つまり、新潟は日本海側の交通の要衝なのです。
そこで、考えました。
この地の利を生かして、新潟を日本の中心にしてしまえばいいのではないか?
要するに、新潟を国際貿易都市、それも戦前の神戸や横浜に並ぶほどの「外国への窓」にしてしまおうということです。
え?このブログって、外国との交流はなるべくするなって言ってなかったっけ?
その通りです。しかし、それは「貿易を完全にやめる」ということではありません。限定された場所で、管理された形での貿易はむしろ続けるべきだという考えなのです。
そのためには、外国に開かれた場所が必要です。新潟は、そのための条件を備えているのです。
では、具体的にどうするのか。
まず、新潟港を中心にして、「新井郷川」「県道204号線」「新潟サンライズゴルフクラブ」に囲まれた地域を「日本海国際貿易特区」に指定します。
その上で、県道204号線をそのまま運河にして、特区を取り囲むようにし、新井郷川も川幅を広げる工事をします。これで「21世紀の出島」ができあがりです。
そうして、この日本海国際貿易特区についてのみ、環日本海の諸国に対してのビザなし渡航を認めるのです。狙いは、貿易・商業活動の活発化です。
もちろん、安全保障に考慮して、新潟港には海上自衛隊基地を置き、イージス艦の母港にします。さらに海上保安庁の基地も設置します。だめ押しで、新発田市(既存の駐屯地を拡張)および阿賀野市に陸上自衛隊を配置し、「出島」を完全包囲するのです。
「出島」への出入りは、新潟港との間の高速船、および新潟空港東南に新設する船着き場だけに限定します。運河には海上保安庁の巡視船を24時間就航させます。物資輸送用のゲートは阿賀野川沿岸に一カ所だけ作り、陸上自衛隊が警備に当たることにします。北陸道とも直結させて、大量の物流にも対応できるようにするといいでしょう。
それだけではありません。これに平行して陸上自衛隊を新潟県中越地域に大規模に誘致するのです。
主たる狙いは、もちろん「出島」監視部隊の控えです(緊張が強いられるので、三ヶ月に一度程度でローテーションする)。しかし、それに加えて、彼らには平時に農作業をやってもらいます。休耕田を耕して、食料生産をさせるのです。その食料は、自衛隊と「出島」で消費します。余ったら、越後山脈の山腹に冷暗所を作って備蓄すればいいのです。
この部隊は、柏崎・刈羽原発の警備や、新潟県特有の雪害にも威力を発揮します。「出島」との物資の行き来が活発になるので、除雪作業は今まで異常に重要になります。それをやってもらうのです。
そして、最近新潟に多い豪雨被害などの時も、迅速な救助活動を行うことができます。新潟県民にとって、いいことばかりです。
以前、●対馬に防衛特区を作ろうという提案をしましたが、それと同じです。
政府も、借金だの少子化だの財政均衡だの、暗くなるようなことばかり言ってないで、こういう景気のいい、夢のある話をしてみたらどうでしょうか?
明るい話をしてばかりいましたが、今度は少し深刻な話になるかもしれません。つい最近中越沖地震で被災した柏崎市の話題を扱います。
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2007.10.14(Sun)
民営化至上主義者がわめく「便利さ」の誤謬
前回●郵政民営化の話題を扱った記事を挙げたので、ついでに気になっていた話題を取り上げます。
年賀状郵便局が印刷 図柄や差出人の住所・氏名
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2007101302056086.html
--------以下引用--------
郵便局会社は十二日、年賀はがきを購入する顧客を対象に、見本から選んだ好みの図柄や、本人の住所と氏名を印刷して自宅に届ける「年賀状印刷ビジネス」を始めると発表した。
年賀はがきを購入した人はこれまで、自分で印刷会社に名前などの印刷を頼んでいた。民営化で印刷会社への仲介業務が可能になり、新サービスで年賀はがきの需要を掘り起こす。
簡易郵便局を除く全国の郵便局で取り扱い、申込期間は十五日から十二月十四日まで。販売目標は約五千万枚。
顧客は、約八十種の図案を載せたカタログの中から希望のデザインを選び、申込書に自分の住所や電話番号などを記入して窓口で申し込めば、十日ほどで発送する。年賀はがきの送り先の氏名、住所の印刷は受け付けない。
送料を含んだ印刷価格は、フルカラーの「おすすめ年賀状」の場合、百枚で七千四百円で、はがき代は別料金。自宅まで配送するため郵便局会社は「コンビニが扱う同様の商品よりやや高い」としている。
--------引用以上--------
私がこの記事を見て、まず思ったことは、「人員不足で遅配や誤配が相次いでいるのに、その上また仕事が増えて郵便局の人も大変だなぁ」というものでした。
前回の記事でも扱いましたが、年賀状の遅配が多く、郵便局には前年比2割増のクレームが来たそうです。いまさら年賀状の印刷の取り次ぎなんて、やっている余裕はないという感じもします。
まあ、それをなんとかクリアできるとしても、私はこの「ビジネスモデル」がいいものだとは到底思えません。なぜなら、限られた年賀状の印刷需要を、郵便局が根こそぎ奪うことになれば、今まで年賀状の印刷を受け付けてきた印刷工場などが仕事を奪われる形になるからです。
根こそぎ奪うなんて馬鹿な事態が起こるわけないだろう、という人もいるでしょう。しかし、郵便局が事実上年賀状印刷を独占できるやり方もあるのです。
まず、超繁忙期である年賀状の配達時期の郵便配達料金を何割か上げます。今は難しいでしょうが、完全に民営化すれば十分に可能です。ヤマト運輸のメール便が、翌日到着だと値段が上がるのと同じように、「高度なサービスには特別な料金を」というのが、民間の常識だと言われればそれまでだからです。
その上で、年賀はがきを大量に買う客に対して、「購入予約の際に郵便局で印刷を早めに申し込めば、配達料金を安くしますよ」と特別割引を持ちかけます。販売と同時にというのがコツです。
コンビニだって同じようなことをやっているじゃないか、という人もいるでしょうが、大量の年賀はがきを扱う郵便局は料金をダンピングすれば競争相手を潰すことも出来ます。そんなことをしなくても、「郵便局の窓口に予約が多いから」と、企業向けの年賀はがきの卸価格をつり上げてしまえばいいのです。年賀はがきの販売については独占企業なのですから、こういうこともやろうと思えば出来ます。
そうすれば、年賀はがき印刷は郵便局の独占状態にすることも可能になるのです。
え?普通の印刷所や、ヤマト運輸なんかの民間運送会社も、「企業努力」をして値段を下げればいいじゃないかって?
その立論は理論上は正解ですが、実際の経済社会にあてはめると100%間違っています。
まず、年賀はがきという商品自体が、きわめて短期かつ膨大な需要なので、そのための設備投資が他の時期には利益のマイナスに働くという点です。日本郵便には各中央郵便局がありますから、初期導入コストが安く済みます。しかし、同じようなことを、はがきという特殊な運送物について、ヤマト運輸や佐川急便がやったら、絶対に採算割れします。
そんな事業を「社会を便利にするために」進んでやろうという企業経営者がいるわけがありません。これで、ヤマトや佐川がこの事業に参入するという論理は破綻します。
もっと重要なことは、年賀はがきというのは、いまさら大きな需要増を見込める業界ではないということです。
電子メールなどのせいで、手軽に連絡を取り合うことができるようになっているからです。2007年の新年向け年賀はがきの発行枚数は37億9978枚で、前年度より7%減少しています。ピーク時の44億5936万枚(平成16年用)に比べるとかなり減っています。販売実績はこれよりさらに低いでしょう。
ここで重要な法則があります。
「総需要が限定されている状態での競争強化は、短期的には経済の活性化を生むが、長期的には最強の経済主体を残して総崩れになる結果を生む」
ということです。
限られた需要である以上、競争が激化しても各経済主体が思うように利益を上げられません。そうなると、他者のシェアを奪うことでしか生き残れないので、共食い・共倒れという事態を招きます。そして結局、一番経営体力のある一社が勝つのです。
これを大量の年賀はがき印刷でみれば、間違いなく生き残るのは郵便局でしょう。郵便局には財務的な余裕がありますから、ダンピングをしても赤字決算でしのぐことが可能です。しかし、他の業者、特に中小の印刷会社は、年賀状印刷の需要を奪われたら、かなりの経営悪化を招くでしょう。それがそのまま倒産につながるというケースがあり得ます。東京のような他にも需要開拓が期待できるような場所なら別ですが、地方の印刷会社は苦しいでしょうね・・・。
「郵便局がまた便利になりました!」の結果が、これです。
もちろん、郵便局も民営化した以上、他人の利益を食ってでも生きていかなければならないのであり、郵便局を責めるのは筋違いです。郵便局は、「便利さ」を商品化しただけであり、営利企業として生き残るにはやむを得ないことなのです。
今度詳しく記事にしようと思っているのですが、こういう現象は国鉄の民営化でも見られた現象なのです。具体的に言えば「駅ナカ」と言われる商業施設です。あれによって、ただでさえ青息吐息だった駅前商店街が、さらに打撃を受けたという例を耳にします。
JRにしても郵便局にしても、需要の根っこの部分(駅や郵便窓口)を握っていて、やり方によっては外に出て行く需要を全て青田買いすることが可能であるという点が共通しています。
そして、それに対して、周囲にいる民間企業はすべからく無防備です。そりゃあそうでしょう。もともとそこにいたのは非営利企業であり、それを前提にして自分たちは営業していたわけです。それがいきなり民営化して、自分たちの競争相手になったのですから、対応できずにバタバタ倒れていくのは当然です。
じゃあNTTはどうなんだ?という人がいるかもしれませんが、全く反論になっていません。NTTの場合は、IT技術の発達、特にインターネットの登場で、民営化以来総需要が拡大していく局面ばかりでした。これを、総需要が限定されている「駅周辺の購買力」や「年賀はがき需要」と同視するわけにはいきません。
そうなると、今考えなくてはいけないのは、利便性の向上や財政負担の軽減を目的に公営企業を何でも民営化することが果たして国民経済全体にとって正しいことなのかということです。
民営化以前は、民間は民間、郵便局は郵便局という風に、きちんとした棲み分けが出来ていたのです。不思議なもので、こういう棲み分けが出来ている方が経済的には成長するのです。過当競争が生じにくいからでしょう。
ところが、巨大公営企業が突然民営化すると、その膨大な経営インフラを駆使して、油断している同業他社を潰しまくる「モンスター」になるのです。JRや日本郵便に銀行や外資が資本参加し、利益至上主義の経営を求めれば、そういう傾向に拍車がかかるでしょう。
こういう負の側面は、他に需要がいくらでもある都会、なかんずく東京では見えてきません。たとえば、民営化しても、東京では簡易郵便局もつぶれませんし、ほとんどの郵便局は「統括支店」や「支店」といった有利な扱いを受けています(前回記事のrcp様の指摘による。また、●こちらのリンクも参照)支店が1店舗しかない高知県東部の不便さは、都民にとってはどこ吹く風なのです。
表面的な「便利さ」を旗頭にして導入されていることが、どこかで大きな犠牲を生んでいることもあるのです。利便性を向上さえすればなんとかなるような東京での生活が日本の今だと思ったら大間違いです。
次回は、10月7日から9日にかけての新潟訪問(新潟市および柏崎)について記事にしたいと思っています。
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年賀状郵便局が印刷 図柄や差出人の住所・氏名
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2007101302056086.html
--------以下引用--------
郵便局会社は十二日、年賀はがきを購入する顧客を対象に、見本から選んだ好みの図柄や、本人の住所と氏名を印刷して自宅に届ける「年賀状印刷ビジネス」を始めると発表した。
年賀はがきを購入した人はこれまで、自分で印刷会社に名前などの印刷を頼んでいた。民営化で印刷会社への仲介業務が可能になり、新サービスで年賀はがきの需要を掘り起こす。
簡易郵便局を除く全国の郵便局で取り扱い、申込期間は十五日から十二月十四日まで。販売目標は約五千万枚。
顧客は、約八十種の図案を載せたカタログの中から希望のデザインを選び、申込書に自分の住所や電話番号などを記入して窓口で申し込めば、十日ほどで発送する。年賀はがきの送り先の氏名、住所の印刷は受け付けない。
送料を含んだ印刷価格は、フルカラーの「おすすめ年賀状」の場合、百枚で七千四百円で、はがき代は別料金。自宅まで配送するため郵便局会社は「コンビニが扱う同様の商品よりやや高い」としている。
--------引用以上--------
私がこの記事を見て、まず思ったことは、「人員不足で遅配や誤配が相次いでいるのに、その上また仕事が増えて郵便局の人も大変だなぁ」というものでした。
前回の記事でも扱いましたが、年賀状の遅配が多く、郵便局には前年比2割増のクレームが来たそうです。いまさら年賀状の印刷の取り次ぎなんて、やっている余裕はないという感じもします。
まあ、それをなんとかクリアできるとしても、私はこの「ビジネスモデル」がいいものだとは到底思えません。なぜなら、限られた年賀状の印刷需要を、郵便局が根こそぎ奪うことになれば、今まで年賀状の印刷を受け付けてきた印刷工場などが仕事を奪われる形になるからです。
根こそぎ奪うなんて馬鹿な事態が起こるわけないだろう、という人もいるでしょう。しかし、郵便局が事実上年賀状印刷を独占できるやり方もあるのです。
まず、超繁忙期である年賀状の配達時期の郵便配達料金を何割か上げます。今は難しいでしょうが、完全に民営化すれば十分に可能です。ヤマト運輸のメール便が、翌日到着だと値段が上がるのと同じように、「高度なサービスには特別な料金を」というのが、民間の常識だと言われればそれまでだからです。
その上で、年賀はがきを大量に買う客に対して、「購入予約の際に郵便局で印刷を早めに申し込めば、配達料金を安くしますよ」と特別割引を持ちかけます。販売と同時にというのがコツです。
コンビニだって同じようなことをやっているじゃないか、という人もいるでしょうが、大量の年賀はがきを扱う郵便局は料金をダンピングすれば競争相手を潰すことも出来ます。そんなことをしなくても、「郵便局の窓口に予約が多いから」と、企業向けの年賀はがきの卸価格をつり上げてしまえばいいのです。年賀はがきの販売については独占企業なのですから、こういうこともやろうと思えば出来ます。
そうすれば、年賀はがき印刷は郵便局の独占状態にすることも可能になるのです。
え?普通の印刷所や、ヤマト運輸なんかの民間運送会社も、「企業努力」をして値段を下げればいいじゃないかって?
その立論は理論上は正解ですが、実際の経済社会にあてはめると100%間違っています。
まず、年賀はがきという商品自体が、きわめて短期かつ膨大な需要なので、そのための設備投資が他の時期には利益のマイナスに働くという点です。日本郵便には各中央郵便局がありますから、初期導入コストが安く済みます。しかし、同じようなことを、はがきという特殊な運送物について、ヤマト運輸や佐川急便がやったら、絶対に採算割れします。
そんな事業を「社会を便利にするために」進んでやろうという企業経営者がいるわけがありません。これで、ヤマトや佐川がこの事業に参入するという論理は破綻します。
もっと重要なことは、年賀はがきというのは、いまさら大きな需要増を見込める業界ではないということです。
電子メールなどのせいで、手軽に連絡を取り合うことができるようになっているからです。2007年の新年向け年賀はがきの発行枚数は37億9978枚で、前年度より7%減少しています。ピーク時の44億5936万枚(平成16年用)に比べるとかなり減っています。販売実績はこれよりさらに低いでしょう。
ここで重要な法則があります。
「総需要が限定されている状態での競争強化は、短期的には経済の活性化を生むが、長期的には最強の経済主体を残して総崩れになる結果を生む」
ということです。
限られた需要である以上、競争が激化しても各経済主体が思うように利益を上げられません。そうなると、他者のシェアを奪うことでしか生き残れないので、共食い・共倒れという事態を招きます。そして結局、一番経営体力のある一社が勝つのです。
これを大量の年賀はがき印刷でみれば、間違いなく生き残るのは郵便局でしょう。郵便局には財務的な余裕がありますから、ダンピングをしても赤字決算でしのぐことが可能です。しかし、他の業者、特に中小の印刷会社は、年賀状印刷の需要を奪われたら、かなりの経営悪化を招くでしょう。それがそのまま倒産につながるというケースがあり得ます。東京のような他にも需要開拓が期待できるような場所なら別ですが、地方の印刷会社は苦しいでしょうね・・・。
「郵便局がまた便利になりました!」の結果が、これです。
もちろん、郵便局も民営化した以上、他人の利益を食ってでも生きていかなければならないのであり、郵便局を責めるのは筋違いです。郵便局は、「便利さ」を商品化しただけであり、営利企業として生き残るにはやむを得ないことなのです。
今度詳しく記事にしようと思っているのですが、こういう現象は国鉄の民営化でも見られた現象なのです。具体的に言えば「駅ナカ」と言われる商業施設です。あれによって、ただでさえ青息吐息だった駅前商店街が、さらに打撃を受けたという例を耳にします。
JRにしても郵便局にしても、需要の根っこの部分(駅や郵便窓口)を握っていて、やり方によっては外に出て行く需要を全て青田買いすることが可能であるという点が共通しています。
そして、それに対して、周囲にいる民間企業はすべからく無防備です。そりゃあそうでしょう。もともとそこにいたのは非営利企業であり、それを前提にして自分たちは営業していたわけです。それがいきなり民営化して、自分たちの競争相手になったのですから、対応できずにバタバタ倒れていくのは当然です。
じゃあNTTはどうなんだ?という人がいるかもしれませんが、全く反論になっていません。NTTの場合は、IT技術の発達、特にインターネットの登場で、民営化以来総需要が拡大していく局面ばかりでした。これを、総需要が限定されている「駅周辺の購買力」や「年賀はがき需要」と同視するわけにはいきません。
そうなると、今考えなくてはいけないのは、利便性の向上や財政負担の軽減を目的に公営企業を何でも民営化することが果たして国民経済全体にとって正しいことなのかということです。
民営化以前は、民間は民間、郵便局は郵便局という風に、きちんとした棲み分けが出来ていたのです。不思議なもので、こういう棲み分けが出来ている方が経済的には成長するのです。過当競争が生じにくいからでしょう。
ところが、巨大公営企業が突然民営化すると、その膨大な経営インフラを駆使して、油断している同業他社を潰しまくる「モンスター」になるのです。JRや日本郵便に銀行や外資が資本参加し、利益至上主義の経営を求めれば、そういう傾向に拍車がかかるでしょう。
こういう負の側面は、他に需要がいくらでもある都会、なかんずく東京では見えてきません。たとえば、民営化しても、東京では簡易郵便局もつぶれませんし、ほとんどの郵便局は「統括支店」や「支店」といった有利な扱いを受けています(前回記事のrcp様の指摘による。また、●こちらのリンクも参照)支店が1店舗しかない高知県東部の不便さは、都民にとってはどこ吹く風なのです。
表面的な「便利さ」を旗頭にして導入されていることが、どこかで大きな犠牲を生んでいることもあるのです。利便性を向上さえすればなんとかなるような東京での生活が日本の今だと思ったら大間違いです。
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2007.10.13(Sat)
郵政民営化凍結法案、提出へ



このブログで、正面から扱っていなかった話題なので、是非この期に取り上げておきます。
郵政民営化見直し法案 民主、国民新と提出へ
http://www.asahi.com/politics/update/1013/TKY200710120346.html
--------以下引用--------
民主党は12日、国民新党が求めている今国会への郵政民営化見直し法案の共同提出に、応じることを決めた。両党の参院での統一会派構想が9月に不調に終わり、調整が難航していたが、小沢代表の指示で民主党が対応を軟化させた。これを受け、国民新党は野党共闘の凍結を解除し、統一会派に向けた協議も再開する方針だ。
法案は、今月からの郵政民営化で全国での公平なサービス提供に支障が出るかどうかを検討したうえで必要な見直しをし、その間は政府が保有する持ち株会社の日本郵政の株式売却を禁じる内容。
民主党の総務金融部門合同会議に、国民新党の長谷川憲正副幹事長が出席し、法案の骨子を説明。原口一博「次の内閣」総務相が「国民の郵政事業における権利を保障するための骨子は共有できる。小沢代表から国民新党案を最短コースでまとめてくれと言われている」と述べ、共同提案が了承された。
原口氏は、法案を野党多数の参院に早期に提出する意向も表明。長谷川氏は統一会派構想について「当然いい方向に進むだろう」と語った。民主党の鳩山由紀夫幹事長も記者会見で、「統一会派の方向に進むきっかけになる」と語り、週明けに両党幹事長間で協議する考えを示した。
参院では、民主党と新党日本の統一会派所属議員が計115人。4人の国民新党とも統一会派を組むと、過半数の122人まであと3人となる。
--------引用以上--------
>今月からの郵政民営化で全国での公平なサービス提供に
>支障が出るかどうかを検討したうえで必要な見直しをし、
>その間は政府が保有する持ち株会社の日本郵政の株式売却を禁じる
悪くない内容です。
郵政民営化が実現していくにつれ、様々な弊害が生じてきました。簡単に列挙すると、
▲4696局の集配局のうち1048局が無集配局に
「合理化」に名を借りた人減らしが露骨に行われている結果です。国民新党の自見庄三郎参院議員が実例を紹介しています。
集配廃止の福岡県芦屋局を見る
http://www.jimisun.com/news.htm#yuu-net
--------以下引用--------
芦屋局は10月から集配を廃止、20人いた局員はわずか4人に減りました。1万2千の住民は大困り。あるコンビニの女性経営者は「いままで朝夕2回、芦屋局の方が売上げを預かりに来てくれていたのに、自分で持参しなければならなくなりました」。
集配廃止のため土日曜には町民は20キロ離れた北九州市内の郵便局まで行かねばなりません。
「民営化法」ではビジネスモデル(経営の設計)も作れないことが現場に現れています。
--------引用以上--------
▲遅配の増加
これも、合理化の「成果」です。
年賀状の遅配に相次ぐ苦情=2割増の2749件-郵政公社
(「雪ノ助、世の中それでいいのか」様より)
--------以下引用--------
日本郵政公社は15日、今年の年賀状配達をめぐり、「配達が遅い」「届かない」などといった苦情が、電話や電子メールで1~10日に2749件寄せられたことを明らかにした。
昨年同期を2割上回る水準で、元日の配達通数が大きく減少し、2日以降の配達が増えたのが主因。
公社は今後、今年の問題点を洗い出し、民営化会社として初めて取り組む2008年の年賀状配達の改善に役立てることが求められる。
--------引用以上--------
>元日の配達通数が大きく減少し、2日以降の配達が増えたのが主因。
本当のところどうなのか分かりません。しかし、普通の企業で苦情電話が2割増というのは、かなり異常な事態だということはできます。
言っておきますが、これでも民営化「前」です。民営化したら、もっと露骨にコストカットや人減らしが行われ、それを補うために加重勤務が増え、サービスは低下するでしょう。今更スケールメリットの増大や大幅な需要増が見込めるような業種でもありませんから、人員を増強して処理能力を上げることも期待できません、
「民営化したら便利なる」と吹聴していたのは、どこの国民政党でしょうか。
▲簡易局の閉鎖
赤旗の記事を紹介しておきます。
簡易郵便局 417局閉鎖、廃止90局 民営化前後し加速
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-10-07/2007100701_02_0.html
--------以下引用--------
全国で簡易郵便局の閉鎖が相次いでいます。郵便局会社などによると、十月一日現在、四千二百九十九局ある簡易郵便局のうち、「一時閉鎖」は四百十七局にのぼっています。「一時閉鎖」数は、八月末時点の三百十局から百七局増えました。
分割民営化初日の一日には、北海道、長野、三重、鹿児島など十六道県の六十八局がいっせいに閉鎖されました。
簡易局の「一時閉鎖」にとどまらず、廃止となるケースも増加傾向にあり、廃止は今年に入ってから九十局を数えます。民営化を前後し、地方・過疎地の郵便局網の衰退が加速しています。
簡易局の閉鎖は、業務を委託されていた個人や農協などが郵政民営化を機に受託を打ち切らざるを得なくなったためです。コスト優先による経営方針のもと、事務委託手数料が一時引き下げられたことも閉鎖の引き金になりました。
郵便局会社は「新たな委託先を探す」としていますが、再開は難航し、受託者が見つからなければそのまま廃局となるケースも増えることが予想されます。
--------引用以上--------
簡易郵便局は、農協や個人が委託されて運営している規模の小さな郵便局です。
そうはいっても、集落の中で簡易保険を扱っている金融機関はここだけ、という地域もあります。理由は上にあるような委託事務手数料引き下げだけでなく、民営化に伴う業務の煩雑化で、扱いきれないと判断した受託者が自主的に廃業を選択したケースも目立っています。(その後委託手数料の値上げが決まったが、基本手数料がその分アップしているという笑えない状況になっている)
郵便局が金融をやっている意味のひとつは、その「わかりやすさ」「扱いやすさ」にありました。ユニバーサル・サービスという言葉がよく出されますが、要するにお爺さんお婆さんでも預金や保険といったサービスを利用できるところに意義があったわけです。地域に他に金融機関がない、というところも珍しくはありません。
今の世の中はどんな地方でも貨幣経済に運営されているのですから、その裏返しとして、金融サービスにアクセスできる機会がなくてはなりません。簡易郵便局なんてなくたって、銀行を使えばいいというのは、人口の多い都会の人間の暴論です。
▲各種手数料の増加
具体的には、こんな感じです。
振替口座サービス:150円→330円(現在の2.2倍)
電信現金払い:180円→630円(現在の3.5倍)
公共料金払い込み:30円→240円(現在の8倍)
定額小為替:1枚10円→100円(現在の10倍)
民間企業になったので、銀行同様印紙税が課税させるようになったということですが、頻繁に利用する人間にとっては事実上増税になっていることを忘れてはなりません。
だいいち、料金が安くなるということもさんざん言われていたわけで、こういう事情をきちんと説明しないというのは、一種の詐欺です。
まあ、他にも外国資本が簡易保険の資金120兆円を狙っているとか、そういう政治的な問題もあるのですが、ここでは置いておきます。
このように、「民営化→コスト意識・サービス精神の向上→国民の利便性が高まる」という竹中平蔵氏や小泉元首相の喧伝していた論理は、民営化が実現する以前にすでに破綻していたということになります。見直しをしろというのは至極まっとうな意見です。
当たり前のことですが、この凍結法案が参議院に提出され可決したとしても、自民・公明が300を超える議席を握る衆議院では否決されることが確実です。
しかし、そのことによって、「自民・公明政権は民営化の弊害を見直すつもりはない」「そのまま外資に丸投げする可能性すらある」という認識は広く広まります。
民営化をそのままにして改善すればいいじゃないか、という人もいるかもしれませんが、無理です。一民間企業に過ぎない日本郵便にコストを無視した業務の改善を迫るという論理がそもそもおかしいのです。株式の売却をせず、国が完全子会社みたいにしている状態でなければ意味がありません。
そういうところも、民主・国民新党両党はきちんと伝えていく努力をしてほしいものです。
さて、ここで疑問に思ったことがあるかもしれません。
そういう法案なら、なぜもっと早く提出しなかったのか?という疑問です。もっと詳しく言えば、なぜ民主党は郵政民営化凍結法案に消極的だったのか、ろいうことでもあります。
理由はいくつか考えられます。
▲国民新党主導の法案提出では第一党としての面目が立たない
これは、単純にメンツの問題です。
▲弊害が顕在化していないので、注目が集まらない
実際に痛い目に遭わないとわからない人が多いですから、とりあえず民営化させて、それから様子を見ようということでしょう。
▲民主党内に小泉一派の人間がいる
これが一番の問題点です。
ずばり、誰だか指摘しておきましょう。前原誠司・前民主党代表と、その一派(いわゆる前原グループ)です。前原氏については、●こちらのブログがよくまとまっているのでご覧になっていただくといいでしょう。彼の思想を簡単にまとめておくと、
▲軍拡万歳(同じ路線の石破茂防衛大臣と何度も対談)
▲自民党議員を超える新自由主義者
▲同和関係(部落解放同盟)の支持を受けている
▲外国人参政権に賛成、女系天皇にももちろん賛成
中川秀直のような朝鮮人や部落解放同盟とべったりの自民党議員もいることですから、ほとんど自民党町村派といってもいいような政治家です。事実、小泉氏は前原氏が代表だった頃、民主党との大連立を打診したようです。
まあ、民主党というのは元来、前原氏のような社会経験のないカイカク至上主義者と、自民党の保守的体質を嫌う革新思想の官僚(代表は●この人や●辞職したこの人。人間として問題のある人が多い)が集まった政党だったのです。農家の保護だとか言い始めたのは、小沢代表のいた自由党と合流してからで、もともとは小泉カイカクとの親和性は抜群だったのです。
その小沢氏が地方の1人区を根こそぎ持って行って参院選に大勝したことで、前原氏とそのシンパはかなりの不満を持っていることでしょう。農家や組織票に軸足を置く小沢氏が党を支配していては、民主党と自民党の合流もできません。
だから、新自由主義を象徴する、というか大好きな小泉氏が掲げていた郵政民営化凍結にも抵抗していたというわけです。
凍結法案が提出されるに至ったということは、小沢氏、すなわち旧自民党一派が、民主党内では優勢だということです。
今後、大きな動きがあるとしたら、この前原一派の動きが鍵になる可能性が高いです。すなわち、
カイカク真理教(小泉氏+清和会+チルドレン+前原一派など)
という勢力と、
保守勢力(小沢氏とその周辺+国民新党+郵政造反組+麻生支持派)
という勢力のぶつかり合いという風に、政界再編が起こる可能性が高いのです。その方が、国民にとっても投票先を選びやすくなります。
郵政民営化凍結法案の審議経過を、ワクワクしながら見るというのも悪くなさそうです。
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テーマ : 政治・経済・時事問題 - ジャンル : 政治・経済
2007.10.11(Thu)
カイカクを支える、「既得権益」に対する恨み
「真綿で首を絞める」という表現がありますが、日本国民がまさにそういう状態になりつつあるという気がするニュースを紹介します。ちなみに、首を絞めているのは「政府」「与党」であり、真綿には「カイカク」とか「財政均衡」という名前がついています。
公営住宅:国が入居継承を厳格化「親の死後、子は住めず」
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071010k0000e040068000c.html
--------以下引用--------
東京都渋谷区の「笹塚二丁目アパート」。都営住宅は8月25日から、継承資格が厳格化された 国が05年、都道府県に対して公営住宅の入居継承資格を厳格化するよう求めた通知を巡り、入居者に不安が広がっている。入居資格は従来、親から子へ継続できたが、通知は「入居機会の公平化のため」に継承権利者を「原則、配偶者のみ」に限定した。しかし、低家賃で住める公営住宅は、収入が少ない母子家庭や障害のある子供を持つ家族も少なくない。親たちは「自分の死後、子供は住む所がなくなってしまう」と訴えている。
「私に何かあったら、娘と孫はどうすればいいの」。東京都渋谷区の都営住宅「笹塚二丁目アパート」に住む木村繁子さん(83)は肩を落とす。
長女房江さん(54)と孫の隆士さん(25)と3人暮らし。房江さんは糖尿病で、毎日4回インスリン注射をしながら週6日、スーパーでパートをこなす。隆士さんは知的障害4度。一時は福祉作業所を利用したが、障害者自立支援法では受け取る工賃より自己負担の方が高額となるため、今は通っていない。
房江さんのパート代や繁子さんの月12万円の年金などで、月収は多くて30万円程度。生活費や月2万円弱かかる房江さんの治療費でほぼ消える。繁子さんは自分が死亡し年金収入がなくなっても、家賃が1万円超の都営住宅なら、娘と孫の2人で何とか暮らしていけると思ってきた。
ところが、国土交通省は05年12月、継承権利者を「原則、現に同居している配偶者」に限るよう都道府県に通知した。これを受け、都は継承制度を改正し、8月25日に施行した。結果、房江さんは継承できなくなった。
通知は、高齢者や障害者など「特に居住の安定を図る必要がある者」には例外的に、配偶者以外への継承を認めるが、判断は都道府県に委ねられている。都の場合、知的障害4度は「軽度」とみなされ、隆士さんは特例の対象外だ。繁子さんは「娘と孫はホームレスになれと言うのでしょうか」と訴える。
こうした例は都営住宅に限らない。鳥取県倉吉市の県営住宅では5月、母子家庭の母親が19歳と17歳の息子2人を残し、がんで他界した。大学浪人中の長男は10月に成人になるため、その後半年以内に兄弟は退去しなければならないという。親族は「同じようなケースが今後、全国で相次ぐのでは」と懸念する。
◇「親子間の継承は不公平」
国土交通省によると、公営住宅の戸数は近年、全国約220万戸で横ばいだが、05年度の応募倍率は全国平均9.9倍で、97年度以降8年連続で上昇した。継承申請は04年度、東京・大阪で7424件、子供への継承は2割を占めた。国交省は継承資格の厳格化を「長年、同一親族が居住し、入居機会の公平性を損なっている」と説明する。
東京都は通常で倍率30倍前後、高い時は50倍に上る。都担当者は「親子間の継承は不公平。重度の障害者や高齢者は例外中の例外だ」と指摘する。親を亡くした子供については「成人すれば自立できる。『20歳過ぎだが収入がない』と言われても、無収入で家賃を払えなければ、そもそも公営住宅に住めない」と特例扱いを否定する。
住宅政策と社会保障の問題に詳しい大本圭野・東京経済大経済学部教授は「公営住宅の高い倍率は、国の経済政策で格差が拡大し、貧困層が増えた結果。継承資格の厳格化は、社会の不公平は放置して限られた牌(ぱい)を低所得者間で競わせるやり方で、公平とは言い難い。厳格化が進めば、『住宅のセーフティーネット』という公営住宅の意義がなくなる」と指摘する。
--------引用以上--------
私が加入している「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」とやらでは、ニュースを引用して日記でコメントをつけることができる機能があるのですが、そこでの上記ニュースについての意見を見てみると面白いです。
一つ目の意見はこういうものです。(プライバシーに配慮して、言い回しを若干変えてあります)
「市営住宅が建て替えられた。マンションと見間違える外観と作りだ。
しかし、いつも不在…聞けばいつもは隣町の子供の家に居るそうだ。本来は低所得者向けのはずが駐車場にはハマーや国産、外車の高級車がずらりと並んでいる。退去すると勿体無いから物置代わりに使ってるのだろうか。子供も収入で再審査したらいい」
それに対するコメント。
「ニュースからきました。おっしゃる通り。既得権強すぎです。」
二つ目の意見です。
「親の知り合いにも公営に住んで楽してる人いました。働けるようになってもあまり働かないらしい。苦労してる人たちに迷惑だ。公営に限らず住んでる人への法律は甘いです。家賃滞納もすぐに追い出せればいいのに、なかなか追い出せません。追い出せても残された荷物は捨ててはいけないとかわけわからん法律がある。よく生活できなくなるとかの言い訳を聞くが、赤字になるとこっちも生活できなくなるんだが」
上の二つの意見とコメントに、共通する「何か」を感じませんか?
そうです。「公営住宅入居者はみんな既得権益の保持者だ」という先入観です。
上の通達が出されているのは2005年です。ちょうど「小泉カイカク」の真っ只中だった時期です。
小泉氏のカイカク路線というのは、郵政民営化に代表されるように、既得権益と言われるものを破壊し、それによって公平な社会を生み出すのだという論理に支えられていました。それ以前からのマスコミの規制緩和に肯定的な論調もあり、彼の任期5年間でこの論理は国民の間に広く浸透することになりました。
上の意見は、そういう論理を真に受けているものだと言えそうです。果たして妥当なのかどうか検討しましょう。
確かに、公営住宅の賃借権は、大して困ってもいないくせに親から受け継いでいるという例もあり、公正な運用がなされているかといえば、そうだと断言できるものではありません。また、とても「公営」といえないような●このリンクにあるような、異常な事件もあったりします。
しかし、そういう常軌を逸した例は個別に対処が可能です。そうではなくて、それ以外の事例についても、公平性の担保を厳守しろということになったら、おそらくその事務処理負担でさらにコストがかかることは目に見えています。たとえるなら、スピード違反は許せないから、あらゆる場所でいつ何時でも、制限速度を少しでも超えているスピード違反も取り締まれという話に似ています。非現実的です。
ところが、そういうことを公務員という他人に求めながら、コストを切り詰めなければ首にすべきだと主張する人が後を絶ちません。自分はいったいどれだけ効率的で合理的な生活を送っているというのでしょうか。
それなら、「公営住宅なんて全廃しろ(どうせ俺は住んでいないし)」とかいう人もいるでしょうね。そうなると、引用記事のような悲惨な人までまとめて放り出されてしまうことになってしまいます。それを仕方のない犠牲だ、というような人は、自分がどれだけ非情かわかっているのでしょうか。おそらく、理想を実現するためなら他人なんて死んでもいいんだ、と頭の中で思っているような人なんでしょう。
そういう論理を振りかざす人は増えているような気がします。ネット上では確実に増殖しています。2ちゃんねるや、私のいるSNSの日記なんかを見るとすぐに分かります。
要するに、「公営住宅から既得権益を追放しろ」(入居者でない自分には関係ない)とか「既得権益になるくらいなら全廃しろ。困窮者も努力すればいい」(自分は努力するつもりなどない)などという人は、自分より少しでも有利な立場にいる人間が憎くてたまらないのではないでしょうか。
だから、そういう人たちを引きずりおろしたい。みじめで、望まない日々を送らざるを得ない自分のポジションにいる人間を少しでも増やしてやりたい。自分は努力したくないから、小泉さんや安倍さんが「こいつだ」と言った連中を集団リンチして暗い情熱を満たしたい。
そんな感じじゃないんでしょうか。哲学者のニーチェが言うところの「ルサンチマン」です。
●ルサンチマン
--------以下引用--------
ニーチェの用語。被支配者あるいは弱者が、支配者や強者への憎悪やねたみを内心にため込んでいること。この心理のうえに成り立つのが愛とか同情といった奴隷道徳であるという。怨恨。
--------引用以上--------
「強者」を「公営住宅入居者」に、「愛とか同情」という部分を、「自己責任」や「カイカク」と置き換えれば、そっくりそのまま今回のケースに当てはまりますね。まあ、魔女狩りの原動力になったような心理だといってもいいかもしれません。
ネットで朝鮮人を執拗にたたいたり、カイカクを進めて既得権益をぶっつぶせと言っている連中は、要するにルサンチマン保持者なのです。
ここで笑えるのは、このようなルサンチマン保持者の要求するような「既得権益の破壊」やら「公正な社会実現のためのカイカク」とやらがどれだけ進行しても、ルサンチマン保持者にはそれによって生じた利益を享受する余地がほとんどないということです。
どういうことか、公営住宅の例で見てみましょう。東京都の都営住宅で、一般世帯向けの物件を見てみると、●こちらにあるように、全物件の平均応募倍率が38倍です。しかも、年1回の収入報告に基づいて再審査をおこない、審査の結果に基づく退去命令に従わない場合は強制執行(昨年は5~60件執行判決があったらしい。筆者が都庁の職員に電話できいた)もちゃんとやっていて、この倍率です。これでは、親から子への賃借権の承継が認められたからと言って、ルサンチマン保持者が公営住宅にありつける可能性が劇的に上昇するということはまずありません。
全国平均で9,9倍ですから、人口比を考えれば、東京以外でも似たような現象が進行しているのでしょう。要するに、既得権益者をいくらつるし上げても無駄なのです。
それでも既得権益叩きに夢中になっている連中は、小泉さんや安倍さんが社会が公正さを取り戻してくれれば、自分たちも豊かになれる・・・そういう夢を勝手に見ているだけなのです。そういう奴こそ「自己責任」で「自助努力」をしろ、と言いたくなるのは私だけでしょうか。
だいいち、本当に生きることに必死だったら、他人が月にいくら得をしているなんてどうでもいいはずです。要するに暇なんです。それなのに、願望や欲望だけはあるからストレスは溜まっていく。でも、それを自分のせいにしたくない。学校でイジメをやるような、つまらない人間と、メンタリティがものすごく共通していますね。
そういう自分の惨めさ、頭の悪さを、さも財政危機だからとか公正な社会の実現だとか、正当化するのはやめてもらいたいです。何でもいいから理屈をつけて気に入らないやつを排除しろ、というのは中世の魔女狩りと同じです。
そういう連中のルサンチマンを背に受けて、小泉内閣はカイカクとやらを進めることができたのでしょう。安倍前総理が失敗したのは、ルサンチマンを持っている人間の身になってその望むところをくみ取り、徹底的に煽ることができなかったからだとも言うことが出来ます。
思うに、公的機関が弱者救済をやるとなったら、前出の、同和住宅に住んでいる公務員が家賃を滞納するなどという馬鹿げた事態は除くとして、多少のロスは生じるのが当然なのです。それを排除していたら、弱者救済そのものができなくなります。
ところが、小泉カイカク・安倍カイカクを礼賛してきた人は、そういう「無駄」を許すことが出来ないのです。ある意味潔癖な人々だといえます。
しかし、その潔癖さが本当に困窮している人間までを結果的に追いやることになっているのだとしたら、やはりもう一度考え直してもらいたいなと思うしだいです。
他人を憎み、排除することにかまけていると、本当に戦う相手が見えてきません。弱者同士で共食いをしていては、グローバリストのように、権力を利益誘導に利用している人々に踊らされるだけです。
ちょうど、中世の魔女狩りを利用して、カトリック教会が財産家から財産を奪い取り、若い女性に性的陵辱を加えたのと同じ事態が進行中なのです。既得権益を持つ人間をリンチして非人間的な喜びに浸ることなどやめて、魔女狩りの主犯であるカイカク推進派を糾弾すべきです。
もしあなたが、ルサンチマンがあることを自覚し、それを克服したいと願うのなら・・・ですが。
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公営住宅:国が入居継承を厳格化「親の死後、子は住めず」
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071010k0000e040068000c.html
--------以下引用--------
東京都渋谷区の「笹塚二丁目アパート」。都営住宅は8月25日から、継承資格が厳格化された 国が05年、都道府県に対して公営住宅の入居継承資格を厳格化するよう求めた通知を巡り、入居者に不安が広がっている。入居資格は従来、親から子へ継続できたが、通知は「入居機会の公平化のため」に継承権利者を「原則、配偶者のみ」に限定した。しかし、低家賃で住める公営住宅は、収入が少ない母子家庭や障害のある子供を持つ家族も少なくない。親たちは「自分の死後、子供は住む所がなくなってしまう」と訴えている。
「私に何かあったら、娘と孫はどうすればいいの」。東京都渋谷区の都営住宅「笹塚二丁目アパート」に住む木村繁子さん(83)は肩を落とす。
長女房江さん(54)と孫の隆士さん(25)と3人暮らし。房江さんは糖尿病で、毎日4回インスリン注射をしながら週6日、スーパーでパートをこなす。隆士さんは知的障害4度。一時は福祉作業所を利用したが、障害者自立支援法では受け取る工賃より自己負担の方が高額となるため、今は通っていない。
房江さんのパート代や繁子さんの月12万円の年金などで、月収は多くて30万円程度。生活費や月2万円弱かかる房江さんの治療費でほぼ消える。繁子さんは自分が死亡し年金収入がなくなっても、家賃が1万円超の都営住宅なら、娘と孫の2人で何とか暮らしていけると思ってきた。
ところが、国土交通省は05年12月、継承権利者を「原則、現に同居している配偶者」に限るよう都道府県に通知した。これを受け、都は継承制度を改正し、8月25日に施行した。結果、房江さんは継承できなくなった。
通知は、高齢者や障害者など「特に居住の安定を図る必要がある者」には例外的に、配偶者以外への継承を認めるが、判断は都道府県に委ねられている。都の場合、知的障害4度は「軽度」とみなされ、隆士さんは特例の対象外だ。繁子さんは「娘と孫はホームレスになれと言うのでしょうか」と訴える。
こうした例は都営住宅に限らない。鳥取県倉吉市の県営住宅では5月、母子家庭の母親が19歳と17歳の息子2人を残し、がんで他界した。大学浪人中の長男は10月に成人になるため、その後半年以内に兄弟は退去しなければならないという。親族は「同じようなケースが今後、全国で相次ぐのでは」と懸念する。
◇「親子間の継承は不公平」
国土交通省によると、公営住宅の戸数は近年、全国約220万戸で横ばいだが、05年度の応募倍率は全国平均9.9倍で、97年度以降8年連続で上昇した。継承申請は04年度、東京・大阪で7424件、子供への継承は2割を占めた。国交省は継承資格の厳格化を「長年、同一親族が居住し、入居機会の公平性を損なっている」と説明する。
東京都は通常で倍率30倍前後、高い時は50倍に上る。都担当者は「親子間の継承は不公平。重度の障害者や高齢者は例外中の例外だ」と指摘する。親を亡くした子供については「成人すれば自立できる。『20歳過ぎだが収入がない』と言われても、無収入で家賃を払えなければ、そもそも公営住宅に住めない」と特例扱いを否定する。
住宅政策と社会保障の問題に詳しい大本圭野・東京経済大経済学部教授は「公営住宅の高い倍率は、国の経済政策で格差が拡大し、貧困層が増えた結果。継承資格の厳格化は、社会の不公平は放置して限られた牌(ぱい)を低所得者間で競わせるやり方で、公平とは言い難い。厳格化が進めば、『住宅のセーフティーネット』という公営住宅の意義がなくなる」と指摘する。
--------引用以上--------
私が加入している「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」とやらでは、ニュースを引用して日記でコメントをつけることができる機能があるのですが、そこでの上記ニュースについての意見を見てみると面白いです。
一つ目の意見はこういうものです。(プライバシーに配慮して、言い回しを若干変えてあります)
「市営住宅が建て替えられた。マンションと見間違える外観と作りだ。
しかし、いつも不在…聞けばいつもは隣町の子供の家に居るそうだ。本来は低所得者向けのはずが駐車場にはハマーや国産、外車の高級車がずらりと並んでいる。退去すると勿体無いから物置代わりに使ってるのだろうか。子供も収入で再審査したらいい」
それに対するコメント。
「ニュースからきました。おっしゃる通り。既得権強すぎです。」
二つ目の意見です。
「親の知り合いにも公営に住んで楽してる人いました。働けるようになってもあまり働かないらしい。苦労してる人たちに迷惑だ。公営に限らず住んでる人への法律は甘いです。家賃滞納もすぐに追い出せればいいのに、なかなか追い出せません。追い出せても残された荷物は捨ててはいけないとかわけわからん法律がある。よく生活できなくなるとかの言い訳を聞くが、赤字になるとこっちも生活できなくなるんだが」
上の二つの意見とコメントに、共通する「何か」を感じませんか?
そうです。「公営住宅入居者はみんな既得権益の保持者だ」という先入観です。
上の通達が出されているのは2005年です。ちょうど「小泉カイカク」の真っ只中だった時期です。
小泉氏のカイカク路線というのは、郵政民営化に代表されるように、既得権益と言われるものを破壊し、それによって公平な社会を生み出すのだという論理に支えられていました。それ以前からのマスコミの規制緩和に肯定的な論調もあり、彼の任期5年間でこの論理は国民の間に広く浸透することになりました。
上の意見は、そういう論理を真に受けているものだと言えそうです。果たして妥当なのかどうか検討しましょう。
確かに、公営住宅の賃借権は、大して困ってもいないくせに親から受け継いでいるという例もあり、公正な運用がなされているかといえば、そうだと断言できるものではありません。また、とても「公営」といえないような●このリンクにあるような、異常な事件もあったりします。
しかし、そういう常軌を逸した例は個別に対処が可能です。そうではなくて、それ以外の事例についても、公平性の担保を厳守しろということになったら、おそらくその事務処理負担でさらにコストがかかることは目に見えています。たとえるなら、スピード違反は許せないから、あらゆる場所でいつ何時でも、制限速度を少しでも超えているスピード違反も取り締まれという話に似ています。非現実的です。
ところが、そういうことを公務員という他人に求めながら、コストを切り詰めなければ首にすべきだと主張する人が後を絶ちません。自分はいったいどれだけ効率的で合理的な生活を送っているというのでしょうか。
それなら、「公営住宅なんて全廃しろ(どうせ俺は住んでいないし)」とかいう人もいるでしょうね。そうなると、引用記事のような悲惨な人までまとめて放り出されてしまうことになってしまいます。それを仕方のない犠牲だ、というような人は、自分がどれだけ非情かわかっているのでしょうか。おそらく、理想を実現するためなら他人なんて死んでもいいんだ、と頭の中で思っているような人なんでしょう。
そういう論理を振りかざす人は増えているような気がします。ネット上では確実に増殖しています。2ちゃんねるや、私のいるSNSの日記なんかを見るとすぐに分かります。
要するに、「公営住宅から既得権益を追放しろ」(入居者でない自分には関係ない)とか「既得権益になるくらいなら全廃しろ。困窮者も努力すればいい」(自分は努力するつもりなどない)などという人は、自分より少しでも有利な立場にいる人間が憎くてたまらないのではないでしょうか。
だから、そういう人たちを引きずりおろしたい。みじめで、望まない日々を送らざるを得ない自分のポジションにいる人間を少しでも増やしてやりたい。自分は努力したくないから、小泉さんや安倍さんが「こいつだ」と言った連中を集団リンチして暗い情熱を満たしたい。
そんな感じじゃないんでしょうか。哲学者のニーチェが言うところの「ルサンチマン」です。
●ルサンチマン
--------以下引用--------
ニーチェの用語。被支配者あるいは弱者が、支配者や強者への憎悪やねたみを内心にため込んでいること。この心理のうえに成り立つのが愛とか同情といった奴隷道徳であるという。怨恨。
--------引用以上--------
「強者」を「公営住宅入居者」に、「愛とか同情」という部分を、「自己責任」や「カイカク」と置き換えれば、そっくりそのまま今回のケースに当てはまりますね。まあ、魔女狩りの原動力になったような心理だといってもいいかもしれません。
ネットで朝鮮人を執拗にたたいたり、カイカクを進めて既得権益をぶっつぶせと言っている連中は、要するにルサンチマン保持者なのです。
ここで笑えるのは、このようなルサンチマン保持者の要求するような「既得権益の破壊」やら「公正な社会実現のためのカイカク」とやらがどれだけ進行しても、ルサンチマン保持者にはそれによって生じた利益を享受する余地がほとんどないということです。
どういうことか、公営住宅の例で見てみましょう。東京都の都営住宅で、一般世帯向けの物件を見てみると、●こちらにあるように、全物件の平均応募倍率が38倍です。しかも、年1回の収入報告に基づいて再審査をおこない、審査の結果に基づく退去命令に従わない場合は強制執行(昨年は5~60件執行判決があったらしい。筆者が都庁の職員に電話できいた)もちゃんとやっていて、この倍率です。これでは、親から子への賃借権の承継が認められたからと言って、ルサンチマン保持者が公営住宅にありつける可能性が劇的に上昇するということはまずありません。
全国平均で9,9倍ですから、人口比を考えれば、東京以外でも似たような現象が進行しているのでしょう。要するに、既得権益者をいくらつるし上げても無駄なのです。
それでも既得権益叩きに夢中になっている連中は、小泉さんや安倍さんが社会が公正さを取り戻してくれれば、自分たちも豊かになれる・・・そういう夢を勝手に見ているだけなのです。そういう奴こそ「自己責任」で「自助努力」をしろ、と言いたくなるのは私だけでしょうか。
だいいち、本当に生きることに必死だったら、他人が月にいくら得をしているなんてどうでもいいはずです。要するに暇なんです。それなのに、願望や欲望だけはあるからストレスは溜まっていく。でも、それを自分のせいにしたくない。学校でイジメをやるような、つまらない人間と、メンタリティがものすごく共通していますね。
そういう自分の惨めさ、頭の悪さを、さも財政危機だからとか公正な社会の実現だとか、正当化するのはやめてもらいたいです。何でもいいから理屈をつけて気に入らないやつを排除しろ、というのは中世の魔女狩りと同じです。
そういう連中のルサンチマンを背に受けて、小泉内閣はカイカクとやらを進めることができたのでしょう。安倍前総理が失敗したのは、ルサンチマンを持っている人間の身になってその望むところをくみ取り、徹底的に煽ることができなかったからだとも言うことが出来ます。
思うに、公的機関が弱者救済をやるとなったら、前出の、同和住宅に住んでいる公務員が家賃を滞納するなどという馬鹿げた事態は除くとして、多少のロスは生じるのが当然なのです。それを排除していたら、弱者救済そのものができなくなります。
ところが、小泉カイカク・安倍カイカクを礼賛してきた人は、そういう「無駄」を許すことが出来ないのです。ある意味潔癖な人々だといえます。
しかし、その潔癖さが本当に困窮している人間までを結果的に追いやることになっているのだとしたら、やはりもう一度考え直してもらいたいなと思うしだいです。
他人を憎み、排除することにかまけていると、本当に戦う相手が見えてきません。弱者同士で共食いをしていては、グローバリストのように、権力を利益誘導に利用している人々に踊らされるだけです。
ちょうど、中世の魔女狩りを利用して、カトリック教会が財産家から財産を奪い取り、若い女性に性的陵辱を加えたのと同じ事態が進行中なのです。既得権益を持つ人間をリンチして非人間的な喜びに浸ることなどやめて、魔女狩りの主犯であるカイカク推進派を糾弾すべきです。
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2007.10.10(Wed)
日本は「満州」の夢を捨てられるか(3)
同タイトル●その(1)および●その(2)に続く記事です。今回は、中国東北部にとってのもう一つのリスク要因である「朝鮮」について検討したいと思います。
以前、「大連で日本のコールセンターを請け負う計画がある」という話をしましたが、それとよく似た面白いニュースを見つけました。以下に引用します。
延辺科技大人力開発院、第1期日本就業 IT教育課程の入学式
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news5/071005-2.htm
--------以下引用--------
延辺科学技術大学人力開発院では 9月 24日、社会教育院で第1期日本就業 IT教育課程の入学式を行った。 延辺各県市から集まって来たおよそ 20人 (満 19歳~35歳)に達する入学生たちは、日本での研修、就職を目的に今度の IT教育に参加した。
入学生たちは日本語の知識水準の差によってまず様々な日本語教育から受ける。一学期の日本語と IT教育課程を経て、志願により日本のその他の業種に研修に行ったり、あるいは IT教育課程に合格した者で当地の日本 IT企業で 1年間実習を終えた後、再度日本の IT会社に就職しに行くことになる。この人力開発院では、より多くの青年たちの日本への就職のために持続的に学院生たちを募集する。
延辺科学技術大学人力開発院・李明淑院長は、大学を卒業した若者達はもちろん、大学を出ることができなかった青年たちでも現代的な専門技術を掌握して国際社会の現場で先進国の企業文化と企業人の姿勢から学ぶことは、職場生活と人生で成功に近付く重要な一歩になるだろうし、彼らが IT産業分野の主力軍として成長する機会を提供したいと強調した。 このような近道を開いて行くことが人力開発院の次元では特別な意味を持つと付け加えた。
入学式で延辺科学技術大・金鎮慶総長は、学生たちに 《国際化時代にふさわしい夢を育て、どこででも主人公としての公的な態度で働き、 <私にも出来る、やれば出来る>という肯定的な意識で果敢に、真面目に努力し、感謝することができ、施すことができる生活をするために努力すれば、必ず志を果たすことが出来る》と鼓舞激励した。
--------引用以上--------
「延辺」という名前が出てきました。場所を確認しておきましょう。

上の記事に出てきた二人の人物、特に「金鎮慶」という名前で、ぴんと来る人は来たでしょうね。その通り、彼らは朝鮮族です。
朝鮮族は、中国国内にいながら朝鮮語を話し、ハングルを用い、朝鮮文化を継承している人々です。東北部を中心に200万人ほどいると言われています。特に延辺朝鮮人自治区では民族教育を独自に行っており、朝鮮語で教える大学(延辺大学)も存在するほどです。
朝鮮族の歴史は、清王朝が満州、すなわち今の東北部開発に着手し始めた19世紀末にさかのぼります。労働力が不足していたため、李氏朝鮮から移民を導入したのが始まりです。20世紀になると日本が経営する開拓事業の中で貴重な労働力とされ、日本領であった朝鮮からたくさんの朝鮮人が満州に移り住んだとされます。断っておきますが、強制連行はしていません(笑)。
日本が満州から撤退した後、この地を支配することになる中国共産党は、一応民族の自治を掲げていたこともあり、朝鮮人を自国内の少数民族と位置づけ、その自治を認めました。そういうわけもあって、今でも朝鮮族が独自の言語や文化を保持することができているのです。
しかし、皆さんこれ、何か違和感を感じませんか?
中国は独立国であったチベットを侵略して併合し、その後もデモを武力で鎮圧するなどの対応を行っています。また、宗教的背景の違う東トルキスタンに対しては強制断種や堕胎などを行っているのも知られています。
それなのに、なぜ朝鮮族にはこれほどまでに丁重な扱いをするのでしょうか?
最近私が気づいたのは、朝鮮族は「ある目的」のために生かされているのではないか、ということです。その目的とは、ズバリ、
「中国共産党による朝鮮半島併合の口実」
です。ここでいったん区切って、後半に続きます。
以前、「大連で日本のコールセンターを請け負う計画がある」という話をしましたが、それとよく似た面白いニュースを見つけました。以下に引用します。
延辺科技大人力開発院、第1期日本就業 IT教育課程の入学式
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news5/071005-2.htm
--------以下引用--------
延辺科学技術大学人力開発院では 9月 24日、社会教育院で第1期日本就業 IT教育課程の入学式を行った。 延辺各県市から集まって来たおよそ 20人 (満 19歳~35歳)に達する入学生たちは、日本での研修、就職を目的に今度の IT教育に参加した。
入学生たちは日本語の知識水準の差によってまず様々な日本語教育から受ける。一学期の日本語と IT教育課程を経て、志願により日本のその他の業種に研修に行ったり、あるいは IT教育課程に合格した者で当地の日本 IT企業で 1年間実習を終えた後、再度日本の IT会社に就職しに行くことになる。この人力開発院では、より多くの青年たちの日本への就職のために持続的に学院生たちを募集する。
延辺科学技術大学人力開発院・李明淑院長は、大学を卒業した若者達はもちろん、大学を出ることができなかった青年たちでも現代的な専門技術を掌握して国際社会の現場で先進国の企業文化と企業人の姿勢から学ぶことは、職場生活と人生で成功に近付く重要な一歩になるだろうし、彼らが IT産業分野の主力軍として成長する機会を提供したいと強調した。 このような近道を開いて行くことが人力開発院の次元では特別な意味を持つと付け加えた。
入学式で延辺科学技術大・金鎮慶総長は、学生たちに 《国際化時代にふさわしい夢を育て、どこででも主人公としての公的な態度で働き、 <私にも出来る、やれば出来る>という肯定的な意識で果敢に、真面目に努力し、感謝することができ、施すことができる生活をするために努力すれば、必ず志を果たすことが出来る》と鼓舞激励した。
--------引用以上--------
「延辺」という名前が出てきました。場所を確認しておきましょう。

上の記事に出てきた二人の人物、特に「金鎮慶」という名前で、ぴんと来る人は来たでしょうね。その通り、彼らは朝鮮族です。
朝鮮族は、中国国内にいながら朝鮮語を話し、ハングルを用い、朝鮮文化を継承している人々です。東北部を中心に200万人ほどいると言われています。特に延辺朝鮮人自治区では民族教育を独自に行っており、朝鮮語で教える大学(延辺大学)も存在するほどです。
朝鮮族の歴史は、清王朝が満州、すなわち今の東北部開発に着手し始めた19世紀末にさかのぼります。労働力が不足していたため、李氏朝鮮から移民を導入したのが始まりです。20世紀になると日本が経営する開拓事業の中で貴重な労働力とされ、日本領であった朝鮮からたくさんの朝鮮人が満州に移り住んだとされます。断っておきますが、強制連行はしていません(笑)。
日本が満州から撤退した後、この地を支配することになる中国共産党は、一応民族の自治を掲げていたこともあり、朝鮮人を自国内の少数民族と位置づけ、その自治を認めました。そういうわけもあって、今でも朝鮮族が独自の言語や文化を保持することができているのです。
しかし、皆さんこれ、何か違和感を感じませんか?
中国は独立国であったチベットを侵略して併合し、その後もデモを武力で鎮圧するなどの対応を行っています。また、宗教的背景の違う東トルキスタンに対しては強制断種や堕胎などを行っているのも知られています。
それなのに、なぜ朝鮮族にはこれほどまでに丁重な扱いをするのでしょうか?
最近私が気づいたのは、朝鮮族は「ある目的」のために生かされているのではないか、ということです。その目的とは、ズバリ、
「中国共産党による朝鮮半島併合の口実」
です。ここでいったん区切って、後半に続きます。
2007.10.06(Sat)
大地と水と人を殺す「バイオエタノール」は不要だ!!
あまりこの系統の記事を書いていなかったので、警鐘を鳴らす意味でも取り上げておきます。時間がないので、雑な文面になっているのはお許しください。
バイオエタノール新会社設立/組合員の理解得て推進【北海道】
http://sugar.lin.go.jp/japan/seisanchi/fs_0609b.htm
--------以下引用--------
JAグループ北海道は19日、バイオエタノールを製造販売する新会社を設立した。社長にはJA道中央会の飛田稔章副会長が就任した。農水省の実証事業で工場を建設し、普及を目指す。飛田社長は同日、本紙のインタビューに答え、同事業が行われる5年間の間に原料栽培から販売も含めた実証をするとともに、「国民のコンセンサス(合意)と組合員の理解を得ることが大きな目的」と決意を語った。
新会社の名称は「北海道バイオエタノール株式会社」。副社長にはホクレンの佐藤俊彰副会長、十勝地区農協組合長会の有塚利宣会長が就任。常務にホクレンの山田俊夫氏が就いた。
新会社は本店を札幌市に置き、工場を十勝管内清水町のホクレン清水製糖工場内に建設する。事業内容はバイオエタノールの製造販売、飼料や医薬品に活用できる副産物の調査研究、販売など。
工場の主要施設はエタノール生産や副産物処理、排水処理の施設など。工場の建設費用は概算で60億円、うち30億円が国の補助、24億円を公庫資金から、6億円を自己資金で充てる。運転資金は4億円で、自己資金で賄う計画。
プラント製造は、三菱商事が統括し、キリンビール、日立造船、日本化学機械製造が担当する。
■飛田社長に聞く/農地活用し再生産を
――エタノール製造に取り組む狙いは。
生産のなかで石油燃料を使う農業者として、エネルギー、地球環境問題に目を向けることは必要。北海道農業にとっては、農産物の需給バランスを調整して、農地の有効活用につながる。畑作では輪作体系を維持していくことが重要。組合員が意欲を持って生産できるよう、食用以外の需要を開拓する必要がある。農地を遊休化させずに活用する全体の取り組みのなかで、再生産が維持できる。
――社長としての抱負は。
今回の事業では、国民のコンセンサスと組合員の理解を得て進めることが重要。その上で、いかに低コストで製造し、販売できるかを課題を洗い出すことを含めて実証したい。この2点が5年間の大きな目的だ。私自身も組合員であり、その立場から事業の意義を発信していきたい。
国民へは、決して今の食料自給率を下げるものではないことを伝える。米国やブラジルなどのように食料用からエタノールに向けるものではない。
――新会社を立ち上げたのはどうしてですか。
責任の所在を明確にできる。今回の取り組みにはJAグループ北海道が農業をどう守っていくのかという狙いがある。そこに私が社長を引き受けた理由もある。
--------引用以上--------
要するに、「バイオエタノール」の生産を日本でも始めようという記事です。
エタノールはアルコールの一種です。理科室で使っているアルコールランプの中身です。メタノールは飲むと目の神経をやられて下手すると死にますが、エタノールは飲めます(笑)。
そのエタノールを、石油に代わる燃料にしようという方向性が、どうやら世界的に固まってきました。上の記事にあるように、アメリカとブラジルがその方向に向けて動き出しています。
一般的に言われることは、バイオエタノールは石油と違い、原料となる植物の成長の過程で空気中の二酸化炭素を固定し、それをエタノールに精製する(この段階では含まれている炭素原子の数は同じ)ので、空気中に新たな二酸化炭素を排出せずに済む、というものです(カーボン・ニュートラル性)。だから、地球温暖化対策になる、ということも言われます。●昨年よく売れた元米国副大統領の書いた本にもそういうことが書いてあり、我が国の知識人(たとえば●この人なんか)がほんの帯に推薦文を書いていました。
まあ、確かに何千年前に死んだ植物や動物の死骸(=石油)を引っ張り上げていちいち燃やすよりは、二酸化炭素の大気放出量は少なくて済みそうです。
しかし、私は現行のバイオエタノールの枠組みには絶対反対です。理由は以下の通りです。
▲バイオエタノールを作るための肥料はほとんどが化学肥料であり
(堆肥で大規模生産など無理)、その原料は石油
化学肥料を買う金がない国には、結局高嶺の花になってしまうというわけです。これでは、石油の時と何が違うのかわかりません。
▲バイオエタノールの原料を作るために淡水を大量に使用する
これが一番深刻な問題と言ってもいいでしょう。トウモロコシの最大の輸出国であるアメリカは、ただでさえすさまじいまでの地下水のくみ上げを行っており、その供給力がもはや限界に達しているからです。
地下水が枯渇――米国灌漑農業「危機」の深刻度
http://www.asyura2.com/0502/social1/msg/657.html
--------以下引用--------
グレートプレーンズと呼ばれて放置されていた半乾燥地帯が、地球上で最大規模というオガララ帯水層の地下水を利用した灌漑によって、大規模農業が盛んになったのは、第2次世界大戦後のことだ。揚水ポンプで汲み上げ、センターピボット方式(長大なスプリンクラーが円を描くように回って散水する灌漑のやり方)など自走式スプリンクラーでの灌漑が普及した。スプリンクラーは棒状で、円を描きながら散水するため、畑は四角ではなく円状になる。上空から見ると、畑は「緑の円」のように見える。その「緑の円」が何千何万にも増え、世界の一大食糧供給地になったのである。
(中略)
地下水は長年にわたって大量に汲み上げられ、食糧生産大国の米国を支えてきたといえる。登録された井戸は約13万基にのぼり、灌漑用にポンプで汲み上げた量は、49年と2000年を比較すると約5倍に増えたという。しかし、地下水位はここ半世紀の間に平均約30メートル下がるなど、オガララ帯水層の枯渇が危惧されている。とくに、テキサス州など南部での地下水位低下が大きいという。
もちろん、効率的な作物輪作や無駄の少ないスプリンクラーの開発など、対策が講じてられている。しかし、帰国後に読んだレスター・ブラウン米地球政策研究所理事長のコラムには、「目の前の食糧需要を満たすために灌漑用の水を汲み上げすぎると、やがては食糧生産の低下を招く」「現在の農民世代は、地下の帯水層の大規模な枯渇に直面する最初の世代でもある」と厳しい指摘があった。
(中略)
灌漑水は農地に撒かれると土の中に浸透し、やがて排水され、また川に戻っていく。そのときには土壌のミネラル塩層を透過しているので、排水には塩分が増える。米国西部の水資源開発を描いたマーク・ライナー『砂漠のキャデラック』(改訂版は93年刊、日本語版は99年刊)には、コロラド川から取水の際は塩分濃度が約200ppmだが、排水時は6500ppmになっていると記述があるほど、塩分濃度は高いようだ。
乾燥地を流れる河川水には塩分が多く、耕作に使い続けると農地に塩分が集積されていく。さらに、排水の仕組みを造らないで灌漑を続けると、作物に利用されなかった灌漑水が地下にたまり、地下水位が上がっていく。灌漑水が混じった地下水には土壌から溶けた塩分がすべて含まれており、作物の成長が阻まれてしまう。
(中略)
いうまでもなく、オガララ帯水層のことは米国にとって大問題であり、すでに公的私的レベルでいろいろな対策が取られつつある。しかし米国にとってこの処理は苦手で、手をこまねいているようにも見える。それはオガララの水は典型的なコモンズ(共有財)であるのに、一方で米国社会が基本的に個人の自由競争の市場原理を基本として成り立っているからという一面もあろう。
--------引用以上--------
●前回の記事でも少し触れましたが、大規模な農業生産や、その貿易というのはこういう水資源の濫用を前提に成り立っているわけです。
▲本来食糧として使えるものをわざわざ燃料にするロスの大きさ
エタノールの生成過程で使われる石油、水、労力などを考えても、そのまま小麦やトウモロコシとして食べた方が絶対にお得です。この程度のことにも想像が及ばない人は、ちょっと気をつけた方がいいかもしれません。
そういう人は「リサイクル」という仕組みに疑問を抱かない人なのかもしれません。牛乳パックを紙に戻すと資源の節約になるとか言われていますが、内側に張ってあるポリエチレンのフィルムをはがすのに薬品や人手を使っています。だから再生紙は高いのです。効率を上げるためには薬品を多く使ってはがしやすくするのですが、これが果たして「環境に優しい」のか疑問です。
バイオエタノールも、牛乳パックと同じだということです。空気中の二酸化炭素を増やさないなら何をやってもいいというわけではありません。
▲なぜか京都議定書に批准していない国が熱心
要するに、温暖化なんてどうでもいいと考えている国が、「バイオエタノール・スキーム」とも称すべき現在の流れを作り出しているということです。その国とは、アメリカとブラジルです。
ブラジルは二酸化炭素の削減を批准国に義務づける●京都議定書に加わることになっているとはいえ、2012年からの第二次計画に参加することを「約束」しているだけです。現在化学工業が隆盛し、BRICsの一角などともてはやされている「自称途上国」が、工業の発展に歯止めをかけるような真似をそう簡単にするとは思えません。
アメリカに至っては、2001年に一方的に京都議定書を脱退したわがまま極まりない国です。こんな国の元副大統領とやらが「北極の氷が溶ける危機です。バイオエタノールを推進しましょう」などと言い出して、信用する方が馬鹿でしょう。
その元副大統領、アル=ゴア氏についての面白い記事を紹介します。
ゴア「不都合な真実」発覚…電気代月16万
http://www.zakzak.co.jp/gei/2007_03/g2007030527.html
--------以下引用--------
地球温暖化防止への取り組みを訴えるドキュメンタリー映画「不都合な真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したアル・ゴア元副大統領に対し、地元の保守系シンクタンクが「自宅では大量の電気やガスを消費している」と地元電力会社から得たデータをホームページで公開、言行の一致しない「偽善者」と批判している。
このシンクタンクは「テネシー政策研究センター」で、同州ナッシュビルにあるゴア氏の邸宅では、昨年1年間で約22万1000キロワット時の電力が使われ、毎月の電気代は平均1359ドル(約16万円)に上ると暴露した。
これは米国の1世帯あらりの年平均電力消費量1万700キロワット時の20倍にあたる数字で、同センターのドリュー・ジョンソンズ代表は「邸宅には温水プールがあり、敷地内の車道に沿ってガス灯が設置されている。人に説いているような資源節約を家ではしていない」と指摘した。
--------引用以上--------
もちろん、このことは『不都合な真実』のどこにも書いていません(笑)。まあ、アメリカの金持ちの典型的なライフスタイルですね。
こんなのが日常茶飯事で、世界の二酸化炭素の4分の1を排出しているような国が環境保護などちゃんちゃらおかしいと思うのは私だけではないはずです。
そのアメリカが主導でバイオエタノールが市場ベースに乗ってきた理由は簡単です。中東の石油が割に合わなくなってきたから、今度はバイオエタノールで世界のエネルギー市場を支配しようと考えているのです。
アメリカのようなアングロサクソン人種(やそのバックにいるユダヤ人)の考え方というのは、みんなで決めたルールがあるからそれに従って調和を作ろう、というものではありません。自分に都合のいい枠組みを構築し、そのフォーマットを握って他国を支配するというのが彼らの典型的な思考様式です。
日本はいつもこういう「枠組み変更」でババを引かされる役のようです。
かつて日本は、アメリカやイギリスが作った「国際決済銀行(BIS)の自己資本比率変更」(参加する銀行の自己資本比率を4%から8%に引き上げ)というルールにまんまと乗っかり、自国経済を破滅に追い込んだことがあります。日本は長期の借入金を前提として銀行・信用金庫と企業が協調していくという慣行でいたのですが、銀行が自己資本比率の引き上げのために強引な債権回収に出て(いわゆる「貸しはがし」)、中小企業の破産とそれに続く中小規模の金融機関の破綻が相次ぎました。
ちょうどその頃「キャッシュフロー経営」などという、アメリカ生まれの概念がマスコミや経営者向けの指南書でもてはやされていました。
そういう外来のコンセプトを、何の疑いもなく吸収する・・・そこからして負けているのです。欧米生まれの枠組みや概念には、常に「フォーマットの把握による他国支配」という目的があるのだと思って警戒すべきです。
バイオエタノールの話も同じです。アメリカが、エネルギー分野で「枠組み変更」を仕掛けてきたのです。上記のBISの基準変更の時には「金融の自由化・グローバル化」が大義名分だったわけですが、今度はそれが「地球温暖化防止」になったというだけです。
北海道バイオエタノール社の場合は、あくまで規格外作物に限定してエタノールへの転換をはかるということですが、「農作物を(きわめて効率の悪い)エネルギーにする」という突破口ができてしまったわけです。
プラント製造に、三菱商事(典型的な国産グローバリスト。意味は●こちら参照)が絡んでいるのがそもそも怪しいですね。三菱グループはアメリカの大財閥ロックフェラーと関係が深いことでも知られています。バイオエタノールの始動で商品作物の値段が高騰して、ロックフェラー系列のカーギル社がかなりの利益を上げているようです。
いったい、誰のためのバイオエタノールなんだと言いたくなりませんかね?
もし、日本でバイオエネルギーを導入するとしたら、トウモロコシやサトウキビではなく、稲のわらや木くず、さらには原木そのものを原料とする「ソフトバイオマス」でなければなりません。
前にも紹介しましたが、アルコール自動車に取り組んでいるホンダと、RITE(地球環境産業技術研究機構)がこのソフトバイオマスの実用化を決定づける画期的発明をしました。
RITEとHonda、セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発
http://www.honda.co.jp/news/2006/c060914.html
--------以下引用--------
財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)とHondaの研究開発子会社である株式会社 本田技術研究所(以下Honda)は、植物由来の再生可能資源であるソフトバイオマスからエタノールを製造する技術に関する共同研究の成果を発表した。
バイオエタノールは燃焼時に放出されるCO2が、もともと植物が光合成により取り込んだもので、大気中のCO2総量に影響を与えない為、カーボンニュートラルな燃料として、地球温暖化対策に有効なエネルギー源として注目されている。
しかし、現在のバイオエタノール製造は、サトウキビやとうもろこしの糖質や澱粉質など食用と同じ部分を原料としているため、供給可能量に限りがある。
今回の共同研究では、これまで困難とされてきた、稲藁など、食用に供さない植物の茎や葉といった、ソフトバイオマスに含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立し、実用化へ大きなステップを踏み出した。
RITEの極めて高度なバイオ技術とHondaのエンジニアリング技術の融合により新たに開発されたRITE-Hondaプロセスは、セルロース類からのバイオエタノール製造に道を開き、大幅な増産を可能とするものである。
そのプロセスは、以下の各工程から成り立っている。
1)ソフトバイオマスからセルロース類を分離する前処理工程
2)セルロース類の糖化工程
3)微生物による糖からアルコールへの変換工程
4)アルコールを精製する後処理工程
既存の技術では、主にソフトバイオマスからセルロース類を分離する工程で副次的に生成される醗酵阻害物質が、糖をアルコールに変換する微生物の働きを妨げ、エタノールの収率が極めて低くなる。これが、ソフトバイオマスからのアルコール製造の大きな障害になっており、解決する策は今まで見出されていなかった。
微生物によって化学物質を製造するバイオプロセスの開発で世界的に著名なRITEは、従来技術に対し飛躍的に生産効率の高いRITEプロセスを確立、これまでもバイオエタノール製造関連を含む、多くの成果を発表してきた。
今回、RITEの開発した糖をアルコールに変換する微生物であるRITE菌を使い、Hondaのエンジニアリング技術を活用し、醗酵阻害物質による悪影響を大幅に減少させるRITE-Hondaプロセスの開発に成功、従来のセルロース系バイオエタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率を飛躍的に向上させることが可能となった。
このRITE-Hondaプロセスは、バイオエタノールの大幅な増産と利用の拡大を可能とし、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた大きな前進となる可能性を秘めている。
今回の成果により、ソストバイオマスからのエタノール製造に関して、基礎的な課題がすべて解決したこととなり、今後は、工業化に向けて研究を進め、現在は別々の処理で行っている4つの行程をひとつのプラント内で連携させるシステムの開発に取り組み、この連携システム内でのエネルギーリサイクルによる省エネルギー化と低コスト化を図る。
また、新しいバイオアルコール製造システムの社会適合性や経済性を検証するために、パイロット・プラントによる実証実験を計画している。
RITEとHondaは、これらの共同研究の成果を基盤として、将来はエタノールだけにとどまらず、バイオマスから自動車用材料を含むさまざまな産業用物質を生みだすバイオリファイナリーへの進化を目指し、持続可能な社会の実現に向けて、更なるCO2低減による地球温暖化防止に貢献していきたいと考えている。
--------引用以上--------
さらに、こういうバイオマス技術もあります。
「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表・2013年から実証事業開始
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/05/4002013.html
--------以下引用--------
農林水産省所轄の財団法人【東京水産振興会】の研究委員会(座長・酒匂敏次東海大名誉教授)は5月9日、バイオエタノールを海藻(かいそう)から大量に生産する構想を発表した。同振興会の調査研究委員会がまとめたという。
元記事によると海面に浮かべた網でアカモク(ホンダワラ科)やコンブなどの海藻を、海中に浮かせた巨大な網にタネや苗を植えて養殖し、工場も洋上に建造。その工場で海藻を材料としてバイオエタノールを生産するという。
この仕組みでは原材料の調達コストが現在バイオエタノールの主要材料であるとうもろこしやさとうきびなどの穀物と比べると安く、新たな技術開発も少ないため、ハードルは比較的低いとされている。また、食糧との競合も避けられるので、現在すでに影響が出ている価格全体の引き上げなど、食糧方面での悪影響も防げるメリットがある。
試算では日本の領海と排他的経済水域(EEZ)をあわせた海域約447万平方キロメートルのうち1~2%を用いるだけで年間1.5億トンの海藻を養殖でき、この海藻から400万~500万キロリットルのバイオエタノールが生産できるという。これは現在の日本国内のガソリン使用量の約1割にあたるとのこと。
当計画では2013年頃から実証事業を始めるべく各方面に働きかけをしており、漁業者や民間企業が事業主体になることを想定しているが、スタート時は国の事業とするように、国に働きかけるという。
--------引用以上--------
なぜここに北海道のエタノールと同じ三菱が絡んできているんだろうというのが疑問ですが、まあ研究所ですからたまたまそっちの方に研究が転がってしまったということでしょう。
上の引用にもあるように、できるだけ早く国が主体になって研究すべきですね。こういうものは初期段階では社会主義でやらないと軌道に乗りません。
どうせやるなら、こういうものに大量に金と人を投下しないと駄目です。
そうした上で、「大地も水も人も殺さない、やさしさで出来たバイオマス」として、その製造技術を発展途上国に伝授するのです。きっと、日本は素晴らしいと思う国が増えるでしょう。これに燃料電池技術が加われば完璧です。
ロシアが牛耳る天然ガス路線にも乗らず、アメリカ・ブラジル式の環境破壊エタノールにも追随せず、資源乞食の中国とは戦うレベルをずらし、なおかつ誰も不幸にしない仕組み・・・こういう新機軸を、日本人の手で世界に広めるのです。それこそが、アングロサクソンやランドパワー諸国に飲み込まれずに、日本が生き残る道です。
アメリカの後ろをくっついていけばうまく行く、(アメリカが作り出したアメリカに都合の良い)「世界の流れ」に乗り遅れないようにするなどという考えをしていてよい時代はもう終わっています。水、肥料、人件費、地力、全てにおいて無駄の固まりであるアメリカ流バイオエタノールなど、1ミリリットルでも作る必要はありません。
現在主流であるバイオエタノールは、商品作物(特に小麦とトウモロコシ)の高騰や、地下水のさらなる枯渇など、悪影響ばかりです。地球にきびしく、人間を不幸にするアメリカ流バイオエタノールなど、我々には必要ありません。
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バイオエタノール新会社設立/組合員の理解得て推進【北海道】
http://sugar.lin.go.jp/japan/seisanchi/fs_0609b.htm
--------以下引用--------
JAグループ北海道は19日、バイオエタノールを製造販売する新会社を設立した。社長にはJA道中央会の飛田稔章副会長が就任した。農水省の実証事業で工場を建設し、普及を目指す。飛田社長は同日、本紙のインタビューに答え、同事業が行われる5年間の間に原料栽培から販売も含めた実証をするとともに、「国民のコンセンサス(合意)と組合員の理解を得ることが大きな目的」と決意を語った。
新会社の名称は「北海道バイオエタノール株式会社」。副社長にはホクレンの佐藤俊彰副会長、十勝地区農協組合長会の有塚利宣会長が就任。常務にホクレンの山田俊夫氏が就いた。
新会社は本店を札幌市に置き、工場を十勝管内清水町のホクレン清水製糖工場内に建設する。事業内容はバイオエタノールの製造販売、飼料や医薬品に活用できる副産物の調査研究、販売など。
工場の主要施設はエタノール生産や副産物処理、排水処理の施設など。工場の建設費用は概算で60億円、うち30億円が国の補助、24億円を公庫資金から、6億円を自己資金で充てる。運転資金は4億円で、自己資金で賄う計画。
プラント製造は、三菱商事が統括し、キリンビール、日立造船、日本化学機械製造が担当する。
■飛田社長に聞く/農地活用し再生産を
――エタノール製造に取り組む狙いは。
生産のなかで石油燃料を使う農業者として、エネルギー、地球環境問題に目を向けることは必要。北海道農業にとっては、農産物の需給バランスを調整して、農地の有効活用につながる。畑作では輪作体系を維持していくことが重要。組合員が意欲を持って生産できるよう、食用以外の需要を開拓する必要がある。農地を遊休化させずに活用する全体の取り組みのなかで、再生産が維持できる。
――社長としての抱負は。
今回の事業では、国民のコンセンサスと組合員の理解を得て進めることが重要。その上で、いかに低コストで製造し、販売できるかを課題を洗い出すことを含めて実証したい。この2点が5年間の大きな目的だ。私自身も組合員であり、その立場から事業の意義を発信していきたい。
国民へは、決して今の食料自給率を下げるものではないことを伝える。米国やブラジルなどのように食料用からエタノールに向けるものではない。
――新会社を立ち上げたのはどうしてですか。
責任の所在を明確にできる。今回の取り組みにはJAグループ北海道が農業をどう守っていくのかという狙いがある。そこに私が社長を引き受けた理由もある。
--------引用以上--------
要するに、「バイオエタノール」の生産を日本でも始めようという記事です。
エタノールはアルコールの一種です。理科室で使っているアルコールランプの中身です。メタノールは飲むと目の神経をやられて下手すると死にますが、エタノールは飲めます(笑)。
そのエタノールを、石油に代わる燃料にしようという方向性が、どうやら世界的に固まってきました。上の記事にあるように、アメリカとブラジルがその方向に向けて動き出しています。
一般的に言われることは、バイオエタノールは石油と違い、原料となる植物の成長の過程で空気中の二酸化炭素を固定し、それをエタノールに精製する(この段階では含まれている炭素原子の数は同じ)ので、空気中に新たな二酸化炭素を排出せずに済む、というものです(カーボン・ニュートラル性)。だから、地球温暖化対策になる、ということも言われます。●昨年よく売れた元米国副大統領の書いた本にもそういうことが書いてあり、我が国の知識人(たとえば●この人なんか)がほんの帯に推薦文を書いていました。
まあ、確かに何千年前に死んだ植物や動物の死骸(=石油)を引っ張り上げていちいち燃やすよりは、二酸化炭素の大気放出量は少なくて済みそうです。
しかし、私は現行のバイオエタノールの枠組みには絶対反対です。理由は以下の通りです。
▲バイオエタノールを作るための肥料はほとんどが化学肥料であり
(堆肥で大規模生産など無理)、その原料は石油
化学肥料を買う金がない国には、結局高嶺の花になってしまうというわけです。これでは、石油の時と何が違うのかわかりません。
▲バイオエタノールの原料を作るために淡水を大量に使用する
これが一番深刻な問題と言ってもいいでしょう。トウモロコシの最大の輸出国であるアメリカは、ただでさえすさまじいまでの地下水のくみ上げを行っており、その供給力がもはや限界に達しているからです。
地下水が枯渇――米国灌漑農業「危機」の深刻度
http://www.asyura2.com/0502/social1/msg/657.html
--------以下引用--------
グレートプレーンズと呼ばれて放置されていた半乾燥地帯が、地球上で最大規模というオガララ帯水層の地下水を利用した灌漑によって、大規模農業が盛んになったのは、第2次世界大戦後のことだ。揚水ポンプで汲み上げ、センターピボット方式(長大なスプリンクラーが円を描くように回って散水する灌漑のやり方)など自走式スプリンクラーでの灌漑が普及した。スプリンクラーは棒状で、円を描きながら散水するため、畑は四角ではなく円状になる。上空から見ると、畑は「緑の円」のように見える。その「緑の円」が何千何万にも増え、世界の一大食糧供給地になったのである。
(中略)
地下水は長年にわたって大量に汲み上げられ、食糧生産大国の米国を支えてきたといえる。登録された井戸は約13万基にのぼり、灌漑用にポンプで汲み上げた量は、49年と2000年を比較すると約5倍に増えたという。しかし、地下水位はここ半世紀の間に平均約30メートル下がるなど、オガララ帯水層の枯渇が危惧されている。とくに、テキサス州など南部での地下水位低下が大きいという。
もちろん、効率的な作物輪作や無駄の少ないスプリンクラーの開発など、対策が講じてられている。しかし、帰国後に読んだレスター・ブラウン米地球政策研究所理事長のコラムには、「目の前の食糧需要を満たすために灌漑用の水を汲み上げすぎると、やがては食糧生産の低下を招く」「現在の農民世代は、地下の帯水層の大規模な枯渇に直面する最初の世代でもある」と厳しい指摘があった。
(中略)
灌漑水は農地に撒かれると土の中に浸透し、やがて排水され、また川に戻っていく。そのときには土壌のミネラル塩層を透過しているので、排水には塩分が増える。米国西部の水資源開発を描いたマーク・ライナー『砂漠のキャデラック』(改訂版は93年刊、日本語版は99年刊)には、コロラド川から取水の際は塩分濃度が約200ppmだが、排水時は6500ppmになっていると記述があるほど、塩分濃度は高いようだ。
乾燥地を流れる河川水には塩分が多く、耕作に使い続けると農地に塩分が集積されていく。さらに、排水の仕組みを造らないで灌漑を続けると、作物に利用されなかった灌漑水が地下にたまり、地下水位が上がっていく。灌漑水が混じった地下水には土壌から溶けた塩分がすべて含まれており、作物の成長が阻まれてしまう。
(中略)
いうまでもなく、オガララ帯水層のことは米国にとって大問題であり、すでに公的私的レベルでいろいろな対策が取られつつある。しかし米国にとってこの処理は苦手で、手をこまねいているようにも見える。それはオガララの水は典型的なコモンズ(共有財)であるのに、一方で米国社会が基本的に個人の自由競争の市場原理を基本として成り立っているからという一面もあろう。
--------引用以上--------
●前回の記事でも少し触れましたが、大規模な農業生産や、その貿易というのはこういう水資源の濫用を前提に成り立っているわけです。
▲本来食糧として使えるものをわざわざ燃料にするロスの大きさ
エタノールの生成過程で使われる石油、水、労力などを考えても、そのまま小麦やトウモロコシとして食べた方が絶対にお得です。この程度のことにも想像が及ばない人は、ちょっと気をつけた方がいいかもしれません。
そういう人は「リサイクル」という仕組みに疑問を抱かない人なのかもしれません。牛乳パックを紙に戻すと資源の節約になるとか言われていますが、内側に張ってあるポリエチレンのフィルムをはがすのに薬品や人手を使っています。だから再生紙は高いのです。効率を上げるためには薬品を多く使ってはがしやすくするのですが、これが果たして「環境に優しい」のか疑問です。
バイオエタノールも、牛乳パックと同じだということです。空気中の二酸化炭素を増やさないなら何をやってもいいというわけではありません。
▲なぜか京都議定書に批准していない国が熱心
要するに、温暖化なんてどうでもいいと考えている国が、「バイオエタノール・スキーム」とも称すべき現在の流れを作り出しているということです。その国とは、アメリカとブラジルです。
ブラジルは二酸化炭素の削減を批准国に義務づける●京都議定書に加わることになっているとはいえ、2012年からの第二次計画に参加することを「約束」しているだけです。現在化学工業が隆盛し、BRICsの一角などともてはやされている「自称途上国」が、工業の発展に歯止めをかけるような真似をそう簡単にするとは思えません。
アメリカに至っては、2001年に一方的に京都議定書を脱退したわがまま極まりない国です。こんな国の元副大統領とやらが「北極の氷が溶ける危機です。バイオエタノールを推進しましょう」などと言い出して、信用する方が馬鹿でしょう。
その元副大統領、アル=ゴア氏についての面白い記事を紹介します。
ゴア「不都合な真実」発覚…電気代月16万
http://www.zakzak.co.jp/gei/2007_03/g2007030527.html
--------以下引用--------
地球温暖化防止への取り組みを訴えるドキュメンタリー映画「不都合な真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したアル・ゴア元副大統領に対し、地元の保守系シンクタンクが「自宅では大量の電気やガスを消費している」と地元電力会社から得たデータをホームページで公開、言行の一致しない「偽善者」と批判している。
このシンクタンクは「テネシー政策研究センター」で、同州ナッシュビルにあるゴア氏の邸宅では、昨年1年間で約22万1000キロワット時の電力が使われ、毎月の電気代は平均1359ドル(約16万円)に上ると暴露した。
これは米国の1世帯あらりの年平均電力消費量1万700キロワット時の20倍にあたる数字で、同センターのドリュー・ジョンソンズ代表は「邸宅には温水プールがあり、敷地内の車道に沿ってガス灯が設置されている。人に説いているような資源節約を家ではしていない」と指摘した。
--------引用以上--------
もちろん、このことは『不都合な真実』のどこにも書いていません(笑)。まあ、アメリカの金持ちの典型的なライフスタイルですね。
こんなのが日常茶飯事で、世界の二酸化炭素の4分の1を排出しているような国が環境保護などちゃんちゃらおかしいと思うのは私だけではないはずです。
そのアメリカが主導でバイオエタノールが市場ベースに乗ってきた理由は簡単です。中東の石油が割に合わなくなってきたから、今度はバイオエタノールで世界のエネルギー市場を支配しようと考えているのです。
アメリカのようなアングロサクソン人種(やそのバックにいるユダヤ人)の考え方というのは、みんなで決めたルールがあるからそれに従って調和を作ろう、というものではありません。自分に都合のいい枠組みを構築し、そのフォーマットを握って他国を支配するというのが彼らの典型的な思考様式です。
日本はいつもこういう「枠組み変更」でババを引かされる役のようです。
かつて日本は、アメリカやイギリスが作った「国際決済銀行(BIS)の自己資本比率変更」(参加する銀行の自己資本比率を4%から8%に引き上げ)というルールにまんまと乗っかり、自国経済を破滅に追い込んだことがあります。日本は長期の借入金を前提として銀行・信用金庫と企業が協調していくという慣行でいたのですが、銀行が自己資本比率の引き上げのために強引な債権回収に出て(いわゆる「貸しはがし」)、中小企業の破産とそれに続く中小規模の金融機関の破綻が相次ぎました。
ちょうどその頃「キャッシュフロー経営」などという、アメリカ生まれの概念がマスコミや経営者向けの指南書でもてはやされていました。
そういう外来のコンセプトを、何の疑いもなく吸収する・・・そこからして負けているのです。欧米生まれの枠組みや概念には、常に「フォーマットの把握による他国支配」という目的があるのだと思って警戒すべきです。
バイオエタノールの話も同じです。アメリカが、エネルギー分野で「枠組み変更」を仕掛けてきたのです。上記のBISの基準変更の時には「金融の自由化・グローバル化」が大義名分だったわけですが、今度はそれが「地球温暖化防止」になったというだけです。
北海道バイオエタノール社の場合は、あくまで規格外作物に限定してエタノールへの転換をはかるということですが、「農作物を(きわめて効率の悪い)エネルギーにする」という突破口ができてしまったわけです。
プラント製造に、三菱商事(典型的な国産グローバリスト。意味は●こちら参照)が絡んでいるのがそもそも怪しいですね。三菱グループはアメリカの大財閥ロックフェラーと関係が深いことでも知られています。バイオエタノールの始動で商品作物の値段が高騰して、ロックフェラー系列のカーギル社がかなりの利益を上げているようです。
いったい、誰のためのバイオエタノールなんだと言いたくなりませんかね?
もし、日本でバイオエネルギーを導入するとしたら、トウモロコシやサトウキビではなく、稲のわらや木くず、さらには原木そのものを原料とする「ソフトバイオマス」でなければなりません。
前にも紹介しましたが、アルコール自動車に取り組んでいるホンダと、RITE(地球環境産業技術研究機構)がこのソフトバイオマスの実用化を決定づける画期的発明をしました。
RITEとHonda、セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発
http://www.honda.co.jp/news/2006/c060914.html
--------以下引用--------
財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)とHondaの研究開発子会社である株式会社 本田技術研究所(以下Honda)は、植物由来の再生可能資源であるソフトバイオマスからエタノールを製造する技術に関する共同研究の成果を発表した。
バイオエタノールは燃焼時に放出されるCO2が、もともと植物が光合成により取り込んだもので、大気中のCO2総量に影響を与えない為、カーボンニュートラルな燃料として、地球温暖化対策に有効なエネルギー源として注目されている。
しかし、現在のバイオエタノール製造は、サトウキビやとうもろこしの糖質や澱粉質など食用と同じ部分を原料としているため、供給可能量に限りがある。
今回の共同研究では、これまで困難とされてきた、稲藁など、食用に供さない植物の茎や葉といった、ソフトバイオマスに含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立し、実用化へ大きなステップを踏み出した。
RITEの極めて高度なバイオ技術とHondaのエンジニアリング技術の融合により新たに開発されたRITE-Hondaプロセスは、セルロース類からのバイオエタノール製造に道を開き、大幅な増産を可能とするものである。
そのプロセスは、以下の各工程から成り立っている。
1)ソフトバイオマスからセルロース類を分離する前処理工程
2)セルロース類の糖化工程
3)微生物による糖からアルコールへの変換工程
4)アルコールを精製する後処理工程
既存の技術では、主にソフトバイオマスからセルロース類を分離する工程で副次的に生成される醗酵阻害物質が、糖をアルコールに変換する微生物の働きを妨げ、エタノールの収率が極めて低くなる。これが、ソフトバイオマスからのアルコール製造の大きな障害になっており、解決する策は今まで見出されていなかった。
微生物によって化学物質を製造するバイオプロセスの開発で世界的に著名なRITEは、従来技術に対し飛躍的に生産効率の高いRITEプロセスを確立、これまでもバイオエタノール製造関連を含む、多くの成果を発表してきた。
今回、RITEの開発した糖をアルコールに変換する微生物であるRITE菌を使い、Hondaのエンジニアリング技術を活用し、醗酵阻害物質による悪影響を大幅に減少させるRITE-Hondaプロセスの開発に成功、従来のセルロース系バイオエタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率を飛躍的に向上させることが可能となった。
このRITE-Hondaプロセスは、バイオエタノールの大幅な増産と利用の拡大を可能とし、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた大きな前進となる可能性を秘めている。
今回の成果により、ソストバイオマスからのエタノール製造に関して、基礎的な課題がすべて解決したこととなり、今後は、工業化に向けて研究を進め、現在は別々の処理で行っている4つの行程をひとつのプラント内で連携させるシステムの開発に取り組み、この連携システム内でのエネルギーリサイクルによる省エネルギー化と低コスト化を図る。
また、新しいバイオアルコール製造システムの社会適合性や経済性を検証するために、パイロット・プラントによる実証実験を計画している。
RITEとHondaは、これらの共同研究の成果を基盤として、将来はエタノールだけにとどまらず、バイオマスから自動車用材料を含むさまざまな産業用物質を生みだすバイオリファイナリーへの進化を目指し、持続可能な社会の実現に向けて、更なるCO2低減による地球温暖化防止に貢献していきたいと考えている。
--------引用以上--------
さらに、こういうバイオマス技術もあります。
「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表・2013年から実証事業開始
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/05/4002013.html
--------以下引用--------
農林水産省所轄の財団法人【東京水産振興会】の研究委員会(座長・酒匂敏次東海大名誉教授)は5月9日、バイオエタノールを海藻(かいそう)から大量に生産する構想を発表した。同振興会の調査研究委員会がまとめたという。
元記事によると海面に浮かべた網でアカモク(ホンダワラ科)やコンブなどの海藻を、海中に浮かせた巨大な網にタネや苗を植えて養殖し、工場も洋上に建造。その工場で海藻を材料としてバイオエタノールを生産するという。
この仕組みでは原材料の調達コストが現在バイオエタノールの主要材料であるとうもろこしやさとうきびなどの穀物と比べると安く、新たな技術開発も少ないため、ハードルは比較的低いとされている。また、食糧との競合も避けられるので、現在すでに影響が出ている価格全体の引き上げなど、食糧方面での悪影響も防げるメリットがある。
試算では日本の領海と排他的経済水域(EEZ)をあわせた海域約447万平方キロメートルのうち1~2%を用いるだけで年間1.5億トンの海藻を養殖でき、この海藻から400万~500万キロリットルのバイオエタノールが生産できるという。これは現在の日本国内のガソリン使用量の約1割にあたるとのこと。
当計画では2013年頃から実証事業を始めるべく各方面に働きかけをしており、漁業者や民間企業が事業主体になることを想定しているが、スタート時は国の事業とするように、国に働きかけるという。
--------引用以上--------
なぜここに北海道のエタノールと同じ三菱が絡んできているんだろうというのが疑問ですが、まあ研究所ですからたまたまそっちの方に研究が転がってしまったということでしょう。
上の引用にもあるように、できるだけ早く国が主体になって研究すべきですね。こういうものは初期段階では社会主義でやらないと軌道に乗りません。
どうせやるなら、こういうものに大量に金と人を投下しないと駄目です。
そうした上で、「大地も水も人も殺さない、やさしさで出来たバイオマス」として、その製造技術を発展途上国に伝授するのです。きっと、日本は素晴らしいと思う国が増えるでしょう。これに燃料電池技術が加われば完璧です。
ロシアが牛耳る天然ガス路線にも乗らず、アメリカ・ブラジル式の環境破壊エタノールにも追随せず、資源乞食の中国とは戦うレベルをずらし、なおかつ誰も不幸にしない仕組み・・・こういう新機軸を、日本人の手で世界に広めるのです。それこそが、アングロサクソンやランドパワー諸国に飲み込まれずに、日本が生き残る道です。
アメリカの後ろをくっついていけばうまく行く、(アメリカが作り出したアメリカに都合の良い)「世界の流れ」に乗り遅れないようにするなどという考えをしていてよい時代はもう終わっています。水、肥料、人件費、地力、全てにおいて無駄の固まりであるアメリカ流バイオエタノールなど、1ミリリットルでも作る必要はありません。
現在主流であるバイオエタノールは、商品作物(特に小麦とトウモロコシ)の高騰や、地下水のさらなる枯渇など、悪影響ばかりです。地球にきびしく、人間を不幸にするアメリカ流バイオエタノールなど、我々には必要ありません。
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2007.10.03(Wed)
日本は「満州」の夢を捨てられるか(2)
前回記事●「日本は「満州」の夢を捨てられるか(1)」の続きです。
前回の最後に、中国東北部がヤバイ地域である要因として「水」と「朝鮮」を挙げましたが、今回は「水」について言及したいと思います。

水と言えば農業なので、まず東北部の農業の話を簡単にしてみましょう。
以前から、中国東北部は大豆、こうりゃん、粟といった雑穀の産地として知られました。私と同じ年代の人たちは地理の授業でそういう感じのことを習っているはずです。
しかし、「改革・解放」が提唱された後の東北部の農作物は様相が変化しています。黒竜江省を例に取ると、大豆はもちろんとして、トウモロコシや小麦のような重要なカロリー源の比率が大きくなってきました。昔はほとんどなかった水田も、いまや耕地面積の10%を占めるほどにまで広がっています。
そういう理由で、同省は「北大倉」(北の大穀倉地帯)とまで言われています。たとえば、以下のような記事があります。
「北大倉」2007年に穀物生産量375億キロを維持
http://www.people.ne.jp/2007/02/13/jp20070213_67844.html
--------以下引用--------
中国最大の穀物生産基地である黒竜江省の2007年における食糧作付け面積は150万ヘクタールとなり、普通の作柄なら、穀物生産量が375億キロに達し、穀物の優良率が90%となることを目指している。
中国最大の商品穀物生産基地である黒竜江省では、穀物の商品化率がすでに70%に達し、「北大倉」(中国北部における大きな穀物倉庫というたとえ)と高く評価されている。2004年いらい、中央政府と黒竜江省政府は農業税の免除、食糧作付けに対する直接補助金、優良種採用に対する補助金、農業用機械利用に対する補助金など、農民にメリットをもたらす政策を実行し、農民たちの生産意欲を引き出すことになった。2006年の黒竜江省の穀物生産総量は378億キロで、三年連続で増産の勢いを保ち続けた。
2007年、黒竜江省は標準化の生産政策を実施し、先進的な作付けの技術を広め、大型農業機械の役割を生かし、農業機械化のレベルを向上させ、干ばつを克服して播種を行い、苗の活着率を確保することに力を入れている。節水灌漑農業の発展を促し、良種の使用を広め、収量増加の潜在力を掘り起こすことに努めている。2007年において、黒竜江省の農業分野のハイテク利用耕地面積は延べ140万ヘクタールとなり、昨年同期比10万ヘクタール増となっている。省全体の穀物標準化率は90%を突破することを目指している。
--------引用以上--------
ずいぶんと景気のいいことが書いてあります。しかし、よく見ると、記者の良心なのか、
>普通の作柄なら
という条件がついています。
これが2月の記事だったわけですが、7月になるとこういう事態が起こります。
深刻な干ばつ、農地132万ヘクタール耕作不能=中国黒竜江省
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/07/html/d88350.html
--------以下引用--------
中国北部の干ばつの影響で、黒龍江省は今年に入ってから深刻な状況が続いている。すでに132万ヘクタールの農地が水不足のため耕作不能になり、農民の生活は苦しい状況に陥っている。
新華ネットによると、黒龍江省は6月に入ってから降雨量が少なく、高温が続いているため、すでに132万ヘクタールの農地が干ばつにより耕作不能になっている。地元各地では緊急措置を取っているが、最近はまとまった降水がないため、状況はさらに厳しくなるとみられる。
報道によると、6月上旬、中旬において、黒龍江省の降水量は極めて少なく、特に大慶市、ハルピン市および綏化市西部、チチハル市の一部県地方での降雨量は10ミリにも満たない。前年同期と比べて3~9割減となっている。また、南部地区の降雨量は、例年の4分の1にも満たないという。
一方、干ばつに加えて、高温も続いている。6月上旬、黒龍江省の平均気温は例年同期比2~5℃上昇しているという。報道では、黒龍江省水利庁干ばつ洪水予防対策弁公室の責任者の話を引用し、黒龍江省における今春の干ばつは例年と異なり、苗を植える時期に干ばつに当たったため、一般の対処法では効き目がなく、干ばつによる損失はさらに深刻になるとみられる。多くの農地は深刻な水不足のため、一部の苗はすでに枯れ始めたという。
これに対して、黒龍江省当局は毎日180万人を出動させ、5万8千台分の水車などの設備を使用して水を運んでおり、すでに1億8千万元(約27億7200万円)を費やしている。さらに、水対策のために、新たに6,898箇所の井戸を掘り起こした。
報道によると、3分の2の農地が干ばつの影響を受けているため、吉林地区はすでに2級干ばつ警報を発令した。また、遼寧地区においても、ここ30年間で最も深刻な干ばつであるため、気象局は干ばつ黄色警報(3段階のうち最低)を発令した。
統計によると、6月に入ってから、遼寧省では127万人および47万頭の家畜が飲用水不足に陥っており、88のダムが枯渇しているという。
--------引用以上--------
もともと中国東北部は非常に降水量が少ない地域です。黒竜江省の中心都市ハルピンでも年間降水量は550ミリ程度にしかなりません(日本の平均は1700ミリ)。
そういう土地でどのように農業をするのかというと、基本的に「灌漑」に頼るほかありません。水のあるところから引っ張ってくるということです。
灌漑にも二つの種類があって、川から引っ張ってくるものと、地下水を利用するものがあります。しかし、中国東北部の場合、このどちらともが非常に大きな問題を抱えています。
たとえば、アムール川(黒竜江)の支流である松花江などは、夏になって少し雨が降らないとすぐに水位が低下することで有名です。●こちらの記事に2001年の様子が出ていますが、川底が完全に見えてしまっています。今年の7月には流量が521立方メートル毎秒と、観測史上最低値を更新したそうです。
かと思えば、洪水を起こしたりします。●1998年の大洪水は有名です。要するに、流量が一定ではないのです。
この松花江の暴れっぷりの原因は、どうやら源流地域である「大興安嶺」地区の森林破壊にあるようです。
中国大興安嶺林区、16年後には「伐採不能林」に
http://www.enviroasia.info/news/news_detail.php3/C03091004J
--------以下引用--------
中国大興安嶺林区は、16年後には「生産ゼロ林」というやっかいな状態に陥ると見られている。関係専門家は、政府が速やかに森林資源の一斉調査を実施し、木材生産計画を調整して科学的に森林地域の木材生産量を定めて、天然林資源の持続可能な発展を実現させるよう提案している。
中国北部国境部に位置する大興安[山令]林区は、中国の天然林の主要分布地域の1つであり、1964年より材木基地として開発が始まり、1998年初めて天然林保護プロジェクトのテストが始まった。
「天然林保護プロジェクト」始動後、この地域に伐採制限が実施され、木材生産量は年々減っていった。しかし当地域の商品林は40年間に渡る過剰伐採で、採取可能な資源は既に限られており、現在の制限伐採の速度に照らしても、せいぜい16年間しか木材生産ができない。16年後、成長した林木も伐採の需要に応えられず、36年間の「生産ゼロ林」という状態を作り出してしまう。
天然林保護プロジェクトは5年以上に及ぶのに、なぜ当地域の伐採可能な天然林は減る一方なのか?専門家は、これは関連部門が当地域に割り当てた商品木材生産量と実際の生産量の差が大きく、持続可能な生産を不可能にしたものと見ており、改正は必須で、更に当地域の木材生産量を減らすべきだと提案している。
--------引用以上--------
>40年間に渡る過剰伐採
改革開放が始まるはるか昔です。現在の中国の抱える環境問題も、実はこういう風に、毛沢東の時代から種がまかれたものがたくさんあるのかもしれません。
大興安嶺地区は木材の一大生産地でもあり、中国東北部で経済発展をするとなれば、輸送コストの面から言っても需要が高まるのは間違いありません。しかし、これを切れば松花江はさらにコントロールが難しくなっていきます。
それなら、本流の黒竜江(アムール川)はどうなのかというと、こちらで水を大量に取り込んでしまうと非常にやっかいな問題が起こります。隣国ロシアとの国境になっているからです。
冬場には凍結してしまうアムール川ですが、それでもロシア極東の重要な水資源になっています。アムール州では、 極東地方の穀物の62%、肉の20%、動物性油の55%が同州で生産されているほどです。アムール川の水位が低下するような事態を、ロシアが座視するとは思えません。
では、地下水を利用すればいいのかというと、そういうわけにも行かないのです。
中国の農業用水の実に4割が地下水のくみ出しに依存していると言われています。当たり前のことですが、地下水のくみ出すペースが貯水されるペースよりも早ければ、地下水が枯渇していきます。
そのため、掘る井戸はどんどん深くなり、やがて「化石帯水層」と言われる氷河期の氷が溶けた時の水にも手をつけるようになっていきます。この化石帯水層に手をつけたら、もう後戻りはできません。
それに、地下水自体の汚染もかなり深刻なものがあります。以下の記事をご覧ください。
中国の都市の半数、地下水汚染が深刻・新華社
http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2007082803267n1
--------以下引用--------
中国の国家環境保護総局は、全国の約半数の都市で地下水の汚染が深刻になっていることを明らかにした。国営の新華社が伝えた。地下水は飲料用や工業用に使われており、人体や企業活動への影響が懸念される。開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会では「水汚染防止法」の修正案が審議されており、汚染抑制へ向けて罰則の強化などが決まる見込み。
--------引用以上--------
日経新聞の記事ですが、こんな記事を出しておく一方で「中国の発展は加速する」などという見出しの記事で国民をあおっているのですから、朝日新聞よりもよほどたちが悪いです。
まあ、それはともかくとして、上のような地下水の汚染について、中国東北部だけが例外だとはとてもとても思えません。
こんな状況で、満足な工業用水が確保できるわけがありません。
仮に、今の東北部の水事情でさらなる工業化を促進した場合、どのような問題が起こるか予測してみます。
まず、工業用水として大量の水が消費されるので、水資源はさらなる枯渇を生みます。松花江などの川からの灌漑や、地下水の汲み上げは増大し、その結果、農業用水の不足が顕著になります。
そうなると、中国国内でのトウモロコシや小麦、大豆の生産に決定的なダメージが生じるでしょう。当然農民は失業し、都市に流入します。これが犯罪の温床になるのは想像に難くありません。
それ以上に重大なのは、黒竜江省産の農作物の減産により、穀物価格が高騰することです。ただでさえ中国は穀物(特にトウモロコシ)を輸入している国です。間違いなく食料品の価格は暴騰するでしょう。庶民の懐にダメージを与えるのは間違いありません。
つまり、東北部に「水」というボトルネックがある限り、工業化をすることは無理なのです。日本人なら間違いなくやめるでしょうし、欧米人や朝鮮人でさえこんな開発はやめるでしょう。
しかし、中国は常に外国からの投資がなくては回っていかない国なのです。そのためには、なんとしても東北部を「次のホットスポット」に仕立て上げなくてはならないのです。
中国政府もまあ一応考えてはいるようで、東北部の開発の軸にはIT産業を持ってこようとしています。また、水資源の保全についても、あわてて植林をやったり、日本から環境保護の専門家を呼んで、土壌のアルカリ化を解消したり、いろいろ努力はしています。仮に、これらの努力が実ったとしましょう。
また、上記のような社会不安も、雇用対策やら、ありあまる外貨準備でアメリカやアルゼンチンの穀物を買いあさるやらでなんとか食い止めたとしましょう。
そんな中国の、北京五輪・上海万博以降の発展の希望の星である東北地方に注ぐ努力をいっぺんに破壊してしまいかねない厄介者が、東北部のすぐそばに存在しています。それが「朝鮮」です。
次回は、中国東北部を朝鮮との関係から見てみたいと思います。
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前回の最後に、中国東北部がヤバイ地域である要因として「水」と「朝鮮」を挙げましたが、今回は「水」について言及したいと思います。

水と言えば農業なので、まず東北部の農業の話を簡単にしてみましょう。
以前から、中国東北部は大豆、こうりゃん、粟といった雑穀の産地として知られました。私と同じ年代の人たちは地理の授業でそういう感じのことを習っているはずです。
しかし、「改革・解放」が提唱された後の東北部の農作物は様相が変化しています。黒竜江省を例に取ると、大豆はもちろんとして、トウモロコシや小麦のような重要なカロリー源の比率が大きくなってきました。昔はほとんどなかった水田も、いまや耕地面積の10%を占めるほどにまで広がっています。
そういう理由で、同省は「北大倉」(北の大穀倉地帯)とまで言われています。たとえば、以下のような記事があります。
「北大倉」2007年に穀物生産量375億キロを維持
http://www.people.ne.jp/2007/02/13/jp20070213_67844.html
--------以下引用--------
中国最大の穀物生産基地である黒竜江省の2007年における食糧作付け面積は150万ヘクタールとなり、普通の作柄なら、穀物生産量が375億キロに達し、穀物の優良率が90%となることを目指している。
中国最大の商品穀物生産基地である黒竜江省では、穀物の商品化率がすでに70%に達し、「北大倉」(中国北部における大きな穀物倉庫というたとえ)と高く評価されている。2004年いらい、中央政府と黒竜江省政府は農業税の免除、食糧作付けに対する直接補助金、優良種採用に対する補助金、農業用機械利用に対する補助金など、農民にメリットをもたらす政策を実行し、農民たちの生産意欲を引き出すことになった。2006年の黒竜江省の穀物生産総量は378億キロで、三年連続で増産の勢いを保ち続けた。
2007年、黒竜江省は標準化の生産政策を実施し、先進的な作付けの技術を広め、大型農業機械の役割を生かし、農業機械化のレベルを向上させ、干ばつを克服して播種を行い、苗の活着率を確保することに力を入れている。節水灌漑農業の発展を促し、良種の使用を広め、収量増加の潜在力を掘り起こすことに努めている。2007年において、黒竜江省の農業分野のハイテク利用耕地面積は延べ140万ヘクタールとなり、昨年同期比10万ヘクタール増となっている。省全体の穀物標準化率は90%を突破することを目指している。
--------引用以上--------
ずいぶんと景気のいいことが書いてあります。しかし、よく見ると、記者の良心なのか、
>普通の作柄なら
という条件がついています。
これが2月の記事だったわけですが、7月になるとこういう事態が起こります。
深刻な干ばつ、農地132万ヘクタール耕作不能=中国黒竜江省
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/07/html/d88350.html
--------以下引用--------
中国北部の干ばつの影響で、黒龍江省は今年に入ってから深刻な状況が続いている。すでに132万ヘクタールの農地が水不足のため耕作不能になり、農民の生活は苦しい状況に陥っている。
新華ネットによると、黒龍江省は6月に入ってから降雨量が少なく、高温が続いているため、すでに132万ヘクタールの農地が干ばつにより耕作不能になっている。地元各地では緊急措置を取っているが、最近はまとまった降水がないため、状況はさらに厳しくなるとみられる。
報道によると、6月上旬、中旬において、黒龍江省の降水量は極めて少なく、特に大慶市、ハルピン市および綏化市西部、チチハル市の一部県地方での降雨量は10ミリにも満たない。前年同期と比べて3~9割減となっている。また、南部地区の降雨量は、例年の4分の1にも満たないという。
一方、干ばつに加えて、高温も続いている。6月上旬、黒龍江省の平均気温は例年同期比2~5℃上昇しているという。報道では、黒龍江省水利庁干ばつ洪水予防対策弁公室の責任者の話を引用し、黒龍江省における今春の干ばつは例年と異なり、苗を植える時期に干ばつに当たったため、一般の対処法では効き目がなく、干ばつによる損失はさらに深刻になるとみられる。多くの農地は深刻な水不足のため、一部の苗はすでに枯れ始めたという。
これに対して、黒龍江省当局は毎日180万人を出動させ、5万8千台分の水車などの設備を使用して水を運んでおり、すでに1億8千万元(約27億7200万円)を費やしている。さらに、水対策のために、新たに6,898箇所の井戸を掘り起こした。
報道によると、3分の2の農地が干ばつの影響を受けているため、吉林地区はすでに2級干ばつ警報を発令した。また、遼寧地区においても、ここ30年間で最も深刻な干ばつであるため、気象局は干ばつ黄色警報(3段階のうち最低)を発令した。
統計によると、6月に入ってから、遼寧省では127万人および47万頭の家畜が飲用水不足に陥っており、88のダムが枯渇しているという。
--------引用以上--------
もともと中国東北部は非常に降水量が少ない地域です。黒竜江省の中心都市ハルピンでも年間降水量は550ミリ程度にしかなりません(日本の平均は1700ミリ)。
そういう土地でどのように農業をするのかというと、基本的に「灌漑」に頼るほかありません。水のあるところから引っ張ってくるということです。
灌漑にも二つの種類があって、川から引っ張ってくるものと、地下水を利用するものがあります。しかし、中国東北部の場合、このどちらともが非常に大きな問題を抱えています。
たとえば、アムール川(黒竜江)の支流である松花江などは、夏になって少し雨が降らないとすぐに水位が低下することで有名です。●こちらの記事に2001年の様子が出ていますが、川底が完全に見えてしまっています。今年の7月には流量が521立方メートル毎秒と、観測史上最低値を更新したそうです。
かと思えば、洪水を起こしたりします。●1998年の大洪水は有名です。要するに、流量が一定ではないのです。
この松花江の暴れっぷりの原因は、どうやら源流地域である「大興安嶺」地区の森林破壊にあるようです。
中国大興安嶺林区、16年後には「伐採不能林」に
http://www.enviroasia.info/news/news_detail.php3/C03091004J
--------以下引用--------
中国大興安嶺林区は、16年後には「生産ゼロ林」というやっかいな状態に陥ると見られている。関係専門家は、政府が速やかに森林資源の一斉調査を実施し、木材生産計画を調整して科学的に森林地域の木材生産量を定めて、天然林資源の持続可能な発展を実現させるよう提案している。
中国北部国境部に位置する大興安[山令]林区は、中国の天然林の主要分布地域の1つであり、1964年より材木基地として開発が始まり、1998年初めて天然林保護プロジェクトのテストが始まった。
「天然林保護プロジェクト」始動後、この地域に伐採制限が実施され、木材生産量は年々減っていった。しかし当地域の商品林は40年間に渡る過剰伐採で、採取可能な資源は既に限られており、現在の制限伐採の速度に照らしても、せいぜい16年間しか木材生産ができない。16年後、成長した林木も伐採の需要に応えられず、36年間の「生産ゼロ林」という状態を作り出してしまう。
天然林保護プロジェクトは5年以上に及ぶのに、なぜ当地域の伐採可能な天然林は減る一方なのか?専門家は、これは関連部門が当地域に割り当てた商品木材生産量と実際の生産量の差が大きく、持続可能な生産を不可能にしたものと見ており、改正は必須で、更に当地域の木材生産量を減らすべきだと提案している。
--------引用以上--------
>40年間に渡る過剰伐採
改革開放が始まるはるか昔です。現在の中国の抱える環境問題も、実はこういう風に、毛沢東の時代から種がまかれたものがたくさんあるのかもしれません。
大興安嶺地区は木材の一大生産地でもあり、中国東北部で経済発展をするとなれば、輸送コストの面から言っても需要が高まるのは間違いありません。しかし、これを切れば松花江はさらにコントロールが難しくなっていきます。
それなら、本流の黒竜江(アムール川)はどうなのかというと、こちらで水を大量に取り込んでしまうと非常にやっかいな問題が起こります。隣国ロシアとの国境になっているからです。
冬場には凍結してしまうアムール川ですが、それでもロシア極東の重要な水資源になっています。アムール州では、 極東地方の穀物の62%、肉の20%、動物性油の55%が同州で生産されているほどです。アムール川の水位が低下するような事態を、ロシアが座視するとは思えません。
では、地下水を利用すればいいのかというと、そういうわけにも行かないのです。
中国の農業用水の実に4割が地下水のくみ出しに依存していると言われています。当たり前のことですが、地下水のくみ出すペースが貯水されるペースよりも早ければ、地下水が枯渇していきます。
そのため、掘る井戸はどんどん深くなり、やがて「化石帯水層」と言われる氷河期の氷が溶けた時の水にも手をつけるようになっていきます。この化石帯水層に手をつけたら、もう後戻りはできません。
それに、地下水自体の汚染もかなり深刻なものがあります。以下の記事をご覧ください。
中国の都市の半数、地下水汚染が深刻・新華社
http://eco.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=2007082803267n1
--------以下引用--------
中国の国家環境保護総局は、全国の約半数の都市で地下水の汚染が深刻になっていることを明らかにした。国営の新華社が伝えた。地下水は飲料用や工業用に使われており、人体や企業活動への影響が懸念される。開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会では「水汚染防止法」の修正案が審議されており、汚染抑制へ向けて罰則の強化などが決まる見込み。
--------引用以上--------
日経新聞の記事ですが、こんな記事を出しておく一方で「中国の発展は加速する」などという見出しの記事で国民をあおっているのですから、朝日新聞よりもよほどたちが悪いです。
まあ、それはともかくとして、上のような地下水の汚染について、中国東北部だけが例外だとはとてもとても思えません。
こんな状況で、満足な工業用水が確保できるわけがありません。
仮に、今の東北部の水事情でさらなる工業化を促進した場合、どのような問題が起こるか予測してみます。
まず、工業用水として大量の水が消費されるので、水資源はさらなる枯渇を生みます。松花江などの川からの灌漑や、地下水の汲み上げは増大し、その結果、農業用水の不足が顕著になります。
そうなると、中国国内でのトウモロコシや小麦、大豆の生産に決定的なダメージが生じるでしょう。当然農民は失業し、都市に流入します。これが犯罪の温床になるのは想像に難くありません。
それ以上に重大なのは、黒竜江省産の農作物の減産により、穀物価格が高騰することです。ただでさえ中国は穀物(特にトウモロコシ)を輸入している国です。間違いなく食料品の価格は暴騰するでしょう。庶民の懐にダメージを与えるのは間違いありません。
つまり、東北部に「水」というボトルネックがある限り、工業化をすることは無理なのです。日本人なら間違いなくやめるでしょうし、欧米人や朝鮮人でさえこんな開発はやめるでしょう。
しかし、中国は常に外国からの投資がなくては回っていかない国なのです。そのためには、なんとしても東北部を「次のホットスポット」に仕立て上げなくてはならないのです。
中国政府もまあ一応考えてはいるようで、東北部の開発の軸にはIT産業を持ってこようとしています。また、水資源の保全についても、あわてて植林をやったり、日本から環境保護の専門家を呼んで、土壌のアルカリ化を解消したり、いろいろ努力はしています。仮に、これらの努力が実ったとしましょう。
また、上記のような社会不安も、雇用対策やら、ありあまる外貨準備でアメリカやアルゼンチンの穀物を買いあさるやらでなんとか食い止めたとしましょう。
そんな中国の、北京五輪・上海万博以降の発展の希望の星である東北地方に注ぐ努力をいっぺんに破壊してしまいかねない厄介者が、東北部のすぐそばに存在しています。それが「朝鮮」です。
次回は、中国東北部を朝鮮との関係から見てみたいと思います。
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2007.10.03(Wed)
日本は「満州」の夢を捨てられるか(1)
世間では来年の北京オリンピックのことがそろそろ話題に上り始めてきましたが、すでに中国の経済当局、そして海外の企業は北京オリンピック、および2010年の上海万博の後をにらんで動き始めているようです。
今回は、それらの動きを概観し、中国東北部を巡る地政学的な状況を確認してみたいと思います。
「2007中国リスク投資フォーラム」が瀋陽市で開幕
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/070922/12524.html
------------以下引用------------
「2007中国リスク投資フォーラム――東北投資振興サミット及び2007中国(東北)リスク資本・プロジェクトジョイント会」が20日、遼寧省瀋陽市で開幕した。
「中国リスク投資フォーラム」は、1998年に初めて開催され、これまでに9回開催されている。同フォーラムはまた、中国のリスク投資分野において、最も重要な活動の1つとなっている。昨年10月に同市で開催された「第1回中国リスク投資フォーラム――東北投資振興サミット」が成功したことにより、東北3省は対外開放、グローバル化、リスク投資及び個人株式投資に対する良好な環境を築き上げることができた。
今回のサミットで最も注目されるのは、「米マイクロソフト社のIP(知的財産)ライセンス、リスク投資家、ソフトウエア開発企業協力商談会」で、マイクロソフト社は今後、同社のソフトウエアIP技術とリスク投資基金を大量に東北のソフトウエア開発企業に提供することを予定している。このことは、東北地域のソフトウエア産業がマイクロソフトIP技術やリスク投資基金と結びつく絶好のチャンスとなる。
------------引用以上------------
[経済] 大連、東北アジアの国際航運センターに浮上
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news4/070921-4.htm
------------以下引用------------
最近、大連港は中心港に停泊場 56ヶ所を新たに増加し、港の建設に累計 240億元を投資、国際航運センターとしての発展要求にかなう現代化された港湾システムをほぼ構築した。
遼寧省政府によると、専門家たちの何回もの論証を経て、去る 8月 30日、国家発展改革委員会は遼寧省で研究制定した '大連東北アジア国際航運センター発展計画'を批准した。 これは国家で批准した最初の航運センター計画だ。
現在、大連東北アジア国際航運センターの建設は順調に進められている。大連港は続けて 30万トン級の原油埠頭、 30万トン級の鉱石埠頭、100万台の自動車物流埠頭、大窯湾コンテナ埠頭など国際的にも一流の埠頭を建設、埠頭の最大停泊能力を 15万トンから 30万トンに向上させ、港湾貨物通過能力を 1.1億トン新たに増加し、コンテナ通過能力を 134万標準ボックス新たに増加させた。 これは 2004年から 2006年までの 3年間に、大連港をもう一つ建設したことに匹敵する。
(中略)
専門家によれば、大連東北アジア国際航運センターの建設は、東北老工業基地開発水準の向上、遼寧省の '5点 1線'沿海経済ベルト開発、遼寧工業基地産業の最適化・グレードアップ、地域物流資源組合などに有益だ。
------------引用以上------------
「瀋陽」「大連」という、中国東北部の町の名前が出てきました。ここで、中国東北部の地理を確認しておきましょう。

瀋陽は以前「奉天」と言われていた町で、満州西部の要衝だった町です。日露戦争中、この町の郊外で大会戦が行われ、日本軍が勝利したことでも知られています。
大連は日本からも直行便が行っている町です。満州国建国のきっかけになった「南満州鉄道」の起点である旅順のすぐ脇にある、中国東北部の玄関口です。
中国は今この地域を経済発展の目玉として売り出そうとしています。それが「東北地区旧工業基地再開発」です。
●人民日報の2003年の記事ではすでにこの話題が取り上げられています。この頃にはもう北京オリンピック以後をにらんで外国からの投資を呼び込むつもりでいたのです。
今年になってからも、●この記事にあるように、中国政府が産業振興の目玉として売り出そうとしていることがよく伝わってきます。
中国が東北部振興にこだわる理由はいくつかあります。まず、一つが東北部、いわゆる「満州」が、戦前から一大工業地帯であり、十分な産業基盤が整っていることです。その産業基盤を開発したのは、何を隠そう我が国日本でした。
日本はもともとアメリカやドイツに比べて、利幅の大きい重工業分野が立ち後れていました。巨額の設備投資が必要な重工業の開発が日本でやりにくかった分、大陸でその埋め合わせをしたわけです。その現れが「満州国産業開発五カ年計画」でした。その中身はソ連を模した産業の国家統制で、策定に関わったのは戦後総理にもなった岸信介です。彼を中心とする若手官僚(いわゆる「革新官僚」)がここでの成功を日本でも試したのが国家総動員体制でした。
満州で産業開発を進めた主体は、「南満州鉄道会社(満鉄)」と「満州重工業株式会社」(満業)でした。
満鉄は当初から様々な産業開発を手がける、いわゆる「国策会社」でした。現在の中国でも大きな産業拠点である「撫順炭田」や「鞍山製鉄所」などは、満鉄が開発した事例です。これらの国策を慣れない土地で進めるための情報収集もさかんに行っており、満鉄の調査部は日本有数の(というか当時では唯一の)シンクタンクとして活動していました。
満業は日産コンツェルンを興した鮎川義介が作った国策企業です。後発組ですが、満鉄から譲り受けた製鉄会社や鉄道事業を手がけ、満州国内で資源から最終財の生産までを一貫して行う企業体として活発に活動しました。
満鉄のOBがその後の「国鉄」や広告代理店の「電通」に多く入社したことや、満業の母体となった日産や日立といった企業が戦後に大きく発展したことを考えると、我が国は満州国とは少なからぬ因縁を持っています。
満州は終戦間際にソ連の侵攻を受けました。その後これらの産業基盤はそっくりそのままソ連の盟友であった中国共産党に引き継がれます。彼らと国民党の内戦、すなわち「国共内戦」で毛沢東率いる共産党が勝利したのは、これが決定打になったと言われています。あの毛沢東も、「満州さえあれば国民党に勝てる」と豪語したほどです。中国の他の地域から見ても、産業力という点で隔絶していたことが伺えます。
中国が東北部振興にこだわるもう一つの理由は、すでに他の地域の発展が限界に達し始めているという事情です。
その要因はいくつかありますが、発展の中止であった華中・華南の沿岸部で、人件費や地価が急激に上昇していることがもっとも大きな要因です。外国企業や合弁企業の設立は上海やシェンチェンといった沿岸部より、それよりも少し内陸に入った安徽省などで活発になっています。もとも、内陸に入れば入ったで、今度は教育を受けた良質な労働力が不足するという事態を招きます。
中国経済は、「安いがそれなりに働く」ことが最大かつ唯一の売りですから、これは非常に痛いところです。
これに比べて、東北部というのは人件費が華中・華南の沿岸部に比べて安く、その割に教育程度も高い人材が多く存在しています。出稼ぎに伴う労働力移動で社会不安が高まったりするよりは、初めから質の高い人材が多いところを開発する方が合理的ではあります。
そういうことで中国は北京五輪以降の開発の目玉として東北部を売り出しているのですが、やはりというべきか、我が国の企業は早速この餌にダボハゼのごとく飛びついているようです。
昨年の中国・遼寧省投資の日系企業3300社、中国東北地区で投資規模を拡大
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/070921/12459.html
--------以下引用--------
中国・瀋陽で19日に開幕した「東北アジア地区発展・協力フォーラム」において、日本の対中投資が絶えず拡大している状況の下、中国政府による東北旧工業基地の振興戦略実施により、多くの日本企業が中国での投資規模を拡大していることが明らかになった。
日本の水野清・元建設大臣によると、2001年の中国WTO加盟後、第3次投資ブームが起こったという。中国で投資している日本企業は現時点で2万社を上回った。
水野元建設大臣は、「遼寧省を始め東北地区は鉄鋼や自動車、装備製造業、石油化学など各工業で『旧工業基地』として名高い。2006年末時点で遼寧省に投資する日本企業は3300社と、対中投資を行う日本企業全体の16.5%を占めた。東北振興戦略の発表後、これらの日本企業は軒並み、一層の事業発展を計画している」と述べた。
東北地区の豊富な日本語人材資源も、日中経済協力の促進に一役買っており、両国の絆を強めた。日本語人材育成の分野では、国際交流基金による日本語能力検定1級試験が全国の4分の1以上のエリアで行われており、日本貿易振興機構(JETRO)は、「BJTビジネス日本語能力テスト」を2005年から大連でもスタート、今年からは瀋陽でも実施される。
--------引用以上--------
ここです。ここに注目してください。
>東北地区の豊富な日本語人材資源
こういう特徴を生かしたうってつけの業種があるのです。
「中国コールセンター市場」
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/kokuko/shanghai/business/03/repo0303.htm
------------以下引用------------
中国のコールセンター市場は、電信や銀行、証券、電力など大企業がほとんどを占めている。Frost & SullivanとCTI Forumの共同レポートによると、 1998年頃からPBX(構内電話交換機)ベースの大型センターの導入が増加し始め、座席数(累計、以下同)でみると、 1998年の35,000席から2002年は116,000席と約3倍になった。2002年を業種別に見ると、電信が座席数で67.37%、投資額(累計、以下同)で44.8%を占め、トップの座にある。2位の銀行は座席数こそ7.84%と小さいものの、投資額は25.0%に達している。
2002年の市場規模は累計投資額で128億元。今年は新たに22.8億元の成長が見込まれている。コールセンター市場は1999年以前は電信により、それ以降はそれに銀行が加わって発展してきたものの、現在これらからの大型投資は一段落し、投資額成長率は縮小方向にある。一方で、証券・保険・政府部門・家電・通販・Eコマースなど新しい業界で小型システムの需要が伸びると予測されている。
(中略)
中国コールセンター市場で中小企業向けの事業を展開しているのが沖電気である。沖電気は日本のコールセンター市場でトップシェアを誇る CTI(電話とコンピュータの融合)システム「Ctstage 4i」の中国語版を発売開始した。このシステムは顧客窓口のほか営業部門にも対応でき、顧客データの共有化、管理などで力を発揮するという。ただし、このシステムは主に50席以下のコールセンターを対象としている。
一方TMJ(テレマーケティングジャパン)は昨年7月に上海に現地会社を設立し、12月に座席数250席のメガコールセンターを開業させた。 CRM(顧客情報マネジメント)分野で中国進出したのはTMJが初めてである。中国企業はCRMには興味持つものの、コールセンターの外部委託という概念が乏しく、今のところマーケットとしては日系・欧米企業がターゲットになっているという。
CSKは日本と大連の間に専用回線を引き、日本の消費者からの電話を大連のコールセンターに直接繋ぐ体制を整え、「CSKシステムズ大連」を設立した。大学や専門学校を卒業して日本語が話せる人材を数十人採用し、4月にも営業を始める。
同じく米デルコンピューターの日本法人は昨年末大連市に「アジア・サービスセンター」を設け、現地採用の約50人に日本語での接客マナーを教育している。製品の問い合わせなどをここで受ける予定で、完成後は川崎市にあるコールセンター業務の一部を大連に移す計画だという。
------------引用以上------------
知り合いから聞いたのですが、コールセンターを請け負っている某大手企業も大連進出を計画しているそうです。
確かに、電話回線があれば地球の裏側でも電話の受付はできるわけです。それに、顔を合わせるわけではないので、日本語でしゃべれれば問題なく仕事もできます。いわゆるBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)というやつで、インドがアメリカ相手にやった例があります。これを中国が日本相手にやろうとしているということです。
おいおい、じゃあ日本国内にあるコールセンターはどうするんだという声が聞こえてきそうですが、その問題はここでは置いておきます。
大連に日本語人材が多いというのは、例の南満州鉄道の関係で日本が早くから進出し、日本語の影響を受けた語彙が多く残っていることと、中国における日本語教育の中心「大連外国語学院」があることが大きいようです。大連にある学校というのはやはり大連、もしくは遼寧省の人間が多くなるものです。
このブログをご覧になっている方の中には、「多分ろろのことだから、この後はグローバリスト云々とかいうおきまりの話が来て、中国進出はやめろとか言い出すんだろうな」という感じで、話の筋を先読みされている人もいるかもしれません(笑)が、今回は違う方向へ飛びます(笑)。
ここまで見てきたみなさんの中で、鋭い人は疑問を持つかもしれませんね。
「中国東北部がそんなに有望な土地なら、なぜ今までほとんど手つかずで残ってきたんだ?」
全く以てその通りです。
実は、この地方は本来、産業振興なんて言っている余裕がないほどヤバイ地域なのです。
その原因をずばり挙げるとすれば、「水」と「朝鮮」です。
もしかしたら、このシリーズは長くなるかもしれません。とりあえず次回に続きます。
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