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2008.08.19(Tue)

シャッター商店街に若者を呼ぶには(福井・敦賀) 

  ●前回の記事の続きです。三方五湖から宿を取っている金沢までの帰り道にあたる敦賀(つるが)という町に立ち寄りました。
  敦賀の位置を確認しておきましょう。

       
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  北陸地方と近畿地方、日本海と琵琶湖をつなぐほんの僅かな平野に開けた町だということがお分かり頂けるでしょうか。昔から敦賀は交通の要衝として栄えてきた場所で、江戸時代の初期までは京都や大阪から、琵琶湖を経由して日本海に出る時必ず用いられた港でした。そして今も、北海道の苫小牧や、韓国の釜山(プサン)、ロシアのウラジオストクとの間に定期航路があり、重要な港であることに違いはありません。
  港町敦賀の風景をいくつかご覧下さい。

          気比神宮

  気比神宮(けひじんぐう)です。越前国一の宮(その国で一番格の高い神社)です。社務所が耐震診断にひっかかって、利用できなくなっているのが痛いところです。

               敦賀の町並み

  いかにも港町という感じの通りですね。ちなみに、カモメよりも、前回の記事でも触れた「トンビ」の姿が目立ちました。油揚げ、弁当と来て、今度は魚でも狙うのでしょうか。トンビが多いというのは、敦賀が三方を山に囲まれた地形だということと無縁ではないと思います。

          敦賀港付近

  こういうところは、いかにも港町という感じです。まだお盆というには少し早い時期でしたが、もう車はまばらでした。

          気比の松原

  日本三大松原の一つである「気比の松原」の一角です。公園になっていて、海水浴を楽しむことが出来ます。京都や大阪ナンバーの車がたくさん泊まっていました。

  敦賀駅の周辺も見てみましょう。駅前のロータリー(出口が一カ所しかない)から気比神宮の前を通り、フェリーターミナルまで至るのがこの町のメインストリートです。

          某若狭高校OBのお店

   関西在住の阪神ファンの方なら、●この人のご実家だとすぐにお分かりでしょう。ちなみに、彼が生まれたのは隣の美浜町です。

          空テナント1

          空テナント2

  地方都市の商店街でもうおなじみの光景になってしまった光景です。目抜き通りだというのに、テナントが入っていません。
  その代わり、人が来ているのはこういう場所です。

          平和堂敦賀店

  滋賀に本社を置き、関西や福井では有名な「平和堂」です。いわゆる大規模小売店舗で、1階にマクドナルドなど全国チェーンのテナントも入っています。結構な賑わいです。
  このブログのいつもの論調だと、「大店法を改正して、こういうでかい店をたたき出せ!」という感じになるのでしょうが、いろいろな町を回るにつれて、どうもそういう問題ではないという気もしてきました。
  私が明日から敦賀に住んだとして、駅前通の商店街に買い物に行くかというと、胸を張って「はい」と言える自信がありません。商店街にあるもので、平和堂にないものはほとんどないからです。ここに行けばとりあえず全て揃う、という店の存在は、やはり便利です。爪切りや縫い物の糸が欲しいというとき、商店街の中でそういう店を見つけるのは簡単ではありませんが、平和堂に行けば、ちゃんと案内表示があり、それでもダメなら店員さんに聞けば必ず見つかります。
  私は首都圏に住んでいて、世界の平均からすれば便利すぎる生活をしているからそう感じるのかも知れませんが、ならば地方に生まれたなら不便を享受しろ、などと言うこともできません。それこそ差別です。
  だからといって、どっかの馬鹿なブログのように、「シャッター商店街なんて潰れればいい」と言い切る気もありません。やはり、そこに生活している人がいるわけですし、駅や店舗というインフラがあるのですから、精一杯活用した方が経済的にもよいでしょう。

  そういうことは一応我が国の政府も考えているようで、●中心市街地活性化法(中活法)という法律が出来ています。
  しかし、冒頭にあるこの文言に、私はどうも違和感を禁じ得ません。

「この法律は、中心市街地が地域の経済及び社会の発展に果たす役割の重要性にかんがみ、近年における急速な少子高齢化の進展、消費生活の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上(以下「中心市街地の活性化」という。)を総合的かつ一体的に推進するため、中心市街地の活性化に関し、基本理念、政府による基本方針の策定、市町村による基本計画の作成及びその内閣総理大臣による認定、当該認定を受けた基本計画に基づく事業に対する特別の措置、中心市街地活性化本部の設置等について定め、もって地域の振興及び秩序ある整備を図り、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。 」(第1条)

  馬鹿な役人や識者が国民を脅すときの定番の殺し文句になりつつある「少子高齢化」がここでも使われています(少子高齢化という概念のいかがわしさは●こちらのリンクを見るとよくわかる)が、そういう問題なのかなという気がします。
  敦賀市もこの中心市街地活性化法の適用を受けてはいますが、人口が減っているわけではありませんし、世帯数は増え続けています。また、市内就業比率が91.4%とかなり高く、他の町に人を取られているわけでもありません(むしろ、周辺の郡部から人間を受け入れていると思われる)。町中を自転車で回った感じからしても、子供の数が少ないわけでもなさそうです。
  それにも関わらずシャッターの下りたままの店舗が多数見受けられるというのは、正直言って、消費者のニーズjに応えることができる店が少ないのではないか、ということです。
  では、そういうニーズに耐えることが出来るのは誰かといえば、やはり既存の店舗には難しいのではないかと思います。旧来からの商店主の方々は、比較的恒例の方が多いのが普通なので、今から昔ながらのやり方を変えろと言うのも難しいです。だから、活性化をしたいなら若い人(20代から、せめて40代まで)を集め、定着させるしかないでしょう。
  そういうとき、いつも思うのですが、若者が気軽に何かをスタートできる環境が、地方には非常に少ないのです。たとえば、若者が、敦賀の中心街に店を出したいとします。この場合、重要なのは住居と店舗の賃料です。自分の土地や建物を持っている若者などほとんどいるはずがありません。
  家賃の場合は、●敦賀市まちなか住居(すまい)る事業というもので補助が出ます。しかし、店舗はどうでしょう?店舗の敷金は一般にかなり高額です。売り上げがいくらになるかわからないまま権利金を取られる、高額の賃料も出す、こんな条件が重なれば、敦賀で店を開こうなどという若者が出てくるとはとても思えません。それならば、失敗してもアルバイトの口がたくさんある大阪や京都に出るというのが自然な流れです。
  どうせ中途半端な施策では人が集まらないのですから、思い切ってシャター商店街の店舗は権利金も賃料もタダにしてしまったらどうでしょう?そうすれば、失敗しても痛手がそれほどでもないので、とりあえずやってみようという若者や、新しい事業をやってみたいという脱サラ組が来る可能性が高くなります。それが、店舗兼住宅であればなおのこといいでしょう。
  家賃については行政が補助し、売り上げが出たらその何%かを徴収して建物のオーナーに還元すればいいのです。それでもダメなら、近くの農家(敦賀周辺にはコメ農家がたくさんある)で労務をする代わりに、コメや野菜をお駄賃としてもらえるような仕組みを作るのです。こうすれば、とりあえず生きてはいけます。●こちらのブログで書かれているような、現代のタコ部屋よりはずっと人間的でしょう。
  こうすれば、とにかく人がその場所で活動することになるので、ものやカネも少しは流れはじめます。人間は活気があるところに引きつけられますから、人がいることでますます客や住人も増えていくでしょう。
  最近、●民主党が農家への個別所得補償を打ち出しています。食糧自給率を上げて国家意思決定の自律性を高めるという点から、有効な政策だと思いますが、シャッター商店街で活動する人にもそういう仕組みができないものでしょうか?
  カネを配るのは無理にしても、農協で地元の農産物を購入できるクーポンを配るくらいはやってもいいのではないかと思います。そうすれば、東北や北陸なら、食うに困るということはなくなります。
  
  若者を呼びたいなら、せめてこのくらいはしてもらいたいものです。おためごかしでは何も変わりません。

  次回は、富山市内を回ったときの体験から記事を書きたいと思います。

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2008.08.19(Tue)

縄文記念館を訪ねて(福井・三方五湖) 

  先日、夏休みを利用して、北陸地方へ旅行に行きました。
  なにしろお金をあまり使いたくなかったもので、●米沢・山形に行った時と同様に、「青春18きっぷ」という学校の長期休暇中だけ使える切符を使って鉄道で移動しました。  私が住んでいる埼玉県某市から西武線で国分寺(東京都)まで出て、その後中央本線で山梨、長野を通り、日が暮れた頃に日本海側に出て、そのまま富山を経て、宿を取ってある金沢へたどり着きました。待ち時間も合わせて12時間です。その日はくたびれたので、そのまま寝てしまいました。

  翌日、朝6時に起きて北陸本線で福井に向かいます。今回の目的地は、●ラムサール条約登録地でもある「三方五湖」(みかたごこ)と、港町「敦賀市」です。
  福井県の地図をご覧下さい。

       
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  福井県は、江戸時代までの「若狭国」と「越前国」が一緒になってできた県です。今回向かった三方五湖は若狭、敦賀はギリギリ越前に当たります。
  三方五湖というのは、その名の通り5つの湖が集まった景勝地です。鉄道で最も近い「三方駅」まで向かい、そこから自転車です(私は折りたたみの自転車を持っています)。
  時間があまりなかったので全ては回れなかったのですが、その風景です。

            三方湖

  五つの湖のうち、最も南に位置する「三方湖」のものです。

            菅湖
  
  最も東にある久々子湖(くぐしこ)です。三方湖畔から、原発で有名な美浜の駅まで自転車で走る途中で撮影しました。
  季節が季節だけに、渡り鳥の姿はありませんでしたが、なかなか雄大な風景でした。ちなみに、久々子湖は汽水湖(海水と淡水が混ざった湖)なので、シジミがとれます。

  実は、この三方五湖の近くには、もう一つ興味深い史跡があります。それが鳥浜貝塚(とりはまかいづか)です(詳細は●こちらのリンクで)。
  貝塚というのは、縄文時代のゴミ捨て場で、文字通り海がたくさん捨ててあったことからそう呼ばれています。貝塚には人骨や当時の石器、土器なども見つかるので、ここを見ると縄文時代の人びとがどんな生活をしていたのかがわかります。
  三方湖の近くに、早速こんなものがありました。

                    縄文太郎?

  いくらなんでも、これは・・・●はじめ人間ギャートルズ(注:動画です)の見過ぎなんじゃないでしょうか(笑)。

  この像のある辺りから国道を西に向かうと、●若狭町立縄文記念館があります。
  入口は、こんな感じです。

            縄文記念館

  丘状になっている建物の上に土をかぶせて草を植えてあります。これは、貝塚というより古墳なんじゃ・・・というのは内緒です。
  この記念館の周りは、「縄文ロマンパーク」という公園になっていて、こういう「展示」があります。

            竪穴住居

  縄文時代の住居である「竪穴住居」です。
  私が笑ってしまったのは、これです。

            トンビに注意

  さっきのギャートルズ像のところで、私は生まれて初めて、トンビが6羽で群れになって遊んでいる光景を見ました。三方五湖の周りには里山がかなりたくさん残っているので、そこに生息しているのでしょう。首都圏ではまず見られない光景でした。
  しかし、鷹に劣るとはいえ、一応猛禽類ですから、弁当目当てに急降下されては洒落では済みませんね。

  さて、縄文記念館内は●こちらのリンクでご覧になれます。中でも、私の目を惹いたのは、縄文土器の展示でした。鳥浜貝塚で出たものだけでなく、日本各地で出土した土器を借りてきて展示しているコーナーがあるのです。

  ところで、みなさんは縄文土器というとどういうイメージをお持ちでしょうか。
  教科書でよく言われるのは、「縄の模様が入っていて、厚くてもろい。装飾が多く、あまり実用的ではない」という解説です。典型的なイメージは●こちらのブログ記事の画像でしょうか(ちなみに、こちらのブログ、●縄文と古代文明を探求しよう!は縄文時代を知るために非常の便利なブログです)。
  これに対して、後世の●弥生土器は、「模様がほとんど無く、薄くて硬い、実用的な土器」などと説明されることがあります。当然、現代の陶磁器に通じるのは、弥生土器の方だということになりそうです。
  しかし、こういう説明で分かったつもりになるほど、怖いものはないと身にしみて分かりました。私が展示物で見て衝撃的だったのは、縄文土器にも十分「薄くて実用的な土器」があるのです。
  どうも、教科書に書かれている歴史というのは、「縄文=原始的」で「弥生=先進的」という先入観に従って構成されているのではないか、と私には思えるのです。いつの時代でも、進歩するのは後の時代であるということを、国家は我々に教え込みたいのかも知れません。数々の殺戮とテロ行為で成立した明治時代が、あたかもそれ以前の時代より進歩的で素晴らしい時代だと思わせたいように・・・。
  ともかくも、教科書で教えられたことを鵜呑みにしているようでは、本当の歴史は分からないものだなと、自分の不勉強を痛感しました。学校で教わる歴史や、入試に出る歴史というのは、国家がこういうものだというガイドラインを作った歴史であり、そこからはみ出るものには、我々があえて目をこらさない限り光は当たりません。しかし、教える都合で端折ったり、近代国家にとって都合が悪かったりということで、ねじ曲げられている部分や、闇に葬られている部分はずいぶんあるのではないでしょうか。
  そういう、メインストリートから外れてしまった歴史に目を向けたくなったら、縄文記念館のような、郷土資料館に赴くといいのかもしれません。そういう場所に行けば、その土地に伝わる資料を徹底して集め、教育委員会や専門家が徹底的に検討した史料が残っています。強度の誇りに関わることなので、100%真実とは言えないにせよ、少なくとも何かの都合で省略されていない、生の歴史が味わえます。

  そういうところに来て、一つ心配になってしまうことがあります。

  若桜町は、三方町などいくつかの自治体が合併して出来た町です。そして、ご多分にもれず、こういうところでも「カイカク」と称する歳出削減が行われています。「若狭町集中カイカクプラン」というもので、●こちらのPDFに、どれだけの経費を削減するかまで具体的に掲げているほどです。

  こういうものが極限まで進むとどうなるでしょうか?結構立派な施設を備えている縄文記念館は、経費削減のために閉館、ということになったりはしないのでしょうか?
  もちろん、文部科学省からの補助がついてはいるのでしょう。しかし、国家の世話になるということは、国に都合の悪いことは言えなくなるということです。「縄文時代のような遅れた時代のことなど、教える必要はない」とか「古代史などそもそも不要だ。我が国の歴史は神武天皇から始まるのだから、石器時代などありえない」などという方針を国が打ち出したとしたら、補助も打ち切られることになるでしょう。
  私のような県外の人間がこんなことを言うのはなんですが、縄文記念館のような「ほんとうの歴史」を伝えていくための場所は、規模が小さくなったとしても、絶対に残してほしいものです。
  鳥浜貝塚では、多数の丸木舟が出土しています。かつてここにいた我々の祖先が、三方五湖の自然の恵みである魚介類を生活の糧にしていたということです。また、この貝塚からは漆器や織物も出土していて、縄文人の文化程度が決して低くなかったことが実証されています。
  なによりも、この貝塚からは、「矢尻」だとか「鉄剣」だとかいう、人を殺すためだけに作られた道具が一つも出土していないのです。弥生時代の遺跡といえば、「矢尻が刺さった死体」が定番になっているのと大違いです。たとえ、便利な金属器がなくても、人間同士が協調し合い、生命の母たる海から切り離された陸上という苛烈な環境で、自然の脅威と折り合いをつけながら平和に暮らしていた時代、それが縄文時代なのです。
  今後、近代文明が行き詰まった時、そんな調和に満ちた時代を「思い出す」必要が必ず出てくるでしょう。この役割は、近代国家に任せることはできません。近代国家が、自分のアイデンティティーである近代化を否定するような問題提起わけがないからです。だからこそ、地方の郷土資料館のような場所に、縄文時代の文明の証が残っていることが重要なのです。
  若狭町民の方々、福井県民に方々には、今後も縄文記念館や、ギャートルズ像(笑)を大切にしていってもらいたいと思っています。

  次回は、敦賀に行った時の話を簡単にまとめます。

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2008.06.23(Mon)

広島で見かけたこんなもの 

  昨日の夜まで広島にいたのですが、当地で面白いものを見ました。以下の画像をご覧ください。

ポスタルローソン1ポスタルローソン2

  どうも「ポスタルローソン」という形で、郵政公社の時代からモデル事業になっているようです。

ローソン、無線LANが利用できる郵便局内店舗「ポスタルローソン」
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/2030.html
--------以下引用--------
ローソンは、郵便局内で24時間利用できるコンビニエンス店舗「ポスタルローソン」をオープンする。第1号店は東京都渋谷区の代々木郵便局内で、8月5日よりオープン予定。無料で無線LANによるインターネット接続サービスも提供される。

 ポスタルローソンは日本郵政公社との業務提携のもと、郵便局内でコンビニエンスストア店舗を設置するサービス。第1号店となる代々木店は8月5日9時よりオープン、封筒や便箋といった郵便関連商品を充実させるほか、CDの視聴サービス、電子図書閲覧サービスなども利用できる。

 無線LANは、メルコが主幹事を務めるFREESPOTが導入され、IEEE 802.11bに準拠した無線LANサービスを無料で利用できる。ポスタルローソン第2号店は青葉台郵便局内で8月26日オープン予定で、こちらもFREESPOTが導入される予定だという。
--------引用以上--------

  つい最近まで東京に住んでいたのに、こんなのがあるなんて知りませんでした。

>無料で無線LANによるインターネット接続サービスも提供される。

  郵便局にノートパソコンを持参し、無線LANを設定することができて、インターネットを利用するほど長い待ち時間がかかるお客・・・一日に2~3人来れば上出来なんじゃないでしょうか。そんなサービスをする必然性を何も感じません。
  ローソンの株主の皆さん、減益の原因になるので、こういうのは株主総会できっちり追及した方がいいんじゃないでしょうか?(笑)

  ところで、「郵便局がコンビニエンスストアもやったりして便利になる」というのは、郵政ミンエーカを至上命題にしていた小泉元首相や、彼のブレーンだった竹中元大臣が、ことあるごとに主張していたことでした。確かに、ドイツやイタリアの郵便局に行くと、お菓子とか飲み物とか文房具が一緒に売っていたりします。
  しかし、実際見てみると、どうもそういうイメージではないようです。第1号である代々木郵便局にしろ、私が見た郵便局(広島東郵便局)にしろ、いわゆる「普通郵便局」であり、比較的規模が大きい局舎を持っていて、その一角にローソンが入り込むという形になっているのです。

  ところで、その広島東郵便局って一体どこにあるんでしょうか?

  実は、これ、JR広島駅の真ん前にある郵便局なのです。言うなれば一等地です。郵便局が閉まっても、局舎に間借りしているローソンにはたくさんの人がいました。そりゃそうでしょう。広島駅前というのは超一等地、東京で言えば、新宿駅東口や東京駅八重洲口のようなものです。
  そこにあった郵便局は、ローソンが出店するということで、仕事場の面積をかなり削られています。つまり、本来の事業である郵便のサービスの低下につながっている可能性があるわけです。もちろん、郵政公社は「余裕のあるスペースを貸し出している」と言っていますが、そんなのは何とでも言えます。
  普通郵便局がある場所は、立地条件はかなりいい場所です。そうなると結局、条件のいい場所に優先的に出店することができるローソンが一番得をしていると言えそうです。
  では、なぜローソンだけがそういうことを許されているのかというと、ローソンが一番素晴らしいコンビニだからでも、郵政事業を邪魔しないように配慮しているからでもありません。はっきり言うと「コネ」です。
  以下のリンクのタイトルを見ただけで、裏がわかります。

ザ・アールの奥谷禮子社長(ローソン取締役)、「過労死は自己管理の問題」
http://blog.goo.ne.jp/keitaro-/e/de76e61c1009bfbab9f2dc791aaa78aa
--------以下引用--------
人材派遣企業、ザ・アールの奥谷禮子社長が「週刊東洋経済」最新号で、
労働者の過労死などをめぐる労働環境について、労働者側に問題があるという見解を示した。

 これは9日発売の「週刊東洋経済」2007年1月13日号に掲載されたもので、
奥谷氏はインタビューの中で、「格差社会と言いますけれど、格差なんて当然出てきます。
仕方がないでしょう、能力には差があるのだから」「下流社会だの何だの、言葉遊びですよ。
そう言って甘やかすのはいかがなものか」と、労働者の収入格差を是認した。

 また、過労死問題について、「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。
過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います。ボクシングの選手と一緒」と
独自の見解を述べた上で、「自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、
そんなことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されないと休みも取れない。
揚げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい。ハッキリ言って、何でもお上に決めてもらわないと
できないという、今までの風土がおかしい」と、労働者側に問題があるという考えを示した。

 さらに同氏は労働基準監督署が不要であると述べ、「「残業が多すぎる、不当だ」と思えば、
労働者が訴えれば民法で済むことじゃないですか。労使間でパッと解決できるような裁判所を
つくればいい」と私案を披露した。

 同氏は、日本航空退社後82年にザ・アールを設立。女性初の経済同友会会員として注目を集め、
現在同社社長のほか、ローソンや日本郵政の社外取締役を務める。
--------引用以上--------

郵政公社から7億円受注
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-03-18/2007031815_01_0.html
--------以下引用--------
人材派遣会社「ザ・アール」の奥谷禮子社長が郵政民営化後の持ち株会社、「日本郵政株式会社」の社外取締役という公職につきながら、「ザ・アール」が日本郵政公社の仕事をこの四年間で七億円近くも受注しているという関係がわかりました。

 これは、日本共産党の吉井英勝衆院議員の資料要求に対して、日本郵政公社が「ザ・アール」との契約実績を明らかにしたもの。

 それによると、「ザ・アール」は、二〇〇三年四月一日からことしの二月二十三日までの間、日本郵政公社との間で三十五件、約六億八千三百六十万円にのぼる契約をしています。

 主な契約事業は「郵便事業における接遇・マナー向上プログラム実施の委託」(三千八百二十五万円)、「かんぽ営業スペシャリスト養成研修の委託」(千四百八十万円)、「郵便貯金関係職員に対する電話応対スキル向上研修及び郵便貯金地域センターにおける電話応対調査に関する事務委託」(八百十五万円)などです。

(中略)

 日本郵政株式会社の社外取締役は、奥谷氏のほか四人で、奥田碩・トヨタ自動車相談役(日本経団連前会長)、牛尾治朗・ウシオ電機会長(経済同友会元代表幹事)、西岡喬・三菱重工業会長、丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長といずれも財界の大物です。

 奥谷氏は厚生労働相の諮問機関「労働政策審議会」の労働条件分科会委員として、「過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います」(『週刊東洋経済』一月十三日号)と発言。その発言が国会でも取り上げられ、大問題になっています。
--------引用以上--------

  共通して出てくる「奥谷禮子」という人物は、経済同友会の会員で、厚生労働省の「労働政策審議会」の委員も務めていました。ちなみに、彼女を委員に選んだときの政権担当者は、小泉純一郎です。  
  奥谷という人物は「ザ・アール」という人材派遣会社を経営しているらしいのですが、この会社は株式非公開企業です。株主構成、財務諸表、売上、経常利益、決算短信、決算内容、第三者割当の増資者などを公開していません。どう考えてもまともな企業とは思えません。
  もう分かりますね。要するに、「ミンエーカ」だとか「カイカク」だとか言われているものは、ホリエモンだとか、この奥谷だとかいうような、得体の知れない「新興企業家」に対して利権を付け替える作業だったということなのです。そして、そのとき、狙われたのが、郵便局のように「無駄のかたまり」である公営企業だったというわけです。

  そもそも公営企業というのは、営利企業がやりたがらない分野を担当するために作られたものであり、赤字運営を余儀なくされる運命なのです。それに黒字経営をしろ、というのは、葬儀屋に向かって「人の命を商売道具にするとは何事だ」と非難するようなものです。
  しかも、郵便局の場合は、郵便貯金や簡保の運用益で郵便の赤字を穴埋めして、全国を一体化したサービスを提供することができていました。それをいちいちバラバラにして、郵貯や簡保の巨額の資金だけは内外の金融資本に運用権を与えてしまったわけです。簡易局を閉鎖したり、集配局を高知県東部で1局だけにしたりしなければ「黒字」になるわけがありません。
  それでも、郵貯の資金が民間の設備投資に用いられるという、ミンエーカ賛成派の主張が本当だったら救いがあるのですが、いまだに設備投資額が急増したという話を聞きません。「民間に郵貯のカネが流れて景気がよくなる!」と力説していた或るブログ管理人にこれを聞いてみたのですが、こんどは財政投融資がなんだのと言い始めて、まともに答えてくれませんでした(笑)。どうせ、それもデマでしょう。

  ●以前の記事でも述べましたが、郵便がミンエーカしても、料金は下がらない(どころか上がっている)、遅配は増える、簡易局は閉鎖される、というのが現状なのです。しかも、さんざん言っていた「郵便局がコンビニみたいになって便利になる」という主張は、ローソンが儲かる場所に出店しただけ。

  こんなことを「殺されてもやる」と言っていた人間は、ただのアホだと思うのは私だけでしょうか?

  ・・・旅行のことを書こうと思ったら、いつの間にか政治的色彩を帯びてしまいました。すみません(笑)。今日はこの辺で終わりにしておきます。
  
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2008.05.07(Wed)

「田沢湖線」に乗って思ったこと(秋田県) 

  先日、東北地方に旅行した時のことで少し書いてみます。

  連休中は休みなので、どこか旅行に行こうと思っていました。そういえば、青森と秋田には行ったことがなかったので、この際脚を伸ばしてみようということになったのです。
  秋田方面に鉄道で行く場合、●秋田・大館フリーきっぷというものが役に立ちます。28100円(大人)で行き帰りの新幹線を利用でき、秋田県全域と青森県津軽地方のJR線が7日間乗り降り自由になるのです。

  さて、下りの秋田新幹線の指定席券を取ったはいいのですが、前日から右脚の付け根にゴリゴリとした違和感を感じるようになってしまいました。これでは、思うように旅行が楽しめません。そこで、出発を1日遅らせて、なじみの接骨院で治療してもらうことにしました。
  どうもリンパ腺のところに凝りが溜まっていたようで、施術を受けたら楽になりました。一時は旅行を断念しようとさえ思ったのですが、これなら行けると思い、出かけることに決めました。
  ところが、すでに新幹線の指定席を変更できなくなってしまいました。キャンセルを忘れたので、「指定席に乗った」ことになってしまっているわけです。自由席に乗っていこうにも、秋田新幹線は全席指定なのです。
  盛岡からの指定席+特急券を改めて買うのも馬鹿馬鹿しいので、盛岡まで行く「やまびこ」(停車駅が八戸・秋田行きよりも多い)という新幹線の自由席に乗って岩手県の盛岡まで行き、盛岡から「田沢湖線」(盛岡→秋田県の田沢湖→大曲)という在来線に乗って秋田へ向かうことにしました。(以下は、田沢湖を中心にした地図)

田沢湖の位置


  ここで、ビックリしたことがあります。

  みなさんも、よろしければ●こちらの田沢湖線の時刻表を見て、「大曲行き」というチェックボックスをクリックして、絞り込み検索をやってみてください。

  なんと、大曲まで行く列車は一日3本、朝5時の次は午後2時までありません。

  まあ、上の地図を見ればわかるのですが、田沢湖という観光地自体、奥羽山脈のど真ん中にあるような所で、そこを境に秋田と岩手が分断されていると思えば、東西に横断する必要はそれほどないのかもしれません。(実際に行くと分かるが、岩手県から田沢湖に抜ける辺りはかなり険しい山地である)
  それに、田沢湖線には「秋田新幹線」も通っています。在来線の線路を利用したミニ新幹線なので、完全に田沢湖線と同じレールを走っているのです。普通列車vs新幹線では、当然ながら新幹線の方が優先します。私が14:10盛岡発の田沢湖線に乗って行く間、すれ違い可能な駅で10分待たされるのはザラ、長いと25分くらいすれ違いのために待たされました。追い越しとすれ違いを含めると、多分6~7回新幹線とご対面した気がします。
  これでは、どっちが「田沢湖線」なのか、わかったものではありません(笑)。

  その盛岡発の普通列車の乗客を見ると、ご老人と高校生ばかりで、成人は私のような旅行者しかいませんでした。田沢湖駅で時刻表を見てみると、朝の通勤通学のためにか、一応盛岡まで行く電車は朝に2本だけあるようです。しかし、帰りは今見たような感じです。
  おそらく、盛岡方面に通勤する人たちは、みんな車を使っているのでしょう。これでは、公共交通機関とはとても言えません。新幹線で通勤するといっても、金銭面や指定席を取る手間のことを考えると、とてもあれを毎日利用するわけにはいかないでしょう。
  
  なんでそんなに田沢湖線が不便で、新幹線はバンバン通るかといえば、その方がJR東日本にとって利益が出るからです。
  ●前の記事でも書きましたが、JRは株式会社なので、利益を上げなければなりません。新幹線を通すと財務的な負担が大きくなるだけでなく、その地域を通っている在来線の利用者が減るので、その不採算路線の経営を手放そうとします(いわゆる「経営分離」)。
  これによって大幅に運賃が上がったり、ひどい場合は廃線に至ったりするわけですが、これによって沿線住民の交通手段が著しく制約される結果になるわけです。
  その原因はいろいろあるのですが、●前回の記事でも触れたように、高度成長期以降、公共事業として行われた道路整備で、自動車の利便性が圧倒的に向上したことがよく取りざたされます。
  しかし、これはいわば「卵と鶏のどちらが先か」という問題とも似ています。以前は列車の間引きがそれほどでもなかったのに、国鉄からJRになってから、赤字を減らすために急激に列車本数が減り、それが不便だから自動車での移動に切り替えたという人もかなりたくさんいるはずです。
  こういうことを書くと、「田舎は渋滞も少ないし、車があればいいじゃないか」という人がいますが、あまり良い意見だとは思えません。
  なぜなら、一概に鉄道より自動車の方が便利だとか有利だとか言えないからです。以下がその理由です。

  ▲自動車のガソリンは基本的に自己負担なので、燃料費の高騰がもろに響く
  ▲冬場はチェーンを巻く手間がかかり、事故の確率も鉄道とは比較にならないくらい高まる
  ▲県庁所在地や地方の中心都市になると、朝夕はすごい渋滞になる
  ▲高校生や身体の不自由な人、色盲や弱視の人、お年寄りには利用できない
  ▲自動車には購入や駐車にお金がかかるので、お金に余裕がない人には持つだけで負担


  一方、鉄道には、

  ▲決まった時間に駅に行かないといけない (車はスピード違反をすればいいのか?)
  ▲駅まで遠い人には利用が困難 (バスや自転車を利用すればいい)
  ▲本数がそもそも少ない (多ければ利用するんだよな?)
  ▲時間がかかる (だから車ならスピード違反をしてもいいのか?)
  ▲列車事故が起こると確実に死ぬ (年間何件起こってるんだ?)
  ▲電車は電気を、気動車は軽油を浪費する (自家用車と比べものにならない)
  ▲雨や雪の日に利用しづらい (その代わり車での事故の確率が高まる)


  という程度しか不利益がありません。自動車の不利な点が克服困難なものばかりなのに対して、こちらはそれほど深刻なものがないということです。

  車があればいいだろう、と言ってすませる人は、多分東京やその周辺のことしか考えられない人なんじゃないでしょうか。「田舎では自動車が主な交通手段で」などとテレビや新聞が言ってるのを聞くと、そのまま鵜呑みにしてしまうタイプかもしれません。
  いつもこういうことを書いて、私の意地が悪いと誤解されてしまいそうですが(笑)、そういう人に限ってブログで「朝日新聞は捏造ばか(以下略)」とか、「一般人はテレビに洗脳さ(以下略)」とか、さも自分は自由で透徹した思考の持ち主みたいなことを言っていたりします。わけがわかりません。

   本題に戻りますが、要するに鉄道の方は「ある程度の本数が走っていれば乗客にとって利用価値がある」ということになりそうです。
  しかし、民間会社だと言うことで、JRは露骨な間引き運転や、わざと通勤通学に特急を使わせて料金を取ってやろうというセコさ丸出しの手(たとえば、●JR四国がやっている「快て~き回数券」が許されてしまっています。
  国鉄が鉄道を整備したときは、国民の税金を使って線路を敷き、トンネルを掘り、駅を設置したはずです。それが民営化した途端、「金を払わざる者のるべからず」になってしまったわけです。何か変な気がするのは私だけでしょうか。

  思うに、鉄道の赤字経営というのは、ある意味当然のことなのです。
  そもそも鉄道というのは、儲かる儲からない以前に、その土地の人間が移動するための手段だったはずです。もちろん、石炭や絹織物を運ぶための鉄道もあるにはあったわけですが、日常的に乗客を乗せる手段として用いられるようになった段階で、公共性が鉄道には与えられたと考えるべきです。(そうでなければ、運賃の上げ下げについて国土交通省の認可が必要なことの説明が付かない)
  そして、旧国鉄のような大きな鉄道網の場合、赤字路線の穴埋めを都市部の上げた黒字で相殺し、全体として黒字にすればいいのです。宅急便や電話回線もそういうプラスマイナスの相殺(クロス・サブシダイアリー cross subsidiaryというらしい)で成り立っています。
  そういう仕組みと、国鉄の組合活動が激しかったこととは全く別の話なのですが、どうもそこらへんをごっちゃにして「国鉄の左翼組合を押さえ込んで、しかも債務をチャラにできた国鉄ミンエーカ最高!!」などという論調の評論家やブログを書いている人があまりにも多い気がするのです。(実際は債務は全然チャラになっていないし、組合潰しのためなどという公式見解もない)
  で、そういう人はことごとく東京在住だったりします・・・と、また朝日新聞うんぬんの話が始まってしまうので、このへんでやめておきます(笑)。

  政府や地方自治体もそうなのですが、大きな経済主体が黒字経営を目指してしまうというのは、かなり怖いことなのです。なぜなら、巨大な経済主体の赤字が解消されるということは、他の小さい経済主体から黒字を奪ってくるということに他ならないからです。
  ある国の経済システムの中では、基本的に黒字と赤字はプラスマイナスゼロになります。誰かが儲けたということは、誰かがそれだけ余計にお金を出しているからです。
  では、そういうマイナスを最終的にどこで引き受けているかというと、それが政府などの公的機関なのです。その代わり、公的機関は税金という形でサービスの原資をまかなっていると考えるといいわけです。
  交通機関で言うと、その交通機関が生み出しているサービスが、利用者に見えない黒字(利便性)を与えていると考えると分かりやすいです。たとえば、通勤できる範囲を広げたりとか、それを車より安全にしたりとか、そういう利益を利用者が得ているということです。
  この見えない黒字は、たとえば通勤先でお金を使ったり、学校に生徒が集まったりして、結果的にはどこかで金銭的な利益に化けています。無人島に橋を架けて鉄道を通すような暴挙でもない限り、必ず公共サービスはどこかで利益に変わっています。 
  こういう公共サービスを営利企業が生み出すには限界があります。営利企業の目的はサービスの提供ではなく、自分たちの利益の追求だからです。だから、自分が儲からなければ簡単にサービスの提供をやめます。当たり前のことです。
  こういうことを言うと、「郵政民営化しても郵便物は普通に届いているじゃないか」という人がいますが、民営化当初の手探り状態で自慢されても困ります。「今」ではなく「将来どうなるか」ということを合理的に考えてもらいたいものです。
  公共サービスの質を向上させるためにどうすればいいか、という議論をするならまだしも、「ミンエーカすれば全てうまく行きますよ」というのは、あまりにも本質を無視した議論だと言わざるを得ません。
  それどころか、ミンエーカすると過当競争でかえってまともなサービスがされなくなってしまうケースまで出てきます。代表例は●JR福知山線の脱線事故です。この事故の原因は、私鉄との競争のために1分の遅れすら許されないようなJR西日本の体質にあったわけですが、これもミンエーカの生んだ悲劇でしょう。
  みなさんがタクシーの運転手で、「猛スピードで安全運転をしろ」と命じられたらどう思うでしょうか。それでも俺はやってやる!という人は、お願いですから人の生命を預かる現場に出てこないでください。

  ちょうど世間ではガソリン価格の高騰が騒がれています。

  これで、自動車の持っている優位性がまた一つ疑われることになったわけです。資源の有効利用と、公共サービスのあり方について、考え直すいい機会なのではないでしょうか?

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2008.05.05(Mon)

道路整備がもたらしたもの(秋田県) 

  ところで、今、私は秋田からこの記事を上げているのですが、地方に行くとどうしても「道路」というものを意識せざるを得ません。
  今日は、「ねぷた」で有名な城下町・弘前から、能代を通って秋田市まで鉄道(奥羽本線)でやってきたのですが、まず目立つことはどこも駅前が非常にさびしいことです。
  たとえば、特急が止まる駅に「二ツ井」(旧二ツ井町、2年前に能代市に合併)という駅があります。(以下は駅周辺の地図)


大きな地図で見る

(地図上の吹き出しが邪魔な人は、吹き出し右上にある×をクリックしてください)

  この駅は世界遺産である「白神山地」の南側の入り口に当たる駅なのですが、駅前がえらく寂れています。関東地方で比較的さびしい北関東でも、特急が止まる町というと、人口20万人は当たり前というのに慣れていると、なんだか気が抜けてしまいます。
  しかし、その二ツ井駅のすぐそばに、テニスコートだの量販店だのがあってものすごく活気がある一帯があったのを見かけました。ここが駅前なのか?と勘違いしたほどです。

  あとから地図を見てみると、どうやらそこは国道7号線沿いの一帯だったようです。

  ●中越沖地震で被災した「柏崎市」のことを書いた記事でも述べましたが、地方に行くと活気があるのは「幹線道路沿い」というのはもう当たり前になってしまったようです。そして、そこにあるのは「大型家電量販店」「ジャスコ」「牛丼やファミリーレストランのチェーン店」であり、もう米沢だろうと柏崎だろうと二ツ井だろうと、どこでも同じような風景が広がっています。
  別に、地方の人間は物質文明の恩恵を受けるな、などというつもりはありません。しかし、寂れた駅前だとかシャッター商店街を見てしまうと、かつてそこにあった人間の営みの灯が消えてしまったようでさびしくなります。

  では、そういう現状を作った原因のひとつは何かというと、「便利すぎる道路」だという気がしてしまうのです。
  全国に張り巡らされた高速道路と、それに連結するよく整備された幹線道路という仕組みで、いまや旧二ツ井町のような地域でも大都会とダイレクトにつながっています。そうでなくても、大都会を中心にした物流ネットワークみたいなものに組み込まれています。たとえば、弘前のファミリーマート(jコンビニエンスストア)に売っていた「おにぎり」は、青森市の工場で作られたものでした。おそらく、ファミリーマートを経営している資本が作った会社が、関東地方や近畿地方と同じレシピでおにぎりを作り、弘前市内に供給しているのでしょう。
  このような仕組みが、まるで東京や埼玉にいるような「便利」な生活を可能にしたのは事実だと思うのですが、同時に地方にとっても不利益な仕組みが出来上がってしまっています。
  その最たるものが、「経済循環の破壊」です。幹線道路沿いに進出している企業はたいていは東京や大阪に本社を置いている大資本なので、そういう店が儲かった場合利益は大都会の本社に行き、都会で使われたり、配当や借入金の利息という形で大企業が外国資本が吸い上げたりしてしまうことになります。
  この仕組みが固定すると、地方としては都会からお金(貨幣)を奪い返さなくてはやせ細っていく一方になります。だから、みんな必死になって都会で売れるような商品を作ろうとするのです。「赤福」だとか「白い恋人」が偽装までして経営を拡大していたのは、そうでもしなくては地方で生きていけないからです。
  こういう構図は、誤解を恐れずに言えば、「欧米諸国(都会)」と「アジアやアフリカの植民地(地方)」という構図と非常によく似ています。なぜかというと、常に地方が不利な立場に立たされているからです。
  欧米諸国が持っている外貨(貿易決済用通貨)を獲得するために、植民地や途上国は「売れるもの」を作ろうとします。その結果、産業構造が非常にいびつな形になってしまうのです。私は子供のときに、農業をやっている人間が圧倒的多数であるアフリカで、なぜ飢餓が発生するのか不思議でした。その理由は、日本のように外国に売れるものを作れないからではなくて、外国に売れるものを作ってばかりいるからなのだとわかったのはごく最近です。

  ところで、欧米諸国がアフリカを収奪していた時代、内陸部から沿岸部にたくさんの鉄道がしかれました。●アフリカの地図を見ると、「ガーナ」「トーゴ」といった西海岸の諸国が南北に長い形をしているのに気づくと思います。これは鉄道に沿って植民地の形を作ったからです。
  この鉄道が果たしていた役割は、奥地で掘り出した資源や栽培した農作物を、船でヨーロッパなど先進諸国に運び出すためでした。こういう言い方は左翼っぽくて(笑)好きではないのですが、鉄道は収奪のための道具だったわけです。
  程度の差こそあれ、そういう役割、要するに都会が地方から効率よく利益を吸い上げるストローみたいな役割を、今の日本で果たしているのが、「整備されすぎた道路」なのではないか、という気がするのです。いってみれば、道路網の整備は、「内なるグローバリゼーション」を助長してしまっているのです。
  それでも、地方が十分に都会から利益を受け取り、地方に進出してきた都会の店からいろんなものを買うことができるうちはいいのです。しかし、その経済システム要素がひとつでも欠けると、どんどんボロが出てきてしまいます。
  例を挙げると、「エネルギー価格の高騰」があれば、ものを買いにいくコストや物を運ぶコストがどんどんかさんでしまい、経済の中心から離れた地域は切り捨てられてしまうかもしれません。ジャスコや吉野家が田舎に店を出しているのは、利益が出るからであって、その地域の人間に日用品や食料を提供するためではありません。コストがかさんでしまって利益が出ない地域は、真っ先に切り捨てられるでしょう。
  こういうことを書くと、「地方が魅力的な商品を開発して東京や大阪にたくさん売ればいいじゃないか!」という人がいますが、そんなことをいくら強弁しても無駄です。そんなに魅力的な商品を作れる地方自治体はほとんどありません。たとえば、東国原知事がいない宮崎県が、今のようにして都会に物を売り込めるでしょうか?できるわけがありません。東国原氏が「成功」しているのは、同じようなタレント知事が他にいないからであって、他にもたくさん芸人知事が出てきたらPR効果はなくなってしまうはずです。
  マスコミが喧伝する東国原知事の「成功」をとらえて、地方もああいうことをすれば豊かになれるんだと思い込んでいる人間が、同じブログで「朝日新聞の言うことを信用するな」とか「メディアリテラシーがない一般人はテレビにだまされている」などと言っているのは、私にはほとんどギャグとしか思えませんね。
  
  もちろん、地方にお金を分配する仕組みとして公共事業をやらざるを得ず、それが道路整備だったことは事実です。それを全部否定するつもりはありません。しかし、それが今になって厳しい事態を招いているということを、みなさんに理解してほしいのです。
  これは、いくら地方への分配を強化したからといって解決できる問題ではありません。大店法による規制でジャスコなどの進出を妨げるという方法もありますが、カイカクを逆行させるなどといわれてマスコミに袋叩きにされるのが落ちでしょう。

  今日は詳しくは述べませんが、それならば戦うレベルをずらすしかありません。

  たとえば、以前からこのブログが紹介してきている「地域通貨」で、地域の農産物や工芸品を取引できるようにするのがそうです。日本円での価格競争では、地元のガラス工芸より中国で作られた粗製濫造のガラス用品の方がはるかに安く、競争力があります。それならば、中国製ガラス容器を取引できない通貨を作ってしまえばいいのです。地元のガラス工芸や、その代替品としての焼き物(これなら資源がそれほど必要ないので、多くの都道府県で自給できる)を、地域通貨で取引してしまえばいいということです。
  また、エネルギーでも、地元で作った木炭を取引できるようにすれば、灯油の価格が上がってもなんとかしのぐことができます。木材の豊富な三重や和歌山、秋田などでは十分使える方法でしょう。さすがに木炭でクーラーは無理ですが、燃えるごみで小規模発電をして、それを地域通貨で買える仕組みを作れば少しは電力をカバーできます。

  あるいは、公共事業を土木業ではなく、農林水産業で行うのです。護岸整備なんて、いまどき必要な地域はほとんどありません。それをするなら、戦略物資になる農産物(特に小麦や大豆)に補償金をつけて価格競争力を上げるのです。そうすれば、アメリカ産と少しは戦えるようになり、自給率も上がります。何より、地方の基幹産業である農業で生計を立てていけることがわかれば、必ずしも土木事業に依存する必要はなくなるでしょう。
  断っておきますが、これを大企業による農業経営なんていう方法で実現するのは無理です。そんなやり方で自給率を上げている国は、アメリカ以外にはないからです。そのアメリカも、地下水のすさまじい枯渇、ポストハーベスト農薬の多用、季節労働者である外国人の大量流入という弊害に悩まされています。だいいち、農作物に一番補助金をつけている国はアメリカなのです。(●こちらのブログを参照)

  もちろん、農作物への補助金というのは「一時しのぎ」にすぎません。本質的には、より狭い地域での経済循環を作ること、最悪でも国内での経済循環を大原則にすることです。地域通貨や農業補償金はそのための道具でしかありません。
  そうすれば、自分の地域で必要な物を自分のところで作ろうとする動きが強まります。たとえば、リンゴばかり作っている津軽平野も、もう少し他の作物を作るようにシフトするかもしれません。安く買える物より、自分のところで作れる物を買おうとする動きが出てくるということです。
  そうなると気候的地理的ハンデがある地方は不利になるのではないか、と思いますが、それでも昔はなんとかやってきたのです。そういう物質的には必ずしも「豊か」とはいえない中でも人生を楽しむことこそ、日本の文化や伝統ではなかったのでしょうか。
  あまった食べ物を捨てるような余裕があるのですから、今のように「一次産品の特化→大量生産→大量消費」という不自然なサイクルがなければ日本が滅ぶということはないはずです。

  そういう社会ができれば、2兆円のガソリン税について喧々諤々し、挙句にガソリン税の暫定措置法案を可決した与党議員たちが祝杯を挙げる●こちらのブログを参照)ような不毛な事態はなくなるはずです。
  「便利な道路」を前提にした経済の仕組みが機能不全を起こしている今だからこそ、国民、特に地方のみなさんに、少し違った視点で物事を見てもらえるとうれしいです。

追伸: 明日秋田市内を回って、埼玉に帰ります。新しい記事を上げられるようがんばりますので、どうぞまたご覧ください。

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